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貞操逆転スペースファンタジースローライフ!?~男女比が1:10の宇宙で男に生まれた俺が、辺境の無人惑星でスローライフする姿を配信する  作者: ながつき おつ
2章 再スタート!

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周辺散歩!お散歩デート

読んでいて少しでも感情が動いたら、評価・リアクション・ブックマークをお願いします。



 俺はゲームでしばらく遊んだ後、配信を終了させた。


 さて、帰るか。


「ねぇ…まだ夕方だしさ、もうちょっと遊ばない?」


 セリがこたつに寝転びながら、立ち上がって帰ろうとする俺の足首辺りに抱きついて交渉してくる。手を離す気はさらさらなさそうだ。


「うーん…どうするかねぇ…ゲームはもう満足したしなぁ…」


「あ、じゃあ!お散歩に行こうよ!閣下も一緒だよ!閣下もまだヒノキと遊びたいよね?」


「かっかっ」


 頭の上の触角の先がピカピカとピンクに光っている。ピンクはおねだりする時に光るらしい。


「閣下がそういうのならしかたないな。ちょっとだけだよ」


 セリだけじゃなく、閣下までおねだりしてくるとは…なかなかのコンビネーションだ。流石に断りにくい。


「やったー!」


「かっかっか」


 今度はオレンジに光る。そうかそうか嬉しいか。

 

「じゃあ、最近見つけたお気に入りスポットに案内するよ!」


「お、それは楽しみだな」


 まだまだこの惑星は探索不足。知らない場所や見たこともない生き物がたくさんいる。


 特に、このセリが住んでいる東の深い森は、不思議な生物と、毒を持った生き物が多いことくらいしか知らない。


 どうしても、一人で探索するのには限界があるのだ。住んでいない場所までしっかり探索するなんて、今の俺では手が回らない。


 だから、案内してもらうというのは、素直にありがたいな。


「じゃあ、用意できたし、行くよ~」


「オッケー」


 セリは閣下と手を繋いで玄関で待っている。黒のマスクを顎におろし、棒付きの丸い飴を舐めている。


 セリはお散歩の時はいつも、ちょっとしたおやつを持って行く。甘い飲み物だったり、チョコレートだったりと、持って行くおやつはその時のセリの中の流行りによって変わる。


 今のセリ流行りは棒付きキャンディーらしい。


「かっか」


 閣下が俺に何かおねだりするように頭の上の触手の先がピンクに光る。


「ん?どうした?」


「多分、手を繋いでほしいんだと思うよ。もう片方の手が空いてるから、よかったら繋いであげて」


「そんなことか。いいよ。ほんと、閣下って甘えん坊だなぁ…」


 俺は閣下の頭を撫でる。可愛いなコイツ。


 閣下の手をセリと俺で片方ずつつなぎ、森を歩き始める。


「実は、閣下って普段は甘えん坊じゃないんだよ。ヒノキには特別懐いてるみたいだね」


「おお!流石閣下!見る目あるな!俺のカリスマ性は未知の生き物にも影響を与えるみたいだな!ガハハ」


「すぐ調子乗るんだから…ねぇ閣下」


「かっかっ」


 どこかため息を吐くように鳴く閣下。触手の先が灰色に淡く光っている。


 セリに聞かなくともわかる。灰色は呆れたときに光る色だろう。


「閣下ってね。ヨヒラさんには全く懐いていないんだよ。それどころかちょっとヨヒラさんのことは苦手みたい」


「へぇ…意外だな」


 歩きながら俺達は最近のことについて話す。


 この周辺、地面が歩きにくくてお散歩には向かないと思っていたが、のんびり歩く分には結構楽しい。


 歩くという簡単な行為なのに、多少工夫しなければいけないというのが楽しいのかもしれない。


 それに、少し深く呼吸をしてみれば、森の濃い匂いが肺を満たすようで気持ちがいい。


 見慣れないような珍しい植物や生き物が多いのも楽しいポイントだ。


 多少湿度は高いが、この森は涼しいのであまり気にならない。


 これだけいい条件が揃っているからか、セリとの雑談が小気味よく、いつもより活発に進んでいる。


 やはり、話題は閣下のことが多い。


 どうやら最近では調査という名目で度々ヨヒラが閣下に会いに来ているらしい。


 未知の生物ということで、自然や生物が大好きなヨヒラは大興奮。鼻息を荒げて調査しているらしい。


「閣下がヨヒラを怖がる原因って、あの背中のデカい斧が怖いんじゃないか?」


「ふふ、そうかもね…」


 会話が一区切りして、少しだけ心地いい沈黙が訪れる。


「ねえ。こうやって閣下と両手を繋いで歩いているとさ…夫婦で子供と手を繋いでいるみたいじゃない?」


 セリが柔らかくも、温もりのある表情を浮かべて、ポツリとそう呟く。


 いつも子供っぽいセリが見せたそんな大人びた表情に、俺はなぜだかとても動揺してしまった。


 なんで、俺は今こんなにドキドキしているのだろうか?


 普段俺がドキドキする原因は、女性に密着されたりなどで、相手に強烈に異性を感じたときなのだが、今回はそれに当てはまらない。


 この気持ちは…


「かっかっ」


 突然、閣下の触手の先がオレンジに強く光った。


 なんでこのタイミングで閣下は強く喜んでいるんだ?


