トシ伝説
「なあ、リョウ、知ってっか!?」
「何を?」
「バカだとあんまり長生きできねーってよ!」
「ウソつけ!」
「ウソじゃねーって!マジだ!テレビでタケオが言ってたんだからよ!なっ、ヤバくねーか!?
うちの学校のヤツら、バカばっかりだろ!?
とくにアイツ・・・なんてったっけ?
リョウの前の席の、ホラ、ちっこいヤツ!
ええと・・そうだ!ヤマガミだ!ヤマガミ!」
「神山だろ!?ヤマガミって、おまえ・・・
今、五月だぞ!?いい加減、覚えろよ!」
「へっ!?カミヤマ!?ヤマガミじゃねーの?」
「いねーよ!ヤマガミなんて・・・神山がどうした んだよ?」
「へーえ・・まあ、いいや。アイツな、かけ算、
ちゃんと覚えてねーぞ!?」
「えっ!?」
「たぶんな。だってよ、この前『ニニンガニン』
って言ってたからよ。ハットリ君だよ!それじゃ 」
「ウソつくなよ!トッシー」
「ウソじゃねーって!タカアキとマルも一緒に
聞いてたんだからよ。二人に聞いてみろよ!」
「マジか!?」
「おうよ!なっ!?いくらなんでもそっから
わかんねーじゃマズイだろ!?二の段から、
つっかえてるようじゃ終わりだよ!きっと
六の段、七の段あたりはメチャクチャだぞ!?
なあ、かけ算習うの何年?五年ぐらいか!?」
「五年じゃねーよ・・・確か二年生ぐらいだった
気がする」
「おまえもハッキリしてねーのか?そこら辺の
キオクが」
「おまえもだろ!?おまえなんか、五年ぐらい か!?って言ってたじゃねーか!」
「オレが!?そうか?まあ、いいや。あとな、
アイツ!ええと、ホラ、ヒョロヒョロしてて、 全然、しゃべんねーヤツ!名前なんだっけ?」
「ヒョロヒョロして、喋らないヤツ!?誰?」
「ホラ!アイツだよ!鬼太郎に出てくる、
変な布っきれみたいなのいるじゃねーか!?
アレ、なんつうんだっけ?ペラッペラのヤツ!」
「イッタンモメンのことか!?」
「それだ!それにソックリなヤツがいるだろ!?」
「だ、誰だ?」
「いるじゃねーかよ!背が高くて・・わかった!
シノキタだ!ん!?シモキタか!?シモキタだ !うん、合ってるな!」
「合ってねーよ!木下だろ!?おまえ、マジか!? ・・・でも、確かに似てるかも!ぷぷぷっ!」
「だろ!?えっ!?キノシタ!?へーえ、そーかぁ ~」
「そーかぁ~、じゃねーよ!木下がどうしたんだよ?」
「アイツもな、だいぶキテるからな!」
おまえが一番キテるよ、トッシー
「早く言えよ!」
「待て待て。とにかくスゲーんだからよ。
おまえ、笑うぞ!?絶対だ!」
「おまえ・・・忘れちゃったんだろ!?」
「忘れてねーよ!・・・そーじゃねーけど、
思い出せねーんだよ!なんでかな?たまに
あるなあ、こういうこと・・・まあ、いいや。
ドンマイ!ドンマイ!ガハハハっ!」
「ガハハ、じゃねーよ」
「何かを覚えると、何かを忘れる、う〜ん、
あるある!」
「それじゃ、じいさんだよ!」
「そんなことねーよ。うちのじいちゃんは覚えねー もの。忘れてばっかりだぞ!?」
「そ、それはまた、種類が・・・」
「何?どんな種類?」
「い、いや、だから・・・その・・なんて言うか
・・・チッ、言いづれーよ!」
「ああ、ボケてる、ってことか!?確かにそう
かもな。だってよ、変なツボに大福しまったり するからな。この前なんか、電話鳴ったとたん、
防虫スプレーかけてたしよ・・・なんでだよ?
