誕生日会!ウツギの誕生日パート2
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「じゃあ、まずは俺から。はい。誕生日おめでとう」
俺が渡したのは手作りの香水だ。
自然の花をたくさん集めて、試行錯誤しながらなんとか少しだけ作ってみた。
ただ、香水を入れる入れ物のことがすっかり頭から抜け落ちていたことにぎりぎりになって気がついたので、そこはヨヒラに頼んで用意してもらった。
「ありがとう!男からプレゼントをもらうなんて初めてだから嬉しいわ。ふふ、いい香りね」
早速試しに使ってみてくれたようだ。今回メインで集めた花はバニラのような香りのする花だ。
なかなか強い香りの花なので、これなら頑張れば香水を作れると思い、頑張ってみた。
「じゃあ次は僕ね。僕はローヤルゼリーを持ってきたよ。このローヤルゼリー、肌に良いし健康にもいいし、美味しいし、様々な良い効果があるんだよね」
「ありがとう、嬉しいわ」
このローヤルゼリーはどうやら蜂蜜を採取する際に少ししかとれない貴重なものらしい。
「次はわたくしね。わたくしからはお酒を進呈しますわ!」
樽を三個ドンと置くセリ。それも、一つ一つがなかなかの大きさだ。しかも、有名なお酒メーカーのロゴが入っている。
あれはもしや…清酒か?いわゆる日本酒。米から作られた酒だ。
「あ、ありがとう…なかなか大量にくれるわね…飲みきれるかしら」
「あら?あなたならこの程度の量、余裕でしょ?それに、アレンジして飲んでも美味しいお酒だから、料理の得意なあなたには、ぴったりでしょ?」
温めたり、果汁で割ったり、魚介類の干物を入れて飲んだり…
いいなぁ…俺も飲みたい!
「まあ、そうね。ありがたく毎晩飲ませてもらうわ」
さて、あとはヨヒラからのプレゼントだ。
「私は誕生日プレゼントに、この惑星の珍しい食材を用意しました。プレゼントだけではなく、それを使った料理も振る舞わせていただきますね。誕生日ケーキも用意してありますので、食事の最後にお持ちします」
ヨヒラのプレゼントは食材と料理らしい。
俺たちももおこぼれに預かる事ができるなんて、ラッキー!
「あなたの手作り料理が食べられるなんて、とっても楽しみ!待ちきれないわ!」
俺もウツギと同じ気持ちだ。
何でもそつなくこなしてしまうヨヒラが作る料理なんて、おいしいに決まっている。
「残念ながら、私の料理技術は、いわゆるオート調理の再現です。アンドロイドは新しく何かを生み出すのがとても苦手なので、私が美味しい料理を作るには再現に頼る他ないのです」
いやいや、ヨヒラは自分の料理スキルに納得いっていないかもしれないが、オート調理を再現できるって凄いことだよ?
続けて、ヨヒラは話し出す。
「再現だけでは、料理に特別感がでません。なので、私ができるせめてもの特別感の演出のため、この惑星の様々な場所を巡り、素材や見た目にとことんこだわらせてもらいました」
アンドロイドは人間と違い、ワープを自由に使うことが出来る。ワープを使わなくとも、身体能力も抜群に高い。
そんなスペックの高いヨヒラが、惑星中から全力でかき集めてきた食材なのだ。
どうにも、期待せずにはいられない。
「では、料理をお持ちしますね、今回は三品の料理と誕生日ケーキを用意しました。まずは一品目、アメジストサーモンの魚卵とアボカドのサラダです」
出てきたのは、木目が美しい手作りの木のお皿に盛られた色鮮やかなサラダ。
柑橘系のドレッシングの美味しそうな香りが漂ってきて、見た目も綺麗。
ウツギの皿にのみ、食用花などを用いて、より綺麗に装飾してあり、特別感を演出している。
「ええっ!アメジストサーモンの魚卵ですって!?よく見つけたわね!」
「ええ。この惑星のあらゆる海や川を回ることになりました」
アメジストサーモンというのは俺は聞いたことがないが、ウツギの反応的に珍しい生き物らしい。