 そんな事を脳内でぐるぐると考えていた俺に、セリは溌剌(はつらつ)な声で再び話しかけてくる。


「さあ、目的地についたよ。ここ、ヒノキに紹介したかったんだ~」


 閣下の突然の喜びや、何故かドキドキしている俺の心臓のことは疑問のままだが、一旦置いておこう。


 せっかくセリが紹介してくれた場所だ。楽しまないとな。


 ただ、この場所を見ても、少し大きな沼と、背の低い椅子が置いてあるだけだ。紹介したいと言った割には普通の場所に見えるが…


「なんでここを紹介したかったんだ?」


「ふふふ、この沼に素足を突っ込んでみたらわかるよ。あ、でも、微量の毒があるからね。飲んだりしたら駄目だよ」


「飲まねーよ!」


 軽口を交わしつつ、言われた通り靴を脱ぎ、椅子に腰掛け沼に足を突っ込んでみる。


「…あったかいな」


 あっ…これはいい… 


 とても、ホッとする。


「でしょ〜。ここ、足湯みたいじゃない?それに、この微量の毒が足をマッサージしてくれるみたいで気持ちいいんだよね」


 セリが俺の隣に座り、足を突っ込む。閣下は足がないので、セリの膝の上だ。


 確かに、適度に足を刺激してくれているようで気持ちがいい。微量の毒も、毒性はとても弱くて体に悪い影響は与えない程度だ。それに、軽い毒くらいならチップが自然と毒を解毒してくれるしな。


 どろっとした沼の感触も、なんだか癖になりそうだ。


「あ、見て!キレイな紫の蝶々のカップルが並んで飛んでるよ!」


「ホントだ、綺麗だなぁ…」


 キレイな鱗粉(りんぷん)を振りまきながら、跳ねるように飛んでいる。まるでイチャイチャしているかのようだ。


 俺達はその蝶々たちをずっと見ていた。


 セリが手を俺の手の甲に重ねる。冷たい手の体温が俺に伝わってくる。


 セリの手はいつも大体冷たい。


 俺は常々手が温かいタイプなので、セリと手を繋ぐと、ひんやりとした感覚が火照った手を冷ましてくれるようで気持ちいい。


 少しの間、心地よい沈黙が訪れる。


 どうしてか、昔からセリとは沈黙が苦にならない。


 ピッタリとくっついて二人で同じ蝶々を見る。


 なんだか、いい雰囲気だ。


 そんななか、違う場所から別の一匹の蝶々が飛んできた。この二匹より体の大きな、同じ種類の蝶々のメスだ。


 その大きなメスを見た蝶々カップルのオスが、大きなメスに吸い寄せられるように飛んでいく。


 さっきまで仲良く飛んでいたメスのことはもう目に入っていないかのようだ。


 そして、その大きなメスとオスの蝶々は、二匹仲良く違う場所に飛んでいってしまった。


 残された蝶々は、一人でさみしげにその場を飛んでいる。心なしか飛び方に元気がない。


 その蝶々を見ていた俺は、胸がきゅっと苦しくなった。


「ねぇ、ヒノキはさ、新たに魅力的な女が現れたら、僕のことなんて捨てていっちゃうの?」


 あの蝶々みたいに…と、セリがポツリと呟く。


「まあ、そんなことはしないと思うけどな…それに、もし仮に俺がセリのことを捨てるような事があっても、セリはなんだかんだ強く生きていけそうだけどな。セリって愛され体質だし、他の男でも捕まえられるだろ」


 俺は軽い調子でそう返す。


「…まだ、わかってないんだね」


 小声で何かを呟くセリ。上手く聞き取れなかった。


「え、なにっ、むぐ!」


 聞き返そうと開いた俺の口の中に、セリが舐めていた飴を突っ込んできた。


 甘い。すっごくあまい。


 俺の口の中に濃厚で強烈な甘さが広がる。


「ねえヒノキ。いい機会だから、本気で感情を込めて、はっきり宣言しちゃうね…」


 セリが珍しく真剣な様子で俺の目を見る。


 怒りと、真剣さと、恋慕と、執着。


 目を見ただけで、そんな粘度のある感情がありありと伝わってきた。


「僕はヒノキのことを本気で愛してる。この宇宙の誰よりも、ずっと。…だから、僕は恋人くらいじゃ満足しないからね。もっと、もっと僕を愛して。僕が満足するまで。ね?」


 俺の中に、頭をガツンと殴られたかのような衝撃が走った。


 とても、とても強い感情が込められていた言葉だった。バカな俺でも、しっかり伝わったよ。


「…わかった」


「わかればよろしい」


 セリはさっきの様子とは一転し、普段通り無邪気な笑顔に戻る。


 …俺は無意識にセリのことを少し(ないがし)ろにしていたのかもしれない。


 なにせ、もはや俺にとってはセリは近くにいるのが当たり前の存在なのだ。その当たり前に甘えていた。


【セリならいつでもずっと俺のことを好きなままでいてくれる】


 そんな自分勝手な”驕り”が俺の中にあったのだろう。


 これは、改めてセリのことを真剣に考えないとなぁ…


「かっかっ」


 閣下の触手の先がオレンジに強く光る。


 なあ閣下。なんで喜んでいるのかは知らないが、少し聞いてほしいことがあるんだよ。相談に乗ってくれ。


 セリの大人びた表情や、あの蝶々を見て、俺もふと思ってしまったことがあるんだよ…それが頭からこびりついてなかなか消えないのだ。



 セリを他の男に取られたくない。


 