王道祝福!ヨヒラの誕生日会その1
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「どうもー。ダイヤモンドセクシームキムキイケメンのヒノキです。えー、今日はヨヒラの誕生日です!私を楽しませてみろとの挑戦状を受けたので、頑張っていきたいと思います」
>今日くらいは事前に告知しろ
>今日も楽しみ
>私達も色々一緒に考えたからね…楽しませてやりたいわ
>ヨヒラ様の誕生日!こんな人数に祝われるアンドロイドなんて今までいなかっただろうなぁ…
ヨヒラには誕生日会を開くことがバレてしまっていたので、開き直って俺はどうすればヨヒラを満足させられるかを視聴者と相談し、いろいろな策を講じてきた。
視聴者だけではなく、この惑星に住むみんなとも何度も会議をし、ようやく今日という日を迎えたのだ。
今回の誕生日会のテーマは”参加型”。
ヨヒラには、受け身ではなく、能動的に参加してもらってこの誕生日会を楽しんでもらうつもりだ。
でも、まずは王道の誕生日会だ。王道を蔑ろにしては元も子もないからな。
「ということで、今はトリカの家の中で待機中。この時間に来るように…と、そんなこと言ってたらもう時間だ。ヨヒラも来たみたいだな」
足音が聞こえてきたので、最後の確認をしておこう。
クラッカーは…大丈夫。みんなもちゃんと持ってるな。
トリカの部屋も…いい感じの誕生日仕様だ。
今回はある事情があり、みんながそれぞれペットを連れてきている。ヨヒラもキュキュを連れてくるはずだ。
しっかり主人のもとで、それぞれのペットが待機している。
よし!準備万端!
まずはこの王道の誕生日会をしっかりやり遂げるぞ!
玄関の扉が開き、ヨヒラが入ってくる。
ぱぁん!
「「「ヨヒラ!誕生日おめでとう!!」」」
「ありがとうございます」
綺麗にお辞儀をするヨヒラ。まあ、今日誕生日会を開くことはバレバレだから、ウツギのような驚きはないよな。
でも、心なしか嬉しそうにも見える。よしよし。
「ということで、早速宇宙式の歓迎といきますか!今回は俺も参加させてもらうからな!逃げられるもんなら逃げてみろ!よーし!全員かかれ!」
ヨヒラには、もみくちゃにされる祝い方には、しっかり抵抗すると事前に言われてしまっている。どうもあの祝い方をされるのは恥ずかしいようだ。
アンドロイドに抵抗されれば、諦めるのが普通だ。だって、人間とスペックが違いすぎるし。
でも、俺はどうしてもヨヒラをもみくちゃにして祝ってやりたいのだ!
そのための準備はしっかりしてきたつもりだ。
多少手荒い真似をすることになるが、まあ大丈夫だろう。アンドロイドは丈夫だし、この部屋もトリカが金をかけまくって建てた家なので、信じられないくらい頑丈だからな。
まず先陣を切るのは俺だ。真正面から俺がヨヒラを捕まえる。
「ふふ、良いでしょう。受けて立ちましょうか」
ヨヒラは余裕綽々だ。
俺とヨヒラは相撲で言う手四つのような体勢となり、両手を組み合う。力比べだ!
「うおおおおおお!」
と、叫んだものの…
ははは、なんだこれ。
笑えるほど手応えがない。
俺は今、ヨヒラと組み合ってるんだよな?惑星を押しているわけではないよな?
そう勘違いしてしまうくらい、俺の力が通じない。
これは…完全に遊ばれているな。
でも、相手は俺ひとりじゃない。第二、第三の矢があるのだ!
「発射!」
トリカの掛け声によって、部屋の壁から大量の銃器が出てきて、ヨヒラに向かって一斉に発射された。
これは、今日のこのときのために事前に用意しておいた自動迎撃銃。
弾はかするだけで効く強力な筋肉弛緩剤や、粘着力の高い粘着弾、当たると重力が千倍になる重力弾などなど、状態異常系の攻撃のオンパレードだ。
最悪俺に当たってもしばらく動けなくなるだけだから問題ないと伝えてはいたが、ホントになんの躊躇もなく発射するのな…まあいいけどね。
「では、全て避けてあげましょう」
ヨヒラは一瞬チラリと周りを見ると、俺ごと引き連れて逃げ回りだした。
うわわわわ!目が回る!
引きずられるように振り回される俺。動きが速すぎる!今、俺の身体がどうなっているのか、自分自身でもよくわからん!
でも、俺にも弾は一発も当たっていないことだけは確かだ。
一応俺にも気を使ってくれているようだ。まあ、気を使うほどまだまだ余裕ということでもあるが。
だが、実はこの部屋には、沢山の罠が仕掛けられている。
セリを中心に、多数の視聴者達も一緒に考えて仕掛けた悪辣な罠の数々。
反応型の地雷系の罠や、それに連鎖するような罠。ワイヤー系の罠や、ただただ全ての地面が滑りやすくなるといった大規模な罠など、種類は様々だ。
逃げ回ってるだけじゃ、いつかは踏んでしまうだろう。
「罠ですか…面倒ですね…では、全て壊してしまいましょう」
ヨヒラは銃弾の嵐から逃げながら、俺の首の後ろを片手で掴み、持ち上げる。
俺は抵抗しようにも、なぜか身体に力が入らない。それに、首を掴んで持ち上げられているのにも関わらず、なぜか全く痛くもない。なんなら、マッサージされているかのような気持ち良さすらある。
うーん、気分は小動物だ。
これは、もう俺にやれることはないな。ぶらーんとしながら応援してよう。
そんな謎技術で俺の首根っこを掴んでいるヨヒラは、もう片方の手で背中のデカい斧を持ち、一振り。
それだけで、全ての罠が根本から壊れ、さらに、壁から出てきていた全ての銃器まで壊れた。
「…チート過ぎない?クソゲー」
思わずセリが悪態をつく。
というか、何があったんだ?なんで斧を一振りしただけで、全ての仕掛けが壊れるんだよ!意味わからん!
「パイロキネシス!テレキネシス!テレポート!」
大トリとしてウツギが動き出した。
ウツギはどうにか隙をつこうと、今までずっと狙っていたのだ。
まずは、黒炎のパイロキネシスがヨヒラを襲う。
同時に、何トンにも及ぶ圧力のテレキネシスを使い、逃げられなくする。
畳み掛けるようにテレポートでヨヒラの背後にまわり、ウツギ自身も軍服のホルスターから小型の超威力テーザー銃で追撃。
おお!あの有名な黒炎のパイロキネシスが見られるとは!感動だ!
ウツギはカリスマがあった頃は、黒炎のサイキッカーと呼ばれ、その見た目のかっこよさからまさにヒーローのように扱われていた。
今では、すっかりいじられキャラとして雑に扱われているが、俺に負けるまでのウツギはそれはもうすごかったのだ。
それにしても、ウツギの攻撃、あまりにも攻撃的だなあ。俺はヨヒラに首根っこを掴まれているので、向かってくる攻撃の威力がありありと伝わってくる。
俺達は一応攻撃力は抑え、なんとか捉えようとする方向で頑張っていたが、ウツギは完全に殺す気で攻撃している。
ある意味、アンドロイドの強さを信頼しているのだろう。
でもね、ウツギさん?近くに俺もいるんだよ?俺ごとやるつもりですか?
俺のそんな心配を気にしてか、ヨヒラは俺をノールックで背後にいるウツギに向かって投げた。それも、俺の体が銃弾に被弾しないように気を使ってだ。そのおかげもあり、無事俺の身体はウツギにキャッチされた。
そんな気を使ったからだろうか?
この攻撃は、初めてヨヒラにヒットした。
ヨヒラの周囲に黒煙が上がり、何も見えなくなる。
…どうだ?
「私の意識の隙を突く技術といい、技の威力といい、思い切りといい…ウツギ様は人間にしてはよくやっていますね。ですが…」
煙の中から聞こえてくるのは、普段と変わらないヨヒラの声。
「そもそも私に隙なんてありません。技術の高さに敬意を表して、あえて受けてあげただけです。それに、そもそもアンドロイドは耐久力も高いのです。ですから、この程度の攻撃なら防御するまでも無いのですよ」
煙が晴れると、全くの無傷で佇むヨヒラ。
まじかあ…俺達の最大火力でもダメですか…
まあ、そりゃそうか。アンドロイドの仕事の一つである治安維持には、それだけの戦闘力が必要だということだろう。
悪人なんてSCエネルギーをガンガン使って逃げようとするだろうから、最低でもSCエネルギーと対抗できる攻撃力、防御力がないといけないもんな。
うん。こりゃ無理だわ。
「でも、久しぶりに軽い運動ができて楽しかったですよ。またいつでも挑戦をお待ちしております」
綺麗にお辞儀するヨヒラ。
俺達の全力を、軽い運動扱いですか…
うん。これだけ強いんだ。そりゃ、この宇宙に悪人が少ないわけだよ。
アンドロイドからは絶対に逃げられないと世間ではよく言われているが、納得だわ。実際にアンドロイドの実力を目にしたのは初めてだが、思っていた以上だった。
>勝 て な い
>ヨヒラ様に惚れ直した。かっこよすぎる
>アンドロイド怖いアンドロイド怖いアンドロイド怖い
>これだけ強いアンドロイドがワイたちの宇宙を守ってくれているのか…そりゃ安心だ
うん。視聴者も珍しいものが見れて嬉しそうだ。
「しゃーない!もみくちゃにするのは今回は諦めよう!でも、また来年も挑戦するからな!」
俺達の完敗だ。
今回はそこまで時間がなかったので、各々が全力を出す方向で迎え撃ったが、それでは全く通用しない事がわかった。
来年はもっとコンビネーションを高めて取り掛かろう。
世の中に完璧な存在なんて無い。もはや理解不能ともいえる強さのヨヒラ相手でも、きっとどこかに突破口はあるはずだ。
ヨヒラをもみくちゃにするのは絶対に諦めないからな!覚えてろよ!
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