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1,いじめられっこでも勇気はある!!

 最初に言って起きますが、かなりベタです。

 よって、もし予想されていたら、恐らくその通りの展開になるでしょう。あしからず。



※小説の都合上、卑猥な表現があります。

 うちの学校は去年まで女子校だった。今年から共学になるも、男子の数は30人にも満たず、3クラスあるなか1クラス40人中10人いるかいないかである。

 僕達男子は、隅に追いやられるようにひそひそして生きている。

 そして僕は、情けない事に女の子にいじめられている。


「やめて下さい!」


「うるさい!私らに逆らうと学校にいられなくなるぞ!」


―ドカッ!ボコッ!


「うっ!くっ!」


 僕は今、竹刀のような物で殴られている。場所は体育館裏、人目につかず、声も響かず格好の場である。


「今日はこの位にしてやるから、来週また可愛がってやるよ!」


 そう言っていじめっ子の女子生徒達は去って行った。


「うっ……イッテー…。」


 僕は痛みのあまり、しばらく立ち上がれなかった。

 いじめっ子は3人組の女の子達。名前は『足立久美』『石井真希』『緑川冴子』全員同級生で、足立は剣道部、石井はバスケ部、緑川は柔道部だ。

 3人だけだから何とかなりそうなものだが、僕は『化学研究部』と根っからの理数系だ。つまり、理数系の僕が体育会系の彼女達に勝てる筈がない。

 先生か誰かに言い付けたらどうかって?ムダムダ。彼女達は普段大人しく、真面目な生徒と評判が良い。信じて貰える筈がない。


「大丈夫か裕二?」


「裕之君…。ちょっと手を貸してくれる?」


 心配そうに話し掛けて来たのは『宮沢裕之』。僕の幼稚園からの同級生で、無二の親友だ。彼も化学研究部の部員で、僕と同じ理数系だ。


「すまない…。俺見てるだけしかできなく…。」


「気にしなくて良いよ…。」


 裕之君には面倒な事に巻き込まれてほしくない…。


「とりあえず僕は帰るね…。」


「あぁ、気をつけて…。」


 僕は裕之と別れた後、真っ直ぐ自宅へ向かった。

 僕の名前は『阿久津裕二』。高校一年生で、成績はどっちつかずの標準って所かな。

 いじめの原因はわからないが、多分彼女達の暇潰しであろう。今10月だから、かれこれ半年は続いている。


「ただいま…って言っても誰もいないけどね…。」

 親は共働きで、夜遅くまで帰らない。


「にゃー」


 居るのはネコの『スン』だけだ。


「スン、ただいま。」


 俺はスンを抱き上げた。

 ネコには珍しく、俺になついて可愛い奴だ。


「明日は土曜日か…。殴られずに済む…。」


 そう、少なくとも明日明後日は殴られずに済むから気が楽だ。


「…こんな事、いつまで続くんだろうな…。」


「にゃー…」


 スンに問いかけてもわからないか…。


 翌日の夜、僕は自室でゲームをしていると、突然携帯がなり出した。相手は緑川冴子だった。

 僕は彼女達とメアドを交換している。強引にだが…。


「もしも…」


「助けて堅君!!」


 全部言い終わる前に、緑川の叫び声が響いた。

 堅君とは、緑川が付き合っている彼氏である。


「バーで変な男に絡まれて…」


「は~い、残念でした♪」


 男の声がし、携帯が切れた。

 僕はかなりヤバい状況だと直ぐにわかったが…。


「誰が行くか…。自業自得だ…。」


 助けに行く気など全く起きない。第一、理数系の僕に何ができる…。


「まぁ、柔道部だから自分でなんとかするだろう。」


 僕はゲームの続きを始めた。

 ふとスンの方を見ると、スンはうるうるした目で僕を見つめていた。


「あぁ、もう!怪我したらお前のせいだからな!」


「にゃん♪」


 僕がそう言うと、スンは嬉しそうにに鳴いた。

 そして僕は、コートを羽織ると、自転車をバーへと走らせた。


「大変何です!!」


 僕はバーの前で警察に連絡をした。

 後で思ったが、家から連絡した方が良かっただろうな…。


「よし、行くぞ!」


 僕は思い切って中に入った。


「!!!お前たち、何やってんだ!!」


 中に入って直ぐ目に飛び込んで来たものは、服をビリビリに裂かれ、豊満な胸が露出し、ほぼ裸姿の緑川が、数人の男に抑えつけられていた。緑川は、何とか振り払おうとジタバタしている。


「何だお前は?」


「その子のいじめられっこだ!!」


「はぁ?」


 この時の僕は、頭に血が登り自分でも何言ってるかわからなかった。


「舐めてると痛いめみるぞ、クソガキ!」


「痛いめなら十分みている!!早くその子を離せ!!」


「テメェ…うっ!」


 男達が僕に気をとられている隙に、緑川が力を振り絞り、僕の方へ逃げて来た。


「大丈夫ですか?」


 僕は着ていたコートを、緑川に着させた。


「テメェ、ぶっ殺す!!」


 男達はこっちに迫って来る。


「うわぁぁぁ!!」


 僕は思いっ切り男達に立ち向かった。


―ドカッ!ボコッ!ベキッ!バコッ!


 僕は男達をボコボコにしてやった。

 …ってなるとかっこいいのだが、自分が理数系だというのを忘れていたので、ボコボコにされた。


「警察だ!お前達何やってる!!」


 タイミング良く、警察が突入して来た。やけに多いな…。

 しかも、刑事や警棒と盾もった警官もいる。


「逮捕だ!!」


 警官達は、男達と激しく争い始めた。

 僕は慌て逃げた。

 後でわかった事だが、あのバーは前から警察が張り込みをしていたそうだ。最近になって、麻薬や拳銃を売買しているとの情報が入り、突入の機会を狙っていたのだ。 そんな時、僕が現れて向こうがボロを出したから突入したそうだ。


「いや~、勇気ある息子さんだね~。阿久津君!」


 言い忘れていたが、僕の父親は生活安全課の刑事で、母は交通課の警官である。


「警部、痛いです…。」


 父は、警部に背中を叩かれ痛がっている。


「しかし裕二、なんでお父さんに電話しなかったんだ!」


「いや、まぁ…。頭に血が登ってて…。ごめんなさい…。」


 恥ずかしい話し、兎に角頭に血が登ってしまい、何が最善の方法かわからなくなっていたのだ。


「あの、緑川さんは?」


「ん?あぁ、彼女ならそこに…。」


 父の指を指した方には、緑川が僕のコートを着て、刑事に説教されていた。

 ホットしたのか、涙を流しながら謝っている。


「しかし、お前とどういう関係なんだ?彼女か?それとも片思いか?」


「僕をいじめている子。」


 僕はサラッと言ったが、自分でも気づかなかった。


「そうか、お前をいじめている…って、え!?」


「ん?あ…。」


 父も、僕があまりにもサラッと答えたので、最初は気づかなかった。


「え、お前…、え!?」


「どういう事だね?君は自分のいじめっ子を助けたのか?」


 警部も困惑している。


「自分でも未だに謎で…、強いて言うなら、スンに言われたからでしょうかね…。」


「スン?」


「うちのネコで、裕二にやけになついてるんです。」


 警部の疑問に父が答えた。


「あの、緑川さんは大丈夫だったんですか?」


「本人曰わく、レイプはされてなかったそうだ。というより、される寸前だったそうだ。」


 つまりギリギリだったのか…。


「あの、ちょっと話して来てもいいですか?」


「あぁ、いいよ。」


「その後、ちゃんと病院に行くんだぞ。」

 父と警部の了承を得て、僕はフラフラ緑川の元へ行った。


「あの、緑川さん。大丈夫ですか?」


「なんで助けに来たの…。助けを求めた覚えなんて無いけど…。」


 緑川は照れくさそうにしている。


「電話掛け間違えてたでしょ。ほら、芦田と阿久津じゃ間違えても仕方ないよ。」


 堅の名字は芦田である。


「でも私はあんたをいじめてるのに…。」


「それは確かにそうだけど…。」


 2人の間に沈黙が流れた。

 しばらくして緑川が、消えそうな言葉でこう言った。


「………がと…。」


「何?」


「だからありがとうって言ってるの!!一回で聞けよ!!バカ!!」


「ご、ごめんなさい!」


 大声を出し、緑川は立ち上がった。

 僕はこの時、ボコボコにされると思った。

 しかし、僕の予想は大きく外れ、緑川は僕に抱き付いて来て、泣き始めた。


「あの…痛いです…。」


「…うるさい!」


「はい!すいません…。」


 こんな時、普通なら嬉しいのだろうけど、相手が相手だけに、僕は絞め殺されるのではないかとビクビクしていた。


 その後、僕は病院に連れて行かれた。その検査でわかった事だが、肋が2本と左腕にヒビが入っていたそうだ。

 別に緑川が抱き付いたから折れた訳ではないよ。 その翌日、僕は検査入院していた。


「しかし、裕二がそんな事するとは思わなかったよ。」


 見舞いに来ていた裕之が意外そうにしていた。


「そうなのよ~。流石私達の息子ね♪」


 母は自慢げに話しながら、僕の頭を撫で始めた。


「母さん、痛い…。」


 結構普通にしているけど、ボコボコにやれるているので、触られるだけで痛い。


「それで、緑川はなんか言ってたか?」


「うん、ありがとうって言ってた。」


「へぇ~、意外に素直なんだな。」


 裕之は意外そうにしていた。


―コンコン。


「失礼します。」


((げっ…))


 僕と裕之は思わずその場から逃げ出したくなった。それもそのはず、入って来たのは緑川なのだから…。


「これ、借りてたコート。」


「あ、ありがとうございます…。」


 緑川は照れながらコートを差し出した。


「それで…、もういじめないから安心して…。」


 僕は自分の耳を疑った。その時の僕は、まさに苦労して探し求めた財宝を手に入れた気分であった。まぁ、顔には出さないようにしていたけど…。


「だから…、私と付き合って…。」


 緑川は頬を赤く染めながらそう言った。


「うん、いいですよ。」


「「本当に!?」」


 裕之と緑川の言葉がシンクロした。そんなに驚く事ないでしょ…。


「うん、これから良い友達として付き合っていきましょう♪」


「「へ?」」


 まさか僕をいじめていた緑川と友達として付き合っていけるとは…。まさに瓢箪から駒だよ。


「いや、そういう意味じゃなくて…」


「阿久津く~ん、検査の時間ですよ~。」


「あ、はい。わかりました。」


 緑川が何か言いかけた時、ナースが割って入って来た。


「それじゃ、行ってきます。」


 僕は車椅子に乗って、ナースに押して貰いながら病室を出て行った。


「ねぇ、阿久津って、鈍感なの?」


 僕が病室から出て行った後、緑川は裕之に問い掛けた。


「さぁ…、そういう経験ないから、気付かないんだと思う…。」


 裕之は唖然とした顔をしながら答えた。


「大変ね~♪」


 母は楽しそうにそう言った。

 ね、ベタでしたでしょ♪

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