南方探索!その2!初テレポート体験!
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この荒野はとても広大だ。
それに、俺はまだ海にも行っていないし、遠くに見える山にも登っていない。
よって、俺が探索した場所なんて、せいぜい一パーセントくらいだろう。
だが、今回の探索はこれくらいにしようと思う。
なぜなら、そろそろ温泉が近いからだ。
俺の目の前にはとても高い崖。
この崖を十キロ程登れば温泉があるということを俺は知っている。
「えっと…あ~…。なんとなく数時間ほど配信を休止したい気分なので、一旦配信を中断します!また数時間後に配信を再開するから、その時までおつー」
流れるように言葉をまくしたて、俺は配信を終了しようとする。
>あ、こいつ!温泉に入るつもりだ!私らには黙ってやがった!
>逃がすな!
>おい!配信を中断するな!
>お願いお願いお願いお願いお願い!
>私のえっっな動画送ってやるから配信を中止しな…
怒涛のようにコメントが流れてきたが、無慈悲にも配信を終了。
…最後のコメントが目に入ったせいで、少しだけ後悔があるが…
まあ、今は俺には恋人がいるからな。そういうのはそろそろ自重しないと。
俺は崖をひょいひょいと登り、温泉を存分に楽しむのであった。
◆
「よーし、すっきりしたし、配信を再開するぞ!」
「わん!」
湯上がりでホカホカした状態で、俺は配信を再開。
>ねぇ?なんで入浴シーンを見せてくれないの?
>はあ…お前には失望したよ
>君、明日から来なくていいよ?君の代わりはいくらでもいるんだからな
>温泉を一人で楽しみやがって…ズルい!そして入浴シーンを見せろ!
「温泉?なにそれ?知らないなぁ?へえーそんなのあるんだー」
俺の棒読みのすっとぼけに対し──
>…お前の表情、むっかつくわ
>そんなので誤魔化せると思ってるの?
>たまには視聴者サービスしろ
>そんなコに育てた覚えはないぞ!
思った以上に評判の悪そうなコメント欄。
「はいはい、俺が悪うございました。さーせんさーせん。実はしっかり温泉を堪能していました~。うん。気持ちよかったぜ!」
配信外の出来事なのにあまりにバレバレなので、もう俺は開き直ることにした。
俺は温泉に入った時のことを、ふと思い出す。
聞いた話によると、あの温泉周りには好戦的な百m級のグリズリーの縄張りらしい。
なので、俺も全力で警戒していたのだが、幸いにも温泉にはグリズリーはおらず、ゆっくりと温泉を楽しむことができた。
まあ、そのかわりにと言うのもアレなのだが、ムキムキのメスゴリラがいたんだけどね。
最初は俺も流石に身構えた。
ただ、ゴリラは明らかに知性のある目をしていて、行動一つ一つがとても紳士的だった。今の世の中なら淑女的といったほうが正しいか。
見た所とても優しそうで、好戦的な様子はなし。なので俺も警戒を解き、思い切って一緒に温泉を堪能することにしたのだ。
そのゴリラはどうやら可愛いものが好きで、しかも世話好きな性格だったらしく、温泉に入りながらわざわざクスネの世話までしてくれた。
クスネも警戒すること無くゴリラの優しい手つきに身を預け、とても懐いていた。
うん、あのゴリラが特別なだけかもしれないが、ゴリラって優しいわ。いつか、アイツとは友達になりたいな。そんなことを思った覚えがある。
俺がそんなことを思い出している間にも、視聴者から誠意がないだとか、もっと謝れだとか散々言われている。
それらのバッシングを適当にあしらいつつ、強引に話を変える。
「さて、じゃあ今度はウツギの家にでも行くか!ウツギがどこに家を建てたかは知らないから、視聴者ども!案内してくれ!」
>まあ、今回は許しておいてあげるか。今度は入浴中も絶対に配信しろよ
>今度の目的地はウツギの家なのね
>おけおけ。しっかりウツギの配信も見てるから案内できるぞ
>まあ、案内しなくともウツギなら配信を見てそうではある
>今あなたがウツギを呼べば、テレポートですぐ飛んできそうwww
「いやいや…流石に呼べば来るなんてことは無いだろ…まあ、試すだけ試してみるか。ウツギー?いる?家まで案内してくれ!」
「はいはい。いいわよ」
「うわ!ほんとに来た!」
釈然としない顔で飛んできたウツギ。
>草
>ほんとに来たwww
>ウツギのノリの良さだけは嫌いじゃないwww
「言っとくけど、常にあなたの配信を見ているわけじゃ無いからね。今回は”たまたま”あなたの配信を見ながら作業していただけだから!」
なぜか言い訳がましく言葉を紡ぐウツギ。
ウツギのその挙動、前世で俺がエロ本を見ていたことが親にバレたときの反応と全く同じなんだが…
おいおい。俺の配信はアダルトコンテンツじゃないぞ?常に配信を見てようが、まったく恥ずかしいことじゃないのに…
「でだ。ウツギの家がどんなのか知りたいんだけど、案内してもらっても良い?」
「うーん…うちは男が女の部屋にあがるのって、どうなのって思うんだけど…」
「ええ~。いいじゃんいいじゃん!ほら!男とか女とか言う前に、友達みたいなもんじゃん!お願いお願い!」
>男女の友情なんて成立しないぞ
>駄々をこねる男=みっともない
>なんでそんなウツギの家が見たいんだよwww
俺と同じくスローライファーであるウツギの家なんて、知りたいに決まってるだろ!
