公開告白!二章最終話!
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「けじめをつけます!」
>何言ってるの?
>けじめとは、間違いなどに対し、責任を取る、またははっきりさせること
>色々説明が足りん。説明はよ
「ヤバ!もうそろそろ時間だ!さっさと移動しないと!告白の詳細な説明は…うん!お前らが各々察してくれ!」
視聴者を置いてけぼりにしながら、猛ダッシュで用意する。予定より視聴者と長く戯れすぎた。
くそう。こんな日くらいスマートに決めたかったのに…
どうやら、今日の俺は柄にもなく緊張しているらしい。まさか時間管理をミスするとは。
このままではギリギリ待ち合わせ時間に間に合わない!急がないと!唸れ俺の筋肉!限界を超えろ!
「リミッター解除!うおおおおおお!!!!」
俺は大急ぎで宇宙船に乗り込み、爆速で宇宙服に着替え、目的地を設定する。
出発!
ふぅ。これで少しは落ち着けるな。宇宙船に乗ってしまえばこっちのものだ。一度航路を設定すれば、予定時刻から遅れることはないからな。
この間に、今日の流れをもう一度再確認しておこう。
ああ、緊張するな。うまくいくと良いが…
◆
「で、今日はいったいなんで僕達を呼んだの?」
「そうね。あなたからわたくしたちを誘うなんて、珍しいことじゃない?」
俺とセリとトリカは、現在俺の宇宙船の中にいる。俺が宇宙船で二人を迎えにいき、今日の舞台であるこの場所へ連れてきたのだ。
その舞台とは北の湖。
二人をここに呼んだ理由はまだ話していない。なので、二人からその様な疑問が来るのは当然だろう。
「まあ、今は一旦何も考えず、俺の言う事を聞いてくれ。北の湖の辺に木のボートがあるから、そこで座って待っててくれない?すぐ俺もそこに行くからな」
しぶしぶ俺の言う事を聞く二人。
二人が宇宙船から出ていった姿を見送った後、俺は本格的な準備に取り掛かる。
まずは、宇宙服から、しっかりとしたスーツに着替える。これは今日のためにスポンサー様に特注して頼んだものだ。
スーツに合わせて、髪型もいつもよりしっかりセット。
うん。バッチリ!
次に、今日の朝、事前にラッピングしておいた二百本のバラを持つ。白と紫の花がそれぞれ百本。これは、俺が宇宙船でこの日のために密かに育てていたものだ。
この色のバラを育てたのは、二人の髪色と同じ色だからだ。
追加で言うと、白と紫は、俺が今世で新たに大好きになった色でもある。
最後にヨヒラにメールで合図を送り、全ての準備が完了した。
>あ、察したわ
>格好でなにするか丸わかりで草
>プロポーズ?
視聴者に大まかなことを察されたが、その認識はちょっとだけ間違っている。
こんな格好をしておいてなんだが、別にプロポーズするわけじゃない。俺が今からしようと思っているのは、俺なりのけじめであり、二人へのお願いだ。
よし!行くぞ!
俺は頬を両手で叩き気合を入れた後、宇宙船を出て、二人が待つボートの下へ走る。
「おう!おまたせー」
花束を持ち、キメッキメの格好で走ってきた俺をみた二人の反応は、
「…え?僕、今からプロポーズされるの?もちろんオッケーだよ!」
「正直あなたが真剣な顔をしていたから、今からフられるんじゃないかと心配したわ。でも、それはなさそうね。あ、プロポーズならわたくしもオッケーよ」
「ちょっと!まだ何も言ってないだろ!返事が早い!もうちょっと待って!それに、プロポーズするわけじゃないからな!」
少し出鼻をくじかれたが、無理やり事前の計画通りやろう。
「…コホン。えーっと。一旦、ボートでもっと奥まで行こうか」
「いいね!デートみたいで楽しそう!」
「そうね。この湖、とても綺麗だからそれも楽しそうね」
ウッキウキの二人を乗せ、俺はボートを漕いで進んでいく。
俺が今日の舞台にこの場所を選んだのは、俺が知ってる場所の中でここが一番雰囲気が良いからだ。雰囲気を良くすることで、成功率を少しでも高めたかったのだ。
ヨヒラの住むこの北の湖は、景色がとてもいい。
壮大で、水も澄み、湖畔がキラキラと輝いている。水が澄んでいるので、魚が元気に泳いでいる姿も楽しめる。
湖だけじゃなく、湖の周りの景色も、絵に書いたような美しさだ。
ボートの上から少し遠くを見れば、沢山の花や木などの植物を楽しむことが出来る。
これらは、ヨヒラの趣味のガーデニングによって植えられたものも多い。
更に今日の湖は特別仕様。
ボートでしばらく進んでいけば、ある景色が見えてくる。そこが今日の最終目的地であり、告白予定地だ。
「うわぁ…綺麗」
「ふふ、なかなか粋なことしてくれるじゃない。いいわね。とっても素敵だわ!それに、とってもいい香り…」
たどり着いたのは、普通の湖ではありえないような、沢山の花が水面に咲いている場所だ。
キラキラした湖と色とりどりの花々。
沢山の花の香りが、俺達の周囲の空気を甘く満たしている。
これは自然にできたわけではない。今日だけの特別な景色だ。
この演出はヨヒラに手伝ってもらった。水面や水辺にも花を咲かせる種類の花を、一時的に一箇所に集めてもらったのだ。
それ以外にもヨヒラに手伝ってもらったことは沢山ある。二人との関係について真っ先に相談したのもヨヒラだし、バラの育て方を教えてくれたのもヨヒラだ。ヨヒラがいなければ今日という日は迎えられなかっただろう。
「さて、目的地にたどり着いた所で、二人に聞いてほしいことがある」
俺の真剣な表情を見て、二人も押し黙る。
「色々迷ったが、俺の中でやっと結論が出た。今日二人に聞いてほしいのは、俺達の関係についてだ」
沢山悩んで、しっかり考えた。
「やっぱり、酔った酒の席で無理やり恋人関係になるのは良くないと思ってな。それに、俺の恋愛観では、複数の女を愛するのは誠実なことではないんだ。そのことは、俺の中でずっともやもやしてたんだ。今日はそれを解消しようと思う」
この宇宙ではどんな恋愛の形だって許される。恋愛に関してはとても自由だ。
そんな風潮があるのにも関わらず俺がこんな恋愛観を持っているのは、前世の影響が抜けていないからだろう。
生まれ変わったと頭で分かっていても、長年染み付いた考えはなかなか抜けないのだ。
だが、ビビるな!俺!もう前世の俺ではないんだ!変化を恐れるな!
