表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コノヨノタメニ。  作者: 高梨 裕也@あと五分だk……zzz
第二章ーー正しい悪の裁き方ーー
16/25

第十五話ーー混戦状態ーー

 「それっ!」


 草薙兄弟の弟、一也が地に手を当てる。すると、たちまち白いドームができあがった。

 中にいる人々は、皆魂を吸い取られたかのように固まっている。目からは光が消え、表情もどこか虚ろだった。やはり幻覚を見ているようだ。


 一方、一也の少し後ろでは、織宮が自身に向かって話しかけていた。


「お願いなべちゃん……!少しだけ力を貸して!」


 その問いに答えるように、織宮の姿は変わっていく。

 頭には三角形のモノが二つ。尻尾もついている。

 俺はその光景を目にした時、あまりの出来事に硬直してしまった。


「ね……猫耳……だと……?」


 本人は小首を傾げているので、きっと気づいていないのだろう。

 上上。頭頭。

 違う。もうちょい上。

 そう。そこ。


「に、ニャンじゃこりゃー⁉︎」


 やっと分かったようだ。ついでに言葉も猫語が混じってる。

 うん。可愛い。

 ……はっ。いかんいかん。今のは取り消し。


「おい!こんな時に何やってんだよ!」


 倉本の一喝が入る。その通りだ。今はこんな茶番をやっている時ではなかった。


「ちょっと通らせてー!」


 織宮が器用に人混みをかき分けて行く。それに続くように大樹も走っていった。

 だが、驚くことに、彼女は一度も人にぶつかっていなかった。


 しばらくして、人だかりの中から織宮の大声が聞こえてきた。


「見つけたっ!」


 駅前の木の下。いつもは待ち合わせ場所としても有名なそこに、男は立っていた。

 スーツ姿にビジネスバッグ。ごくごく普通のサラリーマンだ。

 ……あんなに邪悪な気配を醸し出していなければ、の話だが。


 おいおい、なんだよあれ。アブナイ匂いがプンプンしてるし。まず目が狂気じみてるよ。正常な人の目じゃないよ。


「な、なぁ倉本……これから先あんなのと戦ってくのか……?」


「ん?……ああ。だが、まだあいつは序の口だな。また症状は軽い。」


 その一言で俺は再びドン底へ突き落とされた。

 さらば青春。そしてこんにちは絶望。これからよろしく。




 気がつくと、周りには風紀委員が勢ぞろいしていた。皆真剣な顔で次の合図を待っている。


「じゃあこれから除霊を始める。よく見ておけよ?」


 道着を真っ黒に染め上げながら、倉本は言った。


「まずは祟り人を行動不能にする。今回は怨霊だからな。ひとたび暴れ出せばどんな被害が出るか分からん。」


 そう言い残すと、倉本の姿が消えた。いつの間にか皆の姿も無い。

 ……彼らが祟り人と交戦中だと気づいたのは、それから少し後だった。


「えいっ!」


 草薙兄弟の姉、礼奈は地を思い切り蹴った。すると、踏み込んだ場所がぐにゃりと変形し始めたではないか。

 その波はたちまち地面を侵食し、祟り人の足を飲み込んだ。祟り人はそれを取ろうとするが、彼の足は全く動かなかった。まるで接着剤のように固まってしまい、その場から離れることができなくなってしまったのだ。


「ガアァァァッ‼︎」


 だが、祟り人も負けてはいなかった。

 コンクリートを殴ったのだ。

 何回も、何回も。

 拳が血だらけになろうと、手の骨が粉々になろうと、動きは止まらなかった。

 そんな猛攻に耐えかねたのか、ついに地面にヒビが入った。それを見た祟り人はここぞとばかりに足を動かす。コンクリートにヒビをいれる怪力を持ってすれば、こんなことは造作もないことだった。


「ヴオァァァァァ‼︎‼︎」


 凶声をあげる祟り人。腕は自身の血に塗れ、足にもたくさんの傷が付いていた。


「う、うわあぁぁぁっ!」


 恐怖に満ちた表情で大樹が殴りかかった。が、祟り人はそれを避けようともせず、むしろ近づいてくるのを待っているように見えた。


「待て大樹!危ねぇ!」


 咄嗟に声を張り上げるが、もう遅かった。

 壊れた人形のように首を動かし大樹を見つめる。そして、狂気で塗りつぶされた顔に不気味な笑いが浮かび上がった。


「あ……あああ……」


 逃げようとするも、腰が抜けてしまいうまく動けない。

 絶体絶命のその時だった。

 突如大樹の目の前で火花が散った。


「よいしょっ!……こら!勝手に動いちゃダメでしょ!」


 礼奈だ。

 足には何百キロもあるようなゴツい鉄のブーツが装備されていた。

 少なくとも女の子がブンブン振り回せるような代物ではない。


「あ……ありがとう……

 でもそれ……どうやって履いてるの?」


「ああ、これ?これね、履いてるんじゃなくて、生えてるの。」


 ⁉︎は、生えてる⁉︎


「これが私の力。『九尾狐』って言うの。自身の姿を自由に変える事ができる。」


 ……え?

 自分の姿変えられるとか。

 何それ。チートじゃん。


「ほら、ボケっとしてないで!早く捕まえないと!」


 大樹はすぐに立ち上がると、今度は祟り人を後ろから羽交い締めにした。


「よし!じゃあそのまま……」


 祟り人を地面へ固定しようとしたほんの一瞬だった。


「ヂrtぞおbdーxyxtsフdコrス‼︎」


 突如奇声をあげる祟り人。そのまま立ち上がり、

 大樹と織宮を投げ捨てた。

 なすすべなく吹き飛んでいく二人。そのまま人ごみに消え、見えなくなった。


「おい!大丈夫か!」


 返答はない。

 と、目の前の祟り人(こいつ)に対して、無性に怒りがこみ上げてきた。


「倉本!あいつらを頼む!」


「お前……まさか……」


「こいつは俺がぶっ飛ばす!敵討ちだ!」


「無理だ!よりによって力の使えないお前は!」


「なるようにしてやるっての!」


 全力で祟り人に駆け寄ると、その勢いのままパンチ。


「ほら、かかってこいよ。今のは序の口だ。ここに来たこと、後悔させてやる!」


「ヴオァァァァァッ‼︎‼︎」


 四時の鐘が鳴り響く。それが開戦の合図になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