あ、あと、男女の友情は成立します!ウツギとの関係をもって、俺が証明してやろう!
「…うん。そうね。うーん…そこまで言うなら…でも…」
ウツギはしばらく葛藤した後、
「仕方ないわね。いいわよ。たまにはあなたの視聴者達に、うちが見事なスローライフを送っているってことを見せつけてやらないとね。舐められたままじゃ気がすまないもの。まあでも、そんな自慢できるほど立派な家じゃないんだけどね」
よしよし!ウツギにはなんだかんだ俺の駄々っ子攻撃が効くんだよね!そういうちょろい所好きだぞ!
「ありがとう!じゃあ、早速案内してくれ!いやあ!楽しみだな!」
「…そんなに期待されても困るんだけど…まあ良いわ。さて、面倒だしテレポートで行きましょうか」
「おっ!テレポートなんてするの初めてだ!」
「はいはい。一瞬のことだから、さっさと行くわよ」
俺のワクワクした態度をあしらいつつ、ウツギが俺に近づいてくる。
誰かと共にテレポートをするには、どこか体に触れていないといけないらしい。
ウツギが近づいてきたことにより、ふわっとしたストロベリーの香水の香りが俺の鼻腔をくすぐった。
(苺の花言葉は甘い誘惑。もしかして、うちに誘惑してほしいの?)
その香りのせいか、以前ウツギに言われたことを思い出し、つい反射的にドキドキしてしまう。
なるべく、平常心にならなきゃ。このドキドキを、ウツギには悟られたくない。
できるなら、ウツギとは今現在の友達のような関係のままでいたいからな。
俺がそんな葛藤をしている間に、俺の肩にウツギが手をポンと置く。
その途端、俺の視界が一瞬ぐにゃっと曲がり、気づけばもう目の前の景色は変わっていた。
えっ……!?
あまりのあっけなさに、脳が混乱しているようだ。一旦深呼吸して、周りを見渡す。
……うん。間違いない。しっかりテレポートしている。
ホントに、こんなに一瞬なんだ!
さっきのドキドキなんて吹っ飛び、今は爆発的な高揚感で満ちている!
「テレポートすげえ!なあクスネ?凄くない?」
「わんわん!」
俺はしっかり一緒にテレポートをしてきたクスネを抱き、感動を共有するかのようにワシャワシャと撫でまくった。
クスネもテレポートという超常体験により、テンションが高い。
「ふふ、テレポートなんていくらでもやってあげるから、そろそろ落ち着きなさい」
そう俺達を注意しつつも、ウツギはどこか誇らしげだ。
>はしゃぎすぎだろwww
>クスネきゅんもしっぽを必死にフリフリしてて可愛いwww
>誇らしげなウツギ見ると、何故か助走をつけて顔をぶん殴ってやりたくなる
>クスネくん。こういう不思議体験をしても動じないよなぁ…大物だわ
「本来の目的を忘れてるわよ!さあ、見なさい!ここがうちの家よ!期待を裏切って悪いけど、普通の家でしょ?」
俺とクスネがひとはしゃぎし終えた所で、ウツギが目の前の家を紹介してくれた。
次回予告:ウツギの家の外観のセンスが…
短編の【男女比1:10の世界で、兄が明らかにチート系転生者なので、弟の僕は兄から距離をとってコツコツ頑張ることにします】を投稿しました。