「一旦関係を解消しようとも考えたが、それはどうしても嫌だった。だから、こういう形でけじめをつけさせてくれ」
俺の手に汗がにじむ。手も少し震えている。
でも、あとは脳内で何度も練習したセリフを言うだけだ。最後の気力を振り絞れ!
「セリ、トリカ。二人のことが大好きだ!改めて、俺と結婚を前提に恋人になってください!」
セリには百本の白のバラの花束、トリカには百本の紫のバラの花束をそれぞれ片手に持ち、二人に突き出す。
これが、俺なりのけじめだ。
無理やり成立したような恋人関係だったが、それで分かったこともある。
俺は、二人にとても惹かれている。
その事実に気づいた途端、この気持ちは、しっかり行動に移して伝えなければと思ったのだ。
そして、許されるのならば、関係の再スタートがしたい。それが俺の願いだ。
俺の告白の後、ちょっとした静寂が訪れる。
先に口を開いたのはセリ。
「僕は、ヒノキからそう言ってくれることをずっと願ってたんだよ。その願いが今日叶うとは思わなかったなぁ…改めてよろしくね。ヒノキ」
普段の無邪気さを一切見せず、涙ぐんで花束を受け取るセリ。
次に口を開いたのはトリカ。
「バカね…そんなこと、わざわざ改めて言わなくてもいいじゃない…もちろん良いに決まってるわよ」
すこしホッとしたような表情を浮かべ、花束を受け取るトリカ。
ドーン!
上空に花びらの花火が打ち上げられる。
事前に俺の告白が成功したら打ち上げてほしいとヨヒラにお願いしていたのだ。
ハラハラと上空から沢山の花びらがゆっくりと落ちてくる。
まるで、花びらのシャワーだ。
「よしよし!!!ふぅー。緊張した!改めて二人共、これからもよろしくな!」
>パチパチパチ
>ひゅーひゅー!
>こっちまで緊張したわ
>改めておめでとう!
珍しく、視聴者も祝福してくれているようだ。花びらのシャワーも相まって、お祝いムードがこの場を満たしている。
いやぁ…良かった良かった!
「ねぇ?ヒノキ?、ここまでしたんだから、僕はもうヒノキの言う結婚相手とやらにも選んでくれるよね?勝ち確定と思っていいの?」
「あら?そうね。そこはわたくしも気になりますわね。改めて恋人になったのは良いとして、将来はどう考えていますの?」
ああ、次の悩みのタネはそれなんだよなあ…
「…正直、未来がどうなるかはわからん!予定は未定だ!俺は最終的には結婚相手として一人を選びたい!…って心持ちだけはあるんだけどね。今回のように恋人を二人も選ぶことになるなんて、俺は今まで一切考えてこなかったから、どうしたもんか。…まあ、ゆっくり考えるよ」
憧れの結婚生活のためには、なるべく妥協したくない。恋人と結婚相手とは、俺の中ではまた全然違うものなのだ。あくまでも、結婚を前提としたお付き合いがしたいというだけだ。結婚確定とは全く思っていない。
「ここまでしといて僕を捨てるなんて選択肢をとったら、ヒノキのこと絶対に許さないけどね」
「そうですわね…もし将来わたくしを選ばなかったら…一生後悔させて差し上げますわ!」
最高の笑顔で俺を脅す二人。笑顔が怖えよ。なるべくなら、全員が納得する選択肢を選びたいな。
未来がどうなるかはわからないが、これからも、変化を恐れず、俺は俺らしく、この二人とともにゆっくり一歩ずつ歩んでいこうと思う。
今世は、前世より長い人生になる。前世と違い現代の宇宙では、何もしなくともだれでも五百年位は平気で生きていられる。
そんな長い人生だ。そりゃ、未来の予想なんてできるはずがない。
これから、もっと関係を深めてこの二人と結婚することになるのか、それとも関係が悪くなり、恋人関係すら解消されてしまうのか…
どんな未来にもなりうる可能性がある。考えだしたらきりがない。
だから、俺がやることは一つだ。改めて言わせてもらおう。
俺は、今を大切に生きていく!
そうすればきっと、いや、絶対に、いい未来にたどり着けるはずだ!
全力で進んでいくから、俺の成長を期待してくれよな!
次回予告:閑話休題を四話はさみ、三章の始まり。三章:他の惑星編




