誕生日会!ウツギの誕生日パート1
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今この場には、この惑星に住むウツギ以外の全員が集まっている。全てはサプライズのためだ。
クラッカーを持ち、気配を消してヨヒラの部屋で大人しく待つ。準備は万端だ。
待っている間、ヨヒラの部屋を見回してみる。
今日は部屋が誕生日仕様だ。飾り付けによって、すっかりお祝いムード満点な内装となっている。
”ハッピーバースデー”の文字の飾り、植物のリース、キラキラしたバルーン、謎の力で宙に浮く色とりどりの間接照明など、様々な華やかな飾りが施されている。
これらは全て今日のために俺達が用意したものだ。事前にヨヒラの部屋に行き、各々が飾り付けをしたのだ。
俺はあまり飾りを作るセンスが無かったので、別のことで貢献した。
具体的には、超収納リュックを用いて大量の散ってしまった花びらを集めてきたのだ。
この花びらを、花吹雪のように振らせてウツギを歓迎する予定だ。
そんなことを考えながら待つこと数分、ウツギが歩いてくる気配がした。
ウツギによって扉が開けられるとともに、クラッカーを鳴らす。
ぱあん!
「「「ウツギ!誕生日おめでとう!!」」」
「…えっ…ええ!」
放心状態になったウツギ。
突然のことに、理解が追いついていないようだ。ぽかんとした、なかなかいい表情で固まっている。
待つこと数秒、やっと、自分が歓迎されていると理解したようだ。
「わあ、ありがとう!まさかこの年になってサプライズなんてされると思ってなかったわ…意外と嬉しいものね!」
にっこり笑顔のウツギ。
うんうん。喜んでくれてこっちも嬉しいよ。
でも、まだまだ誕生日会は序盤も序盤。こんなもので満足してもらっては困る。
さて、次は宇宙式の伝統的な歓迎といきますか!覚悟しな!ウツギ!
「よーし!かかれ!」
俺の号令でウツギに向かって突撃していく俺以外の三人。
「えっちょっと!なに!?まさか…それもやるの!やめっ…あん。ちょっとセリ!どこさわってるのよ!」
三人に囲まれてもみくちゃにされるウツギ。
めちゃくちゃに撫でられたり、耳を引っ張られたりなど、様々な方法で体を弄られている。
あ、勝手に俺についてきていたクスネも、ウツギに突撃していった。
おそらく、俺達の楽しそうな雰囲気に当てられたのだろう。
全力で尻尾を振って、小さい体でぴょんぴょんと飛び回っている。
よし!俺も負けじと賑やかしするか!
事前に拾ってきていた沢山の花びらを空中に撒きまくるぞ!
ふぁさー。ぱらぱらぱら。
うん、いささか混沌とした状態だが、とても賑やかで綺麗だ。
このもみくちゃにする祝い方は、子どもの誕生日を祝うときによく行われる手法だ。
あ、花びらを撒くのは俺のオリジナルな?あまり女性の体に遠慮なく触るのもあれだしね。
俺は女性に触ると興奮しちゃうので、残念ながら参加は見送ったのだ。
本来、大人になってからはこの祝い方は行われない。もみくちゃにされるのは子どもの時だけだ。
でも、俺はこの祝い方が個人的に好きなのだ。だって、やる方もやられる方も楽しいじゃん?だから、今回はこの祝い方を採用した。
さて、俺だけウツギの体に不用意に触れないとはいっても、賑やかしだけで終えるというのは、なんだか少しだけさみしい。
だから、代案を用意してきた。
俺は超収納リュックから小さな花束を取り出し、もみくちゃにされているウツギに近づく。
そして、ウツギの頭にそっと刺した。うん。ヘアアクセサリーのようで良いね。
ウツギのピンクの髪に俺が用意した花が似合っている。
今回用意したのは苺の花束。中心が黄色で、花びらは白。花びらが小さくてとても可愛らしい。
なぜこの花なのかと言うと、まあ、フィーリングだ。沢山森を走り回り探索した結果、この花が一番ウツギに似合うと直感で感じたのだ。