このサラダにかかっている魚卵。見た目はまさにいくらだ。気持ち、いくらよりツヤツヤしている気がする。
脳内のチップで調べると、どうやらアメジストサーモンというのはとても生息数の少ない魚らしい。
しかも、淡水、海水など関係なく様々な場所を泳ぐので、決められた場所で捕まえることが出来ない。
ふーむ、なかなか面倒な魚だな。
味については、魚自体の味はそこまで美味しいわけではないらしい。
だが、魚卵がとても濃厚なことで有名で、かなり高値で取引されているとのことだ。
「では二品目。しとやか貝を使ったポタージュスープです」
出てきたのは、たっぷりの貝が入った、まるで芸術品のような一品。
「あら、しとやか貝!とっても見た目が綺麗ね!そういえば、食べたこと無いわね!どんな味がするのか楽しみだわ!」
これは俺も知っている。しとやか貝というのは、女性の握りこぶしくらいの大きさの青い貝だ。貝細工としてよく使われている。
貝殻の見た目は華美な陶磁器のようで、つるつるでキラキラとしている。貝殻には瑪瑙の様な見事な縞模様があり、味より見た目が有名な貝だ。
肝心な味はというと、とてもホッとする様な味をしているらしい。食べた女性がお淑やかになるとの言い伝えから、しとやか貝と名付けられたらしい。
「三品目はメイン料理。若いイグニッションボアのオスのステーキです。もちろん、最高においしい状態で倒させていただきました。ウツギ様には最もおいしい部位であるモモのステーキ。他の皆様には、恐縮ですが別の部位のステーキを用意しました」
出されたのは大きなステーキ。肉肉しい強烈な香りが部屋を満たす。
凄く香りが強い!こんなのを出されてしまっては、お腹が減って仕方がない!早く食べたい!
「わぁ!最高の状態のイグニッションボアなんて…人生初よ!嬉すぎる!ヨヒラ。愛してるわ!」
思わず愛の告白をしてしまうほどウツギが大興奮している。それだけこの肉が貴重なものなのだろう。
案の定とても珍しい食材のようだ。それに、どうやら倒し方にコツがいるらしい。
このイノシシはストレスを感じると頭が発火することから、イグニッションボアと名付けられている。
とても繊細で、ちょっとの事ですぐに発火するらしい。
それにもかかわらず、発火すればするほど肉質が下がってしまうという、食べるには向かない難儀な生物のようだ。
逆に肉質を上げる方法もある。
それは、イノシシを極限まで懐かせる方法だ。
愛情を感じれば感じるほど、このイノシシは美味しくなる。一度も発火させずに育てた肉は、口の中でとろけてしまうほど柔らかく、それでいて肉肉しい強烈な旨味がするらしい。
ヨヒラは手間と時間を掛け、最高に懐かせてから倒したのだろう。
懐かせてから倒すなんて残酷な…イノシシさんカワイソス。
美味しく食べるから許してくれよな!
「そしてデザートには鉄ダチョウの卵をふんだんに使った誕生日ケーキを用意してありますので、ゆっくりお楽しみくださいね」
「鉄ダチョウの卵!?凄い凄い!数年に一度しか卵を産まないはずなのに…ヨヒラ、頑張りすぎよ!」
ウツギが感動で目を潤ませる。
鉄ダチョウという名前は、鉄のように硬い頭から名付けられたらしい。あいも変わらず貴重な生物の貴重な卵らしい。
「本来はこの三品だけのつもりでしたが、ヨヒラ様の食欲を考慮し、バカ恐竜の丸焼きも用意しております。ありきたりなものですけどね。大きすぎて家に入らなかったので、外に置いてあります。足りなければ食べてくださいね」
「ゴクリっ…」
思わずつばを飲むヨヒラ。
バカ恐竜の丸焼きなんて、ついでで出すレベルのものじゃないぞ。あいつ、家くらいデカい生き物なんだからな。それを丸焼きって…確かに珍しい生き物ではないけどさあ…
でもまあ、こんなに豪華な食事をありがとうな。ヨヒラ。
さて、食べるぞ!
次回予告:何故か静まり返る誕生日会