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コノヨノタメニ。  作者: 高梨 裕也@あと五分だk……zzz
第二章ーー正しい悪の裁き方ーー
17/25

第十六話ーー決着ーー

 ……。


 …………。


 ……あれ……?


 おかしいな。なんで空が見えるんだ?

 あぁ、俺が倒れているからか。


「ヴヴヴヴゥゥゥ……」


 すぐそこまであの化け物の声が聞こえてくる。

 逃げようと試みたが、ピクリとも身体が動かない。どうやらここまでのようだ。

 まぁ、薄々勝てないとは分かってたけどな。うん。でも、結構頑張った方だと思うぞ?

 首を掴まれ、持ち上げられる俺。こんな時でさえ、人間って、案外簡単に死ねるもんだな、なんてくだらないことを考えてしまう。


「ヴゥヴ……」


 祟り人は少し唸ると、思い切り俺を投げ飛ばした。もはや抗う気力すら出ない。そのまま壁に叩きつけられた。


 奴は俺を確実に消したいらしく、道路標識をへし折ってこちらへ歩み寄ってくる。

 なるほど。道路標識で首を刎ねるつもりか。

 バーカ。使い方間違ってるぞー。


「あはは……わ、笑いしかでねぇや……」


 今度こそ終わり、そう思ったその時だった。

 コツン、と小石が飛んできたのだ。化け物に向かって。


 力を振り絞りそちらを見ると、そこにはなぜか彼女が立っていた。


「お、織宮……?」


 攻撃のため?……いや、あいつはそんなバカなことはしない。ならば……

 祟り人の気を自分にひかせるためか。

 案の定、挑発に乗った祟り人は彼女を標的に変え、死にかけの俺を捨てて織宮の方へ走り出した。

 ヤバい。あいつだってまだ本調子ではないはずだ。すぐに捕まってしまうに決まってる。


「ま……待て……よ……」


 それだけは絶対に起こってはならない。

 俺は無意識に祟り人めがけて走り出していた。

 身体中の痛みも忘れて。ただただ一つのことを遂行するためだけに。


 だが、その祟り人は俺を気にもかけなかった。


「おい……待てよ……相手は俺だろ……」


 振り向きもしない。


「待てって言ってんだよ……」


 祟り人は、いよいよ本格的に走り出した。

 その距離、あと二十メートル。

 このままでは、彼女は……

 ……絶対にさせるか。そんなこと。


織宮あいつに、手ェ出すなァ‼︎」


 プツン。

 俺の意識は、そこで途切れた。




 ===============




「……し……

 もしもーし。聞こえてますかー」


「んっ……?」


 意識を取り戻し、最初に目にしたのは、人でもあの化け物でもなく、犬だった。


「え……い、犬……?」


「犬って言うな!名前あるぞ!

 てか元々種族違うし!」


 いきなり噛みつかれる。痛い。


「全く……やっと正式に力を貸してやろうと思ったのに……」


「え?どゆこと?」


「はぁ⁉︎まだ気づかないのか⁉︎ここはお前の意識の中!私はお前に憑いてる霊だよ!」


 あ、ああ!なるほど!

 ん?ということは……


「やべぇ!早く起きないと!」


 ここで話しているということは、つまり意識を失ってしまっているということ。大樹や織宮が危ない。

 俺は鍋島あいつと約束したんだ。

 ここでくたばってしまっては、あの世で合わせる顔がない。


「こんな所でモタモタしてる場合じゃねぇ!」


「だから!いまそのために私が出てきてやったんだろうが!」


「い⁉︎」


 あまりに驚いてしまい、思わず転びかける。

 今、この犬っころは何と言ったのか。

 俺の耳が正しく機能していれば、こいつは俺に力を貸すと言っていたが……


「本当に?」


「本当に」


「絶対?」


「絶対。……てかこの下りなんだよ!急いでんだろ!」


 再び犬に噛まれ、足に激痛を感じながら、どうやって使うのか聞いてみた。


「教えてくれ!頼む!どうしたら力を使えるんだ⁉︎」


「なぁに、簡単だ。心の中で私の名を呼べばいい」


「名前は⁉︎」


「八川コマ。ま、コマとでも呼んでくれ」


「分かった。よろしく」


「……だが、私も完全にお前を認めたくはない。最大出力までは使わせねぇぞ?」


「結構だ。なるようにしてやる」


 それじゃあ行ってこい。そう言って彼(?)は俺の肩に手を置いた。

 みるみる意識を失い、目の前が真っ暗になっていく。

 コマは、最後まで俺を見ていた。


「……。」




 ===============




「う……うう……」


 身体中が痛い。現実へ戻ってきたようだ。

 軋む身体を起き上がらせる。これだけの動きでもすでに限界だった。

 前を見据えると、ちょうど織宮が戦っている最中だった。だが、明らかに織宮の方が劣勢である。動きも鈍く、相手の攻撃を避けるので精いっぱいのようだ。


 大きく息を吸い込む。そのまま肺に空気を溜め込み、ありったけの声で叫んだ。


「ウラアァァァァァ‼︎」


 頼む。コマ。


 ーーおう。了解。ーー


 その瞬間、自らの身体が作り変えられていくのがわかった。

 体が燃えているように熱い。呼吸数も増えている。


「ヴ……?」


 ゆっくりと歩み寄る化け物。彼が一体何を感じとったかは分からない。だが、この姿になった今、そんなことはどうでもよかった。


「来いよ化け物。さっきのお返しだ。負けっぱなしは気分が悪りぃ。早めに終わらせようぜ……!」


「ヴァハハハハハハァ!!」


 二度目の対峙。

 今度は負けない。負けられない。


「ヴォルッ!」


 弾丸のような速さで拳が飛んでくる。

 が、今では手に取るように避ける事ができた。

 見えるのではない。直感だ。


「次はこっちからだ!」


 一瞬の隙を見て敵の懐へ潜り込む。そのまま一気に突き上げた。


「⁉︎」


「ヴ……ォ……?」


 その時、俺も祟り人も異変を感じていた。

 どこからともなく力がみなぎってくる。鉛のように重かった身体も、こころなしか軽くなったように感じていた。

 対して祟り人は、何というか……こう……先ほどまでの狂気が薄れている気がした。


 ーー気づいたかーー


 コマだ。


  ーーそれが私の力。悪を食い己の血肉へ変える力だーー


「悪を……食う……」


 勝てる。確実に。

 自信が確信に変わった俺は、もはや負ける気がしなかった。


「ギシャァァァァァ!!」


 何度も突っ込んでくる祟り人。負けると分かっていながら来ているのか、それともただのバカなのか、それは分からない。が、そんなことはどうでもよかった。


「終わりだ……!」


「ラgfdくぉgしょp19ぎゃmpいcぽxyzふぃdkぐgsc34kzdふぃうxk!!」


 もう一度上へ突き上げる。すぐに空中へ移動すると、そのまま祟り人を地面に蹴り落とした。


「オ……ゴ……ォ……」


 しばらく唸っていた化け物も、やがて動きを止めた。


「す……すごい……」


 しばらくは実感が湧かなかった。


「か、勝った……?」


 感覚が戻ってくる。

 今ここに生きている喜び。

 自分も役に立つことができた喜び。

 そして、大切な人を守ることのできた喜び。

 嬉しくて、笑いが止まらなかった。


「よかった……本当によかった……」


 こうして、駅前を半壊させるほどの戦いは幕を下ろした。

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