収穫作業!ちょっとだけ食べてみよう!
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「ういーす。大規模収穫ムキムキイケメンのヒノキでーす。旅行から帰ってきて少し休んだので、今日からスローライフの再開だ!」
>告知してから始めろ
>今日も楽しみ
>旅行配信も楽しかったけど、やっぱスローライフなんだよなぁ!
>もうこちとらスローライフ配信を見ないと寝れないんだよ!毎秒配信しろ!
うんうん。コメントの反応を見る限り、ちょっとずつスローライフの魅力が視聴者に伝わってきたように感じるな。
人数で言うとほんの一部の視聴者だけっぽいが、それでも嬉しい。最初の頃はスローライフなんて全否定されていたからな。
この調子でいけば、全人類がスローライフの魅力に気がつく日も近いな。
「いやぁ…それにしても、やっぱりここの自然が一番だわ!」
>トリカ様の予言通りで草
>トリカ様すげえ!
>このヒノキの顔はピンときてないな?
>さあ、トリカ様が旅行先で言っていた言葉を思い出して!
…あっ!
そういえばトリカが「帰ったら惑星フルールの自然が一番だと感じるはず」と予言してたな。すっかり忘れてたわ。
にしても、ドンピシャかあ。流石はトリカ。俺より俺のことを分かってるんじゃないか?
まあ、俺が選んだ恋人なんだから、それくらい出来て当然だよな!
さて、脳内で謎の上から目線でトリカを褒めた所で、そろそろ俺の近況報告を始めよう。
「まずはちょっとした悲報から発表しようか」
>え、こわ
>なんか知らんがやめて
>引退か?
「いやいや、凄い私的なことだから別に怖がる必要はないぞ。でも、俺的には大きいことなんだよね。だから、今から言うことを聞いてもしょーもなって反応はするなよ?分かったな?」
>わかりました!
>まあ、怖がる必要ないならなんでもええか
>絶対にしょーもなって言いません!!!約束します!!!
>もし「しょーもな」って反応したら、ビンタしてもらってもいいよ!
俺は読み上げるように悲報を発表する。気分はアナウンサーだ。
「悲報です。俺が食事のデザートとして毎回楽しみにしていたりんご、旬が終わる。予備もそんなにないらしく、ヒノキさんは絶望しているとのことです」
>しょーもな
>しょーもな!
>しょーもな!!!!!
うん、そういう反応になるのはなんとなく分かってたよ…ある意味期待通りの反応ありがとな。
「いつもわりとどこに行っても実ってたから、果物に旬があるなんて当たり前のことを忘れてた!最悪だ!こんなことなら、あるときに大量に採取しておいて、宇宙船の食料保存庫に入れておけばよかった…!くそう!」
今朝、運動がてら森を走っているときにりんごが見当たらないことに気がついたんだよね…
もっと早くに気がついていれば、対策もできたのに…
なくなって、初めて気づく、大切さ。
ああ、悲しくて自然と川柳を詠んでしまった。
>この惑星の中で、わかりやすく価値のある果物であるりんごが…
>クエストとかで交換に便利だったのにね
>ワイもりんご食べたかったなぁ…
>そうか。デザートもだけじゃなくて、クエストの交換にもひびくのか
まあ、最悪クエストの事はいいよ。また価値のあるものを探索で探せばいいからな。
でも、俺のデザート…それはもう帰ってこない…ああ。悲しい。
「まあ、悲しいけど、切り替えないと。それに、スローライフを送っているのに、食べ物だけは宇宙船の食料保存庫に入れるなんて、ちょっとズルいしな。これからは旬を大切に、もっと食べ物をありがたがって食べないとな」
>えー!?食料保存庫は使わないの?
>なかなか厳しい縛りプレイですね…
>知ってる?食料って腐るらしいぞ!
>まあ、最悪食べ物はなんとでもなるしな。タブレット食も配られてるだろうし
そう、最低限食べ物のことはこんな辺境の惑星だろうとなんとでもなる。
だから、そろそろ食料保存庫の出番は終わりにしてもいいかなあと、何度か思ってはいる。まだそれについてはもう少し悩ませてくれ。
ちなみにだが、今の俺は味気ないタブレット食こそ食べていないが、似たようなものは接種している。
普段の食事にプラスして、足りない栄養素はサプリで補っているのだ。
身体づくりに本気な俺は、接種する栄養素に関しては妥協するわけにはいかないからな。
「さて、実は今日やることがある。…突然ですが問題です!今日の俺は何をする予定でしょうか?」
>唐突のクイズ
>前言撤回からの虚無バナナの無限回収!
>私への愛の告白!
>うーん。なんだろうな?(知らねえよ。さっさと答えを言えよ…)
>南へ探索とかか?
「おしい!南への探索は明日やる予定だ!せっかく強くなったから、南への探索にも行きたかったんだよね!ということで、明日を楽しみにしておけよ!じゃあ、そろそろ答えを発表するか。正解は……収穫でしたー」
>おおー!
>収穫か!
>ということは、あれか?豆と芋あたりが収穫時期なのか?
「その通り!ヨヒラから教えられた初心者向けの作物の、豆と芋はもう収穫できるんだよ!収穫なんて初めてだから、凄い楽しみだ!」
>機械とか技術を使わない収穫って、くっそ非効率で大変そう
>こんな暑そうな日に収穫かあ…大昔の人は大変だったんだろうなぁ…
>収穫なんて見るの初めて!
「実は、こんなスローライフ中にでも楽をして効率的に収穫する方法もあるにはある。でも、とりあえず最初は手作業でゆっくり収穫してみようと思う!」
よし、早速移動しよう。
俺は家を出て、農地へ向かって走っていく。
視聴者と軽く雑談しながら移動すると、あっという間に豆と芋の農地へたどり着いた。
「ほら?木を引っこ抜いてからは何にもなかったこの土地、今はもういい感じに葉っぱがわっさーってなってるだろ?凄くね?」
>種を植えただけなのに、もうこんな成長してるのか
>とんでもない繁殖力だな
>葉っぱがわっさーって表現、なんかおもろいwww
>でも、確かにわっさーってなってるwww
「まずは豆からゆっくり収穫してみるか。といっても、さやをナイフで切るだけで最低限の収穫は出来るらしいんだけどな。でも、これだけたくさん実っているなら、茎から切ったほうが効率は良さそうだな」
とりあえず一本だけ茎を切ってみる。
ナイフを茎に当てると、そこまで力を入れなくてもプチッと切れた。
「はい、初めての収穫完了!まあ、普段から採取はしてるから、豆に関しては採取と似たようなものだわ。で、こうやって茎ごと切って、後でさやを分離して、乾燥させれば、乾燥豆の完成だ!乾燥させるのは保存期間を長くするためらしいぞ?」
乾燥させるだけで二年くらい持つらしいからな。食料保存庫を使わない努力くらいはしたいと思っているので、やらない手はない。
>へぇ~
>そっちでは食材保存なんて考えなきゃいけないのか。面倒だなあ
>乾燥豆と生の豆って味は違うのだろうか?
確かに。
大体のものって収穫したてが一番新鮮で美味しいみたいなことを聞いたことがあるし、これも収穫したてだと美味しいのかな?
えっと、この豆は…チップによると、生食は可能らしい。
「よし!じゃあ試しにつまみ食いしてみます!まあ、乾燥後に水で戻しただけの豆をヨヒラにお願いして食べさせてもらったから、食べたこと自体はあるんだけどな!果たしてその時と味も違うのか?」
以前ヨヒラに提供された豆を食べた時、印象的だったのは、豆の苦みの強さだ。正直、そこまで美味しいものではなかった。
そもそも味というよりは、育てやすさでヨヒラにおすすめされたものだからな。仕方ないことではある。
>わざわざ豆を食べようと思わないタイプです
>所詮豆でしょ?
>正直豆という食材を舐めてる
俺が豆のさやを切り、中の豆を取り出そうとしている時、そんなコメントが散見された。
おいおい…豆は素晴らしい食材だぞ?だって、タンパク質が含まれているからな!
それに、俺はあの少しだけ癖のある、シンプルで素朴な味が普通に好きだ。食材としても使いやすく、何に入れてもだいたい美味しいのも好きだ。
「自分で育てて収穫したフレッシュな豆なんて初めて食べる!さて、お味のほどは…いただきまーす!」
豆を口に入れ、もぐもぐと味わうように噛みしめる。
「…」
>おい、なんか言えよ
>もぐもぐもぐじゃねえよ
>はよ。感想はよ
モグモグ。ごっくん。
…うん。なるほどね。
「…えっとねえ。豆の強烈な苦みと、豆の生臭さがすごい!ははは、なんだこれ?笑えてきた」
>どういう感情?
>食べて笑うなwww
>食レポが意味分からなさすぎて逆に気になってきた
乾燥後の豆を水に戻したものと、味の強烈さが全然違う!苦みもより引き立っているし、乾燥後の豆では感じなかった独特の匂いまである。
生の豆の味は、どうやら悪い方向に尖っているようだ。
総評としては、食べられないほどではないが、決して美味しくはない。なんならそのまま食べるだけだとまずい。ってところかな。
だが、これを食べた俺は、今少しだけワクワクしている。
なかなか個性的な味だったが、こういう強い個性を活かすために色々調理法を考えるのって楽しいんだよね。
そういう期待感も込みで、俺はこの採れたての豆、結構好きだわ。
それにしても、自分で育てて収穫したものって、こんなに愛着が湧くんだなあ。
なんというか、子供が出来たみたいだ。
出来た豆は作物としては今のところ微妙な出来ではあるが、それでもこの豆がとても愛おしい。
ただ、この結果で満足してはいけないよな。
品種改良や土を工夫して、今度はもっとおいしく育ててやるからな!
次回予告:それはチートではありません




