誕生日会4 結果発表!
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「じゃあ、栄えある一位を発表しちゃいましょうか!第一位は…」
その言葉とともに、周囲にドラムロールが鳴り響く。
ドキドキ。
俺が選ばれるわけでもないのに、ドラムロールを聞くとドキドキしてしまう。
かなりの時間焦らされた後、満を持して、トリカによって結果が発表される。
「…第一位は、ロイヤルとわたくしのペアよ!!ヨヒラ!残念だったわね!」
おお!トリカが勝ったか!おめでとう!
「全力で勝ちにいきましたが…一歩及ばずですか…悔しいです。でも、キュキュ。よくやりました」
「きゅきゅきゅー」
ヨヒラがキュキュを優しく撫でる。キュキュは撫でられて嬉しそうだ。
「さて、これでこの大会は終了よ!ちなみに、わたくしのお願い事に関しては、明日やろうとしていることをちょっと手伝ってもらうだけよ!だからウツギ!安心しなさい!」
少しホッとするウツギ。
…まあ、これは俺の経験上の話だが、トリカが安心しろと言って、本当に安心できた試しがない。
だから、あんまり気を抜かないほうがいいよ?
「さて、最後に、この大会を企画してくれたヒノキから一言もらって締めましょうか」
おっと、いきなりだな。
トリカからマイクを投げられたので、反射的にキャッチ。
まあ、ノープランだが、とりあえず話し始めるか。
「えー。企画者のヒノキです。さて、この大会はヨヒラを楽しませるために開催したものだ。ヨヒラ?楽しんでくれたか?」
俺はマイクをヨヒラに向ける。
「ええ。皆様のペットの魅力を存分に堪能させてもらいました。そして、今日という日も勿論楽しかったですが、全力でキュキュとアピールの練習をしていた準備時間も、とっても楽しかったです」
「分かる!すんごい分かるぞ!そうなんだよ!ヨヒラもそう感じてくれたのなら、この大会は大成功だな!」
俺もクスネと芸の練習をしている時間がとっても楽しかった。
練習期間のおかげでクスネともっと仲良くなれたし、クスネの魅力も再認識できた。
俺なんて、クスネが新しい芸なんて覚えた日には、飛び上がって喜んでしまったくらいだ。
こういうのって順位は重要ではないんだよね。大会を開いた俺が言うのも何だがな。
さて、名残惜しいが、そろそろ締めないとな。
「今回はランキングという形で評価されたが、あくまで”視聴者から見て魅力的だった”というだけだ!上位とか下位とかあまり気にしないように!ということで、ペット自慢大会は終了!視聴者もアンケートとか案だしとか手伝ってくれてありがとうな!配信も同時に終了するぞ!じゃあ、お疲れ様でした!」
「「「お疲れ様でした!」」」
>お疲れ様でした
>おつかれ!
>楽しかったぜ
>ペットが飼いたくなったわ
>ヨヒラ様の大満足顔が見れて満足
ふぅ。
今回は自分が主導で企画を開催してみたが、なかなか大変だったな…
やることが多くて結構疲れたぞ。企画の主催者って意外と体力がいる仕事なんだな。知らなかったわ。
配信が終わってしばらくすると、クスネが少しウトウトし始めた。今日はいっぱい頑張ったもんな。
クスネを手に抱き、寝かせることにする。おやすみくすね。ゆっくり休んでくれ。
クスネが寝たことを確認すると、俺はウツギの元へ行き、一緒に反省会をしようと声をかけた。
順位とか関係ないとも思いつつ、やっぱり悔しいものは悔しいからね。
だって、クスネは宇宙一魅力的な相棒なんだからな。視聴者に理解されなくとも、俺は強くそう思っている。
なあ、クスネ。
軽く発表の反省会をし終えると、ウツギは愚痴をこぼし始めた。
どうやら、この結果に心底納得がいっていないようだ。
文句を言いつつも、少し落ち込んでしまったモグちゃんを慰めている。
「ほんと視聴者って見る目ないわよね…モグちゃんが一位に決まってるじゃない!世界一可愛いんだから。ねぇモグちゃん。だから、落ち込む必要なんてないわよ!元気出しなさい」
「がうぅ」
「こういう時は、肉をいっぱい食べて、ストレス発散するに限るわ!」
「がう!」
ほんと、似たものペアだよなあ…見ていて微笑ましいよ。
今は二人っきりにしておいてあげよう。
俺はそそくさとこの場を離れる。
そのタイミングで、ちょうど良くセリから手招きされたので、セリの元へ向かう。
セリは、閣下が作った簡易的な家の中で、閣下とのんびりゲームをしていたようだ。
こんな日でもマイペースだなぁ…
そういえば、今日の閣下のアピール、なんの事前練習もしていなかったらしい。マジか。
打ち合わせなしであの発表とは、ある意味このペアが一番息ぴったりかもな。
「あ、そうだ。ねぇヒノキ?この後さ、ここでゲーム大会しない?良い考えでしょ?ということで、僕は動くのが面倒だから、代わりにみんなを呼んできてくれない?」
「了解」
うん、いい考えだ。ゲームならヨヒラも楽しんでくれるだろうし。
えーっと、トリカとヨヒラは…
向こうでちょうど二人一緒にいるな。どうやらキュキュとロイヤルを交流させていたらしい。トリカとヨヒラの二人もなにやら小声で雑談している。
わざわざ小声で何を話しているのだろうか?
