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舞踊決闘!進まないスローライフ!

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「はいこれ、お裾分けです」


「おお!わざわざありがとうね」


 ひとまず生活の安定したヨヒラに、現在俺はお裾分けをもらっている。


 肉や岩塩やハーブやスパイス、お花など様々なものだ。凄いな。もうこんなに生活が安定しているのか…


「俺も何かお返ししたいんだけど、現状返せるものがなにも無くてごめんね」


「いえ、大丈夫です。ただの余ったものなので」


「うーん…そうはいってもねぇ…」


 ただでもらうだけというのはなんだか申し訳ない。なんというか味気ないと言うか面白みがないと言うか…


 俺のそんな表情を察したのか、ヨヒラはある提案をしてきた。


「なるほど。御主人様がどうしてもなにか返したいというのなら、現金をください」


「えっ、現金でいいの?それなら配信の稼ぎで問題なく渡せるけど…そんなんでいいの?」


「はい、SCエネルギーは限られているので、これからはスローライフに必要な道具は通販で買うことも考えています。そのほうが安上がりで効率よくスローライフができますからね」


「たしかに。俺には道具を買うっていう発想はなかったなぁ。そりゃ買ったほうが安くて便利なものもあるか」


「それに、私は基本的に働くのが嫌いです。ワープして悪人を斧で首をぶった切る仕事をすれば稼げはしますが、わざわざ他の惑星まで行くの、少し面倒なのです」


「なるほどなあ。でも、物をもらったお裾分けのお返しに現金を渡すのもなぁ」


 せっかくのスローライフなのだ。お裾分けに現金を渡すなんてなんだか無粋な気もする。


 というか本音を、言うと俺も物々交換したい!物々交換ってなんか凄いスローライフっぽい!


「はあ…仕方のない御主人様ですね…もし、物々交換にこだわるようでしたら、御主人様の精液でもいいですよ」


 そう言ってニッコリ笑うヨヒラ。その貼り付けたような笑顔を見ていると背筋が冷えた。


 この宇宙では男女比が1:10の関係で、男の精液は多少のお金になる。お小遣い程度だが…


 技術が発展しているせいか、微量の精液さえあれば子供を生むのに困らないので、あまり大金にはならないのだ。


 やはり、この宇宙では娯楽以外の価値が低い。お金を稼ぐには結局のところ娯楽だ。


 まあそんなことよりも、俺は少し気になることがあるのだが…


「アンドロイドって精液の搾取が抜群に上手くて、一度搾取されると二度と普通のやり方では満足できないっていう噂がはびこってるじゃん?あれって本当なの?ただの噂だよね?」


「………ふふっ」


「ねえなにか答えてよ!怖いんだけど!」


 ヨヒラは意味深に笑うだけだ。返答しようとしない。

 

「…うん、今は大人しく現金を渡すことにするよ…」


「分かりました。よろしくお願いします」


 はあ…なんだかずっとヨヒラの(てのひら)の上で踊らされていた感じがする。


 まあ、いずれ物々交換できるように頑張ろう。現金を渡すのは今だけだからな!



「ところで、私の方はこの1週間、順調にスローライフを満喫していましたが、御主人様の方はどうですか?どれくらい生活を充実させれましたか?」


「俺?俺の方はねぇ…いやぁ…俺はちょっと別のことに夢中になっててね…残念なことに何も生活は進んでないんだよね。この1週間でしたことといえば、ダンスの練習だけだよ」


「は?」


 ヨヒラが心底理解できないというような表情を浮かべる。


「何故ですか?何故生活も安定していないのにそんなことを?」


「いやぁ…これには浅い浅い理由があってね…簡単に言うと、この惑星の森に住んでいる7色の猿の集団に煽られたんだよ。だからダンスの練習ばっかりしてた」


「あの…言っている意味がさっぱりわかりません。最初からゆっくり説明してください」


「じゃあ、ゆっくり語らせてもらいますか…って言っても、最初から話せばすぐに終わる話なんだけどな」


「お願いします」


 俺はあのときの苦労を思い出すかのように、こめかみを手でもみながら話し始める。


「俺が生活を安定させるにはまず何をすべきかを考えていた所、何をするにもまずナイフがいるなぁ…って結論になってさ」


「そうですね。ナイフは様々な手段に使えますものね」


「最初は石を割ったり削ったりして作ろうと思ったんだけど、もっといい方法があるじゃん!とふと思いついてさ、バカ恐竜の牙を引っこ抜いてナイフにしてやろうと思ったんだよ。あいつに肉を取られた恨みの仕返しもできるし一石二鳥じゃん!とも思ってたな」