なんて通じねーぞ!?『トシ坊、トシ坊』
言って、かわいがってくれたじいちゃんなのに 。今じゃネコに言ってるよ『なあ、トシ坊!』
って・・・年取るって悲しいよな」
何も言えない・・・
「・・・・・・・」
「よー、トッシー!?」
「ん?なに?」
「なに?じゃねーよ。木下の話はどうしたんだよ? 」
「いま、考えてた」
「思い出せないのか?」
「いや、思い出した。でも、あんまり面白くねーん だよ。なんでかな?」
「絶対、笑うぞ!って言ってたじゃねーか!?」
「それが、ちっとも面白くねーんだよ!ってか、
全然、つまんねーかも!?」
「同じだろ!」
「う〜ん、さっきまでメチャクチャ面白かったのに よ!」
「とりあえず、言ってみろよ。気になるからさ」
「それもそうだな。聞くは一時の恥、聞かぬは一瞬の恥、って言うからな」
それじゃ、どっちも一瞬だろ!
だいたい、そのことわざ、今の状況と全然、
合ってねーから・・や、やっぱアホだな、コイツ
「よー、リョウ!おまえ、ポケっとしてんじゃない よ!こちとら話したくてウズウズしてんだからよ」
「だから、早く言えって!」
「おうよ!あのな、修学旅行の時にな、
バスでキノシタの隣の席だったんだけどよ。
オレのクツの下に『なんかあるなあ!』って
思ってたんだよ。乗ってすぐぐらいからさ。
そんで『なんだ?』と思って下、見たらよ、
なんと、アイツの足があるんだよ。オレの
足の下によ。『コイツ、なんで人の足の下に
足入れてんだよ?』って思ってよ」
おまえが踏んでただけだろ!?トッシー!
「でもよ、とりあえず、謝ろうと思って、キノシタ に言ったんだよ『わりー、おまえの足、踏んでたわ、スマン!』ってな。そしたら、アイツ、
なんて言ったと思う?」
「なんて言ったんだよ?」
「アイツな、下、見て『ホントだ!オレの足だ!』
って。オレ、たまげちゃってよ。だってそうだろ!?見なくてもわかるっつうんだよ!自分の足、踏まれてんだからよ!」
「バカじゃなくて、ニブいだけだろ!?それか、
おまえに気を使ったのかもな。いいヤツじゃねー か!だいたい、おまえだって、木下の足、踏んでて気付かなかったんだろ!?同じじゃねーか!」
「わかりっこねーだろ!あんなウスッペラい足!
ペラッペラだぞ!?あれじゃ、ビーサンだよ!」
「ビーサン!?・・ふふふ、痩せてるからな、
アイツ」
「違うよ、バカニブだよ!バカニブ!それだけじゃねーんだぞ!あのヤロウ、『目黒』のこと『メックロ』って言ったんだからよ!」
「ぷぷぷ、マ、マジ!?」
「おうよ!オレはな、初めてアイツを見た時から
『ピーン』ときたね!『ああ、コイツは絶対にバカだな!間違いねー!』ってよ。オレの目に狂いはねーよ!ダハハハハっ!」
目一杯、狂ってるよ!
オレも初めておまえを見た時
ピーンときたよ!ぷぷぷっ!
「とにかくよ、オレはいつも思ってたんだよ。
ナンバーワンはアイツかな!?って」
「なんの?」
「おまえもバカだね。流れでわかるだろ!?
ここまでずぅーっとバカの話してんだからよ。
バカナンバーワンに決まってるじゃねーか!
アレだな、おまえも一応、エントリーしとくか !?」
「おまえも入れとけよ、トッシー!優勝候補なんだ から!」
「なんで?オレはいいよ、バカじゃねーからよ。
そんじゃ、まあ、とりあえず、10人にしぼるか!?た、大変だな!?なんせバカばっかりだからよ。今日中に決まっかな?」
「なんだよ?今日中にって?」
「だってよ、今、昼休みじゃねーか!今日は五時間だしよ。放課後までに決めなきゃ帰るのが遅くなっちまうだろ!?オレ、早く帰ってルパン三世観るんだからよ」
「いいよ、そんなの!今日決めなくたって。
明日だっていいだろ!?」
「そんじゃ、家で考えてくんのかよ!?やだよ、
めんどくせー!」
「い、いや、宿題じゃねーんだから、そうじゃなくて・・・わ、わかんねーかな!?」
「ワケわかんねーこと言ってんじゃねーよ!
まあ、なんだかんだ言っても、問題はトップ3だな!あとのザコどもはどうでもいいや!ヤマガミとシノキタは100パー入るとして。となると、あと一人か!?・・・う〜ん、誰かいたよな!?本命のものスゲーヤツがよ!?とびっきりのトントンチキの大バカ野郎がよ!?なっ!リョウ!どいつかな?」
おまえだよ!トッシー!