…まあいいや、とりあえず呼びに行こう。
「おーい。セリがゲーム大会やりたいってさ。ゲームする人この指とまれ!」
「はい!」
俺が二人の近くで大きな声を出して人差し指を掲げると、真っ先にウツギが俺の指を握りしめた。
どうやら、遠くからテレポートで誰よりも先に飛んできたみたいだ。
…なんか、思ってもいない獲物が釣れた気分だ。まあいいけどね。
「では、私も招待を受けさせてもらいますね」
「わたくしは明日の準備があるのでパスさせてもらうわ。あ、そうだ。今日はみんなわたくしの家に泊まっていきなさい」
ウツギとヨヒラは参加し、トリカは不参加ね。了解。
トリカの家に泊まれるなら、時間を気にせず夜まで遊べるな。これは俄然楽しみになってきたぞ!
その後、みんなで閣下の作った小さな家のこたつに入り、のんびりとゲームをして過ごした。
対戦型ゲームではあまりにヨヒラとセリが強すぎて勝負にならなかったので、協力型ゲームをすることに。
ゲームの下手な閣下と息を合わせたり、ウツギがムキになって敵に突っ込んでいくのをサポートしたり、俺のちょっとした凡ミスを冗談めかしてやたらといじられたり…なかなか楽しい時間を過ごせた。
「ふふ。たまにはゲームも良いものですね。きっと、皆様とやるから楽しいのでしょうね。今日は大満足の一日でした。皆様、改めて今日は私のことを祝ってくれてありがとうございます」
ゲームがきりのいいタイミングで突然、ヨヒラが皆にお礼を言い出した。
改めてしっかり感謝されると、どうもむず痒いな。少し照れてしまう。
間髪入れず、ヨヒラは再び話し出す。
「中心となって祝ってくれた御主人様へ、私からもちょっとしたご褒美を差し上げたいと思います」
ちゅ。
ヨヒラが、俺のおでこへ軽く口付けをした。
え?
…ええ!?
ヨヒラにされたことを頭で理解するとともに、俺の表情はみるみる崩れていく。
「デレデレしないで」
途端に暗い声でセリに注意される俺。
ニヤニヤと笑うヨヒラ。何故か羨ましそうに見ているウツギ。
「かっかっ」
灰色に光る閣下。
その色は見たことがある。確か…
「ほら、閣下にまで呆れられてるじゃん」
そうだ。灰色は呆れの感情だ。
「あははははは。ちょっとした冗談ですよ」
そんな俺達を見て、ヨヒラは口を開けて笑う。
もしかして、今日一番の笑顔じゃないか?
なんでこんな所で今日一番の笑顔を見せるんだとか、冗談になってないとか、色々言いたいところではあるが、今日くらいは口をつぐもう。
なんてったって、今日はヨヒラが主役なのだ。
これからもその綺麗な笑顔を見せてくれるように、何気ない日常を過ごしていこう。
改めてヨヒラ。誕生日おめでとう。
次回予告:起きたらよくわからない所にいるんだけど…ここどこ?




