第十二話ーー再来の猫又ーー
「「……じゃあ、手続きはこの子が起きてからだね。」」
兄弟は、まるで俺の心情をを分かっていたかのように、何も聞かず話を終わらせた。やはり根っからの悪い奴ではないようだ。
「「あ、じゃあみんなが入るなら、大樹も入るよね?」」
兄弟は、大樹も勧誘し始めた。
問われた大樹は、口をパンパンにしながら、こくこくと頷き、
「うもー!!」
と叫んだ。どうやら本人は承諾してくれているようだ。口から盛大に食べたものが出ているが、まぁ触れないでおこう。
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……しかし、今更だが、この家、一体どこにあるんだ?テレフォンで飛びまくっているせいで、いまいち場所が分からない。
「なぁ、草薙、ここどこだ?歩いて来てないから全然わかんないんだが……」
朝食も終わり、一服を取りながら、俺は二人に聞いてみた。
「「ん?あぁ、そっか。君ソファで寝てたんだもんね。外の世界を見てないんだっけ。
……ここは第0学区。普通に生活していれば全く関わる事のない地域。周囲に溶け込み、いつしか忘れ去られた場所だよ。
そもそも、この学園は幾つかの区画に分けられていて、その区画を『学区』って呼ぶんだよ。で、ここ第0学区は、地図には無い、誰も知らない場所ってわけ。……ここまで分かる?」」
ほほう。つまりこれはあれだな、俗に言う秘密基地ってとこか。
……最高じゃねぇか。何だよそれ。男が憧れる3大要素だぞ?
「おお……いいな……」
「「ど、どうしたの?顔がとんでもなくヤバい状態になってるけど……」」
夢の国へまっしぐらだった俺を、二人は刺すような視線でこちらを見ていた。
いかん。明らかに引かれている。
俺は慌てて訂正するが、二人の冷たい視線は依然として止まなかった。
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「「うん……まぁだいたい理解できてるみたいだね。細かいところは、ここで生活してりゃ慣れてくるから大丈夫だよ。
……てか、まだ落ち込んでるの?ごめんって。謝るからさ。」」
あの後、また説明はされたが、あまり耳には入ってこなかった。先ほどの目が痛すぎて。
「それはそうと、そろそろ織宮起こした方がいいんじゃないのか?」
大樹が歯ブラシを咥えながら呟く。使っている歯ブラシも自分のものらしく、どうやら自宅から持ってきたもののようだ。
もう完璧にここの生活に順応している。
「おお。それもそうだな。……いやー、でも起きるか……?」
織宮の睡眠はマリアナ海溝よりも深いと、昔織宮の両親から聞いた気がするが、大丈夫だろうか。
とんとんと、肩を数回叩く。まぁ起きはしないだろうと思っていたが、意外にもあっさりと織宮は目を覚ました。
「んー……っと。いやー、よく寝たニャ。」
だが、目覚めたのは、予想だにしていなかった相手だった。
何故お前がここに居る。祓われた筈のお前が。
「昨日は世話になったニャ……おかげでこっちも大変だったんだニャ。」
ここに居る全員がバッと身構えた。それはそうだ。何せ相手が織宮を乗っ取った張本人なのだから。
「なぁ……なんでお前が居るんだよ……鍋島ァ!」
俺の怒号にも鍋島は全く動じていなかった。




