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コノヨノタメニ。  作者: 高梨 裕也@あと五分だk……zzz
第一章ーー風紀を乱す風紀委員ーー
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第十話ーー仲間のためならーー

 織宮とは長い付き合いだが、泣いている姿を見るのは、多分初めてかもしれない。それ程までに、彼女は明るく、笑顔を絶やさない人だった。


「おい織宮!大丈夫か?」


 声をかけるが全く応じない。依然顔を伏せたままだ。


「な、なぁ、織宮……」


「……こ……いで……‼︎」


「ん?どうした?」


「来ないで‼︎」


 突如起こった出来事に少し怯んでしまった。なぜ拒まれてしまったのだろう。何か気に障ることでもしただろうか。


「ど、どういう意味……?」


「そのまんまよ‼︎こっちに来ないで‼︎私に近づかないで‼︎」


 織宮は涙を流しながら怒鳴った。そして、少しの間何か言いたげな顔をしてから、また顔を伏せてしまった。

 ……あの言葉、きっと本心じゃない。何か隠している。


 ーーー私らは負の感情から生まれたんだニャーーー


 鍋島あいつの言っていたことも、あながち間違いではなかったようだ。

 俺は、ゆっくりと織宮に話しかけた。


「なぁ織宮。なんかあったらいつでも俺らに言ってくれよ。俺らで良かったら相談に乗るぞ?」


「うるさいな‼︎あなた達には関係のないことでしょ!!早くいなくなってよ‼︎」


「関係ない⁉︎……んな事言うなよ‼︎俺ら昔っからの友達だろ‼︎」


 徐々に話に熱が入っていく。俺も、織宮も。


「関係ないよ‼︎友達って言ったって、所詮は他人じゃん‼︎家族じゃない‼︎」


「あぁそうだよ‼︎『友達』はどう足掻いても『家族』にゃあなれねぇよ‼︎

 でも、両方ともそこに『人とのつながり』はあるだろ‼︎なんでそれを自ら断ち切ろうとすんだよ‼︎」


 所構わず本音をぶつける。溜まっていたものが外へ飛び出して行く。


「そっ……それは……

 ……周りが怖いからだよッ‼︎」


 ……どうやら出てきたようだ。織宮の心に巣食っていた『闇』が。


「誰かが私あざ笑ったかもしれない‼︎

 誰かが私を憎んでいるかもしれない‼︎

 誰かが私のせいで、大変な目にあっているかもしれない‼︎

 今まで笑顔でやってきたけど、もう限界なの‼︎

 周りの目が!声が!思いが!

 ……そんな周りが怖いんだよッ‼︎」


「織宮……」


 笑顔のうらに、そんな葛藤と悩みがあったのか。どうして今まで気付いてやれなかったのだろう。


「い……よ……」


 その言葉は無意識に口から出ていた。


「言えよ‼︎俺らに‼︎少なくとも俺は迷惑だなんて微塵も思ってねぇ‼︎一人で抱えこむな!

 んなもん全部俺が喰い尽くしてやるよ‼︎」


 シン……と、再び静寂が訪れる。口調からだんだんと熱が冷めていく。

 時間が経つにつれ、よくそんなセリフが言えたなぁ、と、とても恥ずかしくなった。

 そんな俺を、織宮はぽかんとした表情で見ていたが、やがて、


「ふっ……ふふふっ……ふふふふふっ……」


 笑顔が戻ってきた。


「ありがとう。真剣に私のことを考えてくれて。おかげですっきりしたよ。もう悩まない……って、あれ?なんで私泣いてるんだろ。」


 ツーっと、織宮の頬に一筋の涙が流れる。だが、その表情は悲しみの顔ではなくてーーー


「さぁ、帰ろう。皆が待ってる。」




 ===============




「……い、……おい、………おい‼︎」


 気が付くと、そこは先程の廃ビルだった。どうやらあの後、俺は意識を失っていたらしい。


「大丈夫か⁉︎……ったく、びっくりしたぞ‼︎いきなり織宮に抱きついたと思ったら、意識失って倒れてんだもん。」


「織宮……ッそうだ‼︎織宮は⁉︎」


 急いで立ち上がろうとしたが、なぜだか身体に全く力が入らない。それに酷く身体がだるいのだ。


「おいおい、無理すんなって‼︎さっきまで倒れてた奴がいきなり起き上がれるはずないだろ!

 ……それに、決着ならついたよ。」


 大樹が指差した方向には、横たわる女の姿があった。近くに倉本達がしゃがみ込み、何やら三人で話し合っている。


「織宮‼︎」


 俺は、軋む身体に鞭打って、急いで彼女に駆け寄った。

 足がうまく動かない。何度もつまづきそうになる。そんな状況の中、必死で足を動かした。


「おお……お前か……」


 足音に気づいた倉本が、スッと振り返る。その表情は暗かった。


「どういうことだよ‼︎……ハァ……ハァ……何で倒れてんだ‼︎」


「残念だが……」


 俺の問いには答えず、下を向きながら口を開いた。


「残念だが、この子、女子って感じがない。いびきかいて寝てるぞ?」


「「「「へ?」」」」


 予想外の言葉に予想外の声が出てしまう。


「除霊はできた。案外あっさりな。だけどあの時の隙がなかったら多分無理だったと思う。よくやった。」


「いや、今褒められても困るっての‼︎てか、紛らわしいよ‼︎てっきり織宮になんかあったのかと思ったぞ‼︎」


「そうだよ‼︎俺だって何もできないなりに頑張ったんだよ⁉︎……あー、もうびっくりしたー……」


「「いやー、グーグー言ってるね。おもちゃみたい。」」


「「「お前らは話に入ってこいよ‼︎」」」


 夕焼け空と廃ビル群。そんな中に、子供達の楽しげな声は、ずっと鳴り響いていた。



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