「…なんともアホな考えですね…しかもかなり危険ですし」


「まあ、今はあいつに勝てなくても牙を引っこ抜くくらいなら出来るかなぁって思ってね。結局色々あってそれが出来なかったのは残念だわ。また今度挑戦しに行こうかな」


「その時は私を連れて行ってくださいね。一応危険なので」


「わかった。で、俺はそのバカ恐竜を探すために森をうろついていたんだけど、その時に7体の猿が現れた。それぞれ赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の体毛の猿。俺は虹みたいだなって思ったから、虹猿って呼んでいるんだけどね。その虹猿達が俺になにか言ってるわけよ」


 ヨヒラが安直なネーミングだなとでも言うような顔で俺を見てくる。いいだろ!分かりやすくて!


「で、脳内のチップで虹猿が何を言っているかを解析してもらったら、決闘を挑まれていたようで、なら決闘するかと俺はその挑戦に乗った。俺はてっきり戦うのかと思ってたけど、虹猿達の決闘方法はダンスだったんだよ」


 脳内のチップには動物の発する声を解析して感情を読み取ることもできるのだ。ほんとチップ便利だわ。


「なんともまあ変わった生態の猿ですね」


「そうなんだよ。まあ俺もダンスは昔軽くかじってたから、ダンスだろうが軽くいなしてやろうと思ってたんだけど、思ったより虹猿達がダンスが上手くてさ。結果ボロ負けしたわけよ」


 ヨヒラがこいつ猿以下なんだとでも言うような目をしてきた。いやいや、アイツら相当ダンスうまかったからな!俺が下手だったわけじゃないぞ!


「で、その後、勝った虹猿達が俺をバカにしたような目で見ながら、煽るようなダンスをしてきたから、俺は頭にきて、絶対に見返してやろうとこの1週間、持てる技術を全て総動員して全力でダンスの練習ばっかりしていたってわけよ」


「何故わざわざ相手の得意分野で対決しようとするのか…何故猿如きに煽られて頭にくるのか…御主人様の思考は理解できませんね」

  

 いやぁ…俺は身体能力に自信があるからさ、体を動かす分野で野生動物ごときに負けたくなかったんだよね。しかもほんとにダンスには自信があったし。


「で、もう一回俺からダンスバトルを挑みに行って、その猛練習の御蔭で虹猿にはなんとか勝てた。でもその後、虹猿たちは興奮して俺を襲ってきたんだよ。どうやらダンスが上手い奴ほど魅力的だという価値観を持っているみたいでさ…一応アイツらメスだから、かなり貞操の危険を感じたわ…まあ、ゆっくり説明するとこんな感じかな」


 話を聞き終えたヨヒラが呆れたように一言だけ言い放つ。


「…御主人様はスローライフをするつもりあるのですか?」


 ぐはっ!


 今の言葉、俺の心に深く刺さった。感情を込めてそんな事言わないで!


 俺もナイフを作るつもりが、ダンスばかり練習することになるとは夢にも思ってなかったよ!全てが想定外なんだ!煽ってきた虹猿が悪い!


「仕方ないですね…では御主人様、私は今からそのバカ恐竜とやらを狩りに行きますので、ついてきてください。その恐竜の素材、私も興味があります。デカい生物の素材は大抵強度が強く、万能なのですよ。無事に狩れたら牙の1本や2本くらい持っていって構いませんから」


「え、良いの?ありがとう!」


 ということで、ヨヒラについて行き、ヨヒラは見事な手腕であっという間にバカ恐竜を見つけ出し、その背中のバカでかい戦斧を使って一太刀で首を狩り、SCエネルギーを使い全ての素材をで圧縮して持って帰り、ついでに牙をお裾分けしてもらった。

 

 戦斧を振りかざすときのヨヒラは凄く楽しそうだった。それはもう見たことのないような満面の笑みだ。ヨヒラってさあ…いや、なんでもない。首を切るのが好きなサイコパスみたいだったなんて思ってないぞ!


 というかさあ!俺がこの1週間でやろうとしてたことの上位互換を1時間もかからないうちに終えたんだけどこのアンドロイド!


 俺の立場がないんだけど!?優秀すぎる!


 …今からもうちょっとダメなアンドロイドに変更できませんか?

次回予告:おっぱい襲来!

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