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誕生日会!ウツギの誕生日パート3

読んでいて少しでも感情が動いたら、評価・リアクション・ブックマークをお願いします。



 ぐぅー。


 説明を聞いただけなのに、俺のお腹から大きな音が鳴り響いてしまった。


 失礼失礼。


 本来、この会の主役はウツギだ。それなのに、おこぼれに預かるだけの俺が出しゃばるのはよくないよな。


 まあ、お腹から音がなってしまったのは仕方がないので、照れ隠しも兼ねて、軽く謝っておく。


 そんな俺の様子をみたヨヒラが、少し苦笑いしながら口を開く。


「では、一人待ち切れない残念な人もいるようですし、食べましょうか。皆さんご唱和ください。いただきます」


「「「いただきまーす!」」」



 その後、皆で夢中になってヨヒラの料理を食べた。


 特に俺とウツギは食べることに必死になりすぎて、一切会話する余裕がなかったほどだ。


 和やかな誕生日会なはずなのに、俺達のせいで食事の席は静まり返っていた。


 いや、だって凄い美味しいんだもん。全ての料理がうますぎた。


 本当に美味しいものを食べる時、人は無言になるのだ。


 ヨヒラの料理の腕、見事すぎる。

 

 ヨヒラは自動調理器の再現しか出来ないと謙遜(けんそん)していたが、自動調理を再現できるだけでそもそも凄すぎるのだ。


 それに、個人的には自動調理で出てくる料理とは全然違うように感じた。


 きっと、細やかな気遣いとか、手間暇をかけてくれたことが分かるので、より美味しく感じたのだろう。


 なんというか、料理に温度とは違う温かみがあったのだ。


 こんな料理が食べられるのなら、今すぐにでもヨヒラと結婚したい!なんで、アンドロイドとは結婚できないんだよ!アンドロイドとの恋愛を許可しろ!デモを起こせ!


 まあ、脳内でみっともなく騒いでみたところで、現実は何も変わらないんだけどな。


 はぁ…ヨヒラが俺の理想の嫁すぎて辛い。


 おっと、何故かセリとトリカが俺を睨んでいる。


 俺の表情から、脳内で考えていたことを読み取られたようだ。


 俺ってそんなにわかりやすいのか?それとも、コイツラの察する能力が高すぎるだけか?


 というか…脳内でヨヒラとの結婚生活を妄想するのもダメ?


 いたたたたた!痛い!


 隣に座るトリカから無言で太ももをつねられてしまった。


 あ、はい。駄目ですか。すみません。


「ぶっ。うぷぷっ…おっと、失礼しました」


 押し殺した様に笑うヨヒラ。


 なんか、ヨヒラは俺が修羅場になっている時、いつも笑っている気がするな。


 ちょっと趣味が悪くない?笑ってないで助けてくれてもいいんだよ?

 

 俺達がこんなことをしている間にも、ウツギはまだ必死に食べている。今は外で一応用意してくれていたバカ恐竜の丸焼きに飛びかかるようにしてかぶりついている最中だ。


 俺もある程度切り分けて食べたが、スパイスが絶妙に効いていてとても美味しかった。


 それにしても、バカ恐竜の丸焼き。でっけーな。

 

 俺のログハウスくらいのサイズがある。

 

 あんなデカい肉をどうやって丸焼きにしたんだろうか?



 もぐもぐもぐもぐ。もぐもぐもぐもぐ。…もぐもぐもぐもぐ。


 俺達はある程度食事に満足したが、ウツギだけはまだまだ食事中だ。食べ尽くしそうな勢いだな。


 あのー。まだあなたの誕生日会のために用意してあるちょっとしたイベントとか、ケーキにろうそくをたてて火を消すやつだとか、トリカのバースデーソングタイムだとか、俺の一発芸とか、色々あるんですが…


 うん。聞いてないな。食べるのに夢中だ。


 まあ、仕方がないので、軽く雑談でもしつつ、ウツギが落ち着くのを待ちますかね…


 数十分後。


「ふぅ…美味しかったわ。さて、これからケーキもあるのよね!楽しみだわ!…ん?どうしたのみんな?そんな呆れたような表情して…」

  

 いやぁ…だってね…


 まさか、あのバカ恐竜の丸焼きを全て平らげるとは思わなかった。


 胃袋どうなってるんだよ。あの量を平らげるなんて、物理的に絶対不可能なはずだぞ!


 まあ、本人が幸せそうなのでいいけどさぁ…


「バースデーケーキを持ってきましたよ」


 ウツギが食べ終えるのと同時に、タイミングよくヨヒラがケーキを持ってきた。


 おお!とっても豪華だ!旬のいちごがふんだんに乗り、様々な果実が入っている大きなケーキ!


 もうすでに蝋燭は立てており、火もついている。


 大きいろうそくが一本、中くらいのろうそくが二本、小さいろうそくが五本。

 

 どうやら、今年で125歳になるらしい。


 実は結構歳がいってるんだな。知らなかったわ。


 今の時代、五百年くらいは平気で長生きできる。


 大体の人は十八歳くらいまでには成長し切る。前世とは違うのは、十八歳からの老い方。


 四百歳くらいまでは、全然老いが来ない。十八歳の人と、四百歳の人を比べても、若々しさはほぼ同じなのだ。


 だから、見た目からは歳は推測しにくい。そんな老い方だから、この宇宙ではあまり他人の歳なんて深く気にしないことが多い。例えば恋愛においては、同い年だとか、歳が離れすぎているだとかは余り重視されないのだ。


 ちなみに、俺は今年で二十五歳。だから、ウツギとはちょうど百歳差だ。覚えやすいな。

  

 ゆっくりと部屋が暗くなる。


 さて、ここからはトリカのバースデーソングの時間だ!


「あなたの誕生日を祝って、本気で歌わせてもらうわ。ミュージックスタート」


 トリカが手を高く上げ、指をぱちんと鳴らすと、音楽が流れるとともに、きらびやかなスポットライトがウツギに当てられる。


 そして、トリカが宇宙でいちばん有名な誕生日ソングのサビを一節歌い始める。


「Happy Birthday~♪」


 トリカの歌声は透き通って居るにも関わらず力強く、歌詞が心のなかにすっと入ってくる。子どもでも歌いやすいような単純な歌なのに、無駄に歌唱力が高い。でも、相変わらず良い歌声だ。


 さて、この歌の最後は、主役以外の全員で歌うというお決まりがある。そこで、全力で盛り上げるのだ。静かに準備しておこう。


 …よし、もうそろそろだ!…歌うぞ!


「「「「「Happy Birthday to you!ウツギ!おめでとう!」」」」


 みんなが拍手をしてウツギを祝う。俺は指笛を鳴らし、場をなるべく盛り上げる。


 クスネがこの盛り上がった雰囲気に当てられたのか、尻尾をブンブンと振り、小さい体を全力で動かすように跳ね回っている。


「みんな、ありがとう!じゃ、消すね」


 蝋燭の火をウツギがふぅーっと消す。すべて消えると、また拍手が巻き起こる。

 

 部屋がだんだんと明るくなっていき、ウツギがケーキを切り分けにいった。


 この少しの隙間時間に、今日の主役がちょっとした抱負を言ったり、軽いスピーチをするのがこの宇宙での誕生日会の慣習だ。


 それにならい、少し照れながらもウツギが語り始める。


「みんな。わざわざこんな回を開いてくれてほんとにありがとう!とっても嬉しいわ!…実は、ちょっと前まで少し悩みがあってもやもやしてたんだけど、今日これだけ歓迎されて悩みが吹っ飛んだわ!さて、ウチの抱負は…うん、決めた!この惑星にある全ての食物を食べ尽くす!!今日食べたことのない食材をいっぱい食べて、もっと食への興味が高まったわ!だから、それがうちの125歳の目標よ!」


 ウツギが最後には力強く宣言する。うん。ウツギらしくて素晴らしい目標だ。


「あら?あなたって悩みなんてあったのですね?」


 トリカが改めて問いただす。


 そうそれ!俺も少し気になっていた。


「…悩みについては恥ずかしいから秘密よ」


 ウツギが誤魔化すように答える。答える気はないらしい。


 えー。気になる!秘密って何!?

次回予告:蕾から、すこしだけ花開くウツギ

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