もみくちゃに祝う代わりがこんなので良いのかとも思ったが、俺にはこれくらいしか思いつかなかった。これで勘弁してくれよな。
「はい!終了!」
俺の号令で、三人はウツギから離れていく。
クスネも俺も元へ戻ってきた。何故か一仕事終えた顔をしている。
「はぁ…はぁ…やってくれたわね…」
ウツギは服も乱れて息も絶え絶えだ。頬も赤くなっている。多少やりすぎた感も否めないが、こういうのはやりすぎな方が楽しいのだ。問題ない。
服が乱れているウツギは、やたらとセクシーだ。
あまり直視しないでおこうと頭では思っていても、どうしても凝視してしまう。
体が意志の力に負けてしまっているのは、俺の強い本能さんのせいだ。俺は悪くない。だから、しばらく堪能させて…
「「ヒノキ?」」
「はい、すみません」
セリとトリカから邪な目で見ていたことをすかさず注意された。
俺が悪かったです。ごめんなさい。
気を取り直して、俺はウツギに声を掛ける。
「久々にこの祝い方をされてどうだった?楽しかったでしょ?」
「いや、文句しかないわ!あなた達、加減ってものを知りなさい!ちょっと痛かったときもあったのよ!でも、まあ…ありがとうね。実はちょっと楽しかったわ」
ウツギは少し照れながら、乱れた服を直す。
「あら?頭のこれは…苺の花束?可愛い…」
噛みしめる様に、ウツギはポツリと呟いた。
チップを使えば、自分の姿を客観的に見ることも出来る。
そうやって自分を見ながら服を直しているときに、ついでに頭に花束があることを認識したのだろう。
「”私の心に小さくて可愛い愛が咲き誇る。まるでこのストロベリーの花束みたい”」
突然、ウツギが目をつぶりながら、小声で詩のようなものを唱えだした。
何かを懐かしむかのように口に出されたその言葉。
なんだか、ウツギがとても嬉しそうだ。なにか、苺の花束に特別な思い入れでもあったのだろうか?
「このセリフはね、うちが子供の頃からずっと大好きな映像作品にでてくるの。とっても古い、大昔の作品なんだけどね。男役の俳優がヒロインにいちごの花束を渡して、好意を伝えるシーン。それをもらったヒロインが、脳内でさっき言ったセリフを言うのよ。そのシーンを思い出したわ…なんだか、ヒロインになったみたい」
頬を赤らめ、噛みしめるように小さく微笑むウツギ。
まさに苺の花びらのような、小さくて可愛らしい、とっても魅力的な笑顔だ。
そんなに喜んでくれる姿を見てしまうと、渡した俺までもっと嬉しくなってしまう。
「ちなみに、苺の花言葉は甘い誘惑。もしかして、うちに誘惑してほしいの?」
ニヤニヤとからかうように、俺を上目づかいでみるウツギ。
突然、無垢な少女のような態度で近づいてきたからか、俺はとても動揺してしまった。
ふわっと香ってくるココナッツのようなウツギの体臭、頭の苺の花束のフレッシュな香り、上目づかいの表情、近い距離、刺激的なワード。
あっあっ…可愛い…好き…
「「ヒノキ?」」
俺がそんなことを思った瞬間、セリとトリカからドスの利いた声で注意された。
怖え。肝が冷えたわ。
まあ、そのおかげで正気に戻った。
セリとトリカから二枚目のイエローカードをもらった気分だ。サッカーなら退場ものだ。
でも、これ以上やらかすと本当に退場させられる気がする。気を引き締めていこう。
「ぷぷっ…コホン。なんでもありません、続けてください」
ヨヒラが首だけ後ろに向けて、口に手を抑え、噛み殺す様に笑っている。
相変わらず俺が修羅場っているのが好きなようだ。趣味が悪いなぁ…
「コホン。よし!ここからはプレゼントタイムだ!みんな席についてくれ。ウツギはあそこの誕生日席な」
「ふふふ、プレゼントが楽しみだわ」
俺達はヨヒラによって作られた、木の長細い机と椅子に座る。
俺はなかなか苦労してプレゼントを用意してきたので、喜んでくれると良いのだが…
次回予告:捕獲レベル10




