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一途な想い

一途な想い〜元カレ

作者: みみ
掲載日:2026/10/05

会いたかった。

「こんにちは。僕のこと覚えてますか?」

「ええ、弟さんよね。」

「ずっと憧れてました。僕と付き合ってもらえませんか。」

「あなた、彼女がいるのよね?」

「はい…」

「彼女と別れたら付き合ってあげる。」

「いいんですか。」

こんなことってあるんだ。そのとき僕の世界に光がさした。

◇

「別れてほしい。」

…

「ごめん、好きな人ができた。」

…

「好きなだけで、まだ付き合ってない。」

「そう。じぁあ、最後に抱いてくれないかな。」

ちょと戸惑ったけど、まだ彼女と付き合ってないし、問題ないよな。

「あっ あっ あーっ みゆき…」

あっ、思わず彼女の名前を呼んでしまった。でも、同じ名前だから気づかないよな。


就職して半年が過ぎた頃から、職場の愚痴が増えて、一緒にいても楽しくなくなった。

ごめんね。君が嫌いになった訳じゃないんだ。でも出会ってしまったんだ。

◇

「彼女と別れてきました。」

「問題なくなったのね。じゃあ、付き合おうか。」


そのあと、僕たちは順調に愛を育んだ。

明後日、結婚する。

そんなとき、元カノから電話があった。

「会いたい。最後に会いたい。」

心配になった。彼女は幸せだろうか。

でも、母から止められた。当たり前だよな。

◇

「会ってきたよ。」

「元気にしてた?なんか言われた?」

「元気なんだと思うよ。幸せになってください。って、言ってたよ。」

「そうか。嫌な役をさせてごめんね。」

「家庭的なお嬢さんだし、彼女も幸せになってくれるといいわね。」

「うん。」

◇

軽井沢の教会での結婚式

僕は、僕たちは幸せになる。

兄貴は守れなかった彼女を僕が幸せにするんだ。これまで兄貴には何も敵わなかったけど、彼女は僕を選んでくれた。

◇

あれからいくつの季節が巡っただろう。

「母さん、身体は大丈夫?」

「ええ。今日も一人?」

「うん。やっぱり、兄貴とは顔を合わせたくないみたい。ごめんね。」

「そう…。あなたに会えただけでも嬉しいわ。

でも、お兄ちゃんはあなた達が来ると聞いた時は、ここへは訪ねてこないようにしてるのよ。」

「今度は一緒に来るね。身体、大事にしてね。」

「ええ、ありがとう。あなた、いま幸せ?」

「えっ、藪から棒だな。幸せだよ。」

「そう、それはよかったわ。」

なんだ?俺って、不幸そうに見えるのか?


「ただいま。母さん、元気にしてた。今度は二人でいらっしゃいって、言ってたよ。」

「うん、わかった。」

「兄貴に会うの、そんなにしんどい?嫌だったら無理しないでね。」

「…。わかった。」

なんか、歯切れが悪いな。まさか兄貴が忘れられないわけじゃないよな。


前夫の子がいるだけで、僕たちの間に子どもはいない。彼女も働いているし、一人の子を大切にしたいという希望だから。寂しい気持ちはあるけど、夫婦生活がないわけでもない。

家に帰れば優しく迎えてくれる家族がいる。ただそれだけが幸せだ。

◇

「子どもは2人?」

「3人いてもいいね。」

「あなたの子どもなら、何人いてもいいな。」

「えーそんなに養えるかな。」

「最初は小さなアパートでも、子どもができたらお家を建てたいね。」

懐かしい夢をみたな。お金がない時、住宅展示場に行ってたな。夢は叶ったのかな…。

◇

母が亡くなった。

葬儀で兄貴と顔を合わせる機会が多くなった。

どうして君は切ない顔をするの?兄貴じゃなくて、僕を選んでくれたんじゃないの。

たとえ君が兄貴に想いを寄せていても、君は僕の憧れだから。

ごめんね。手離してあげられないよ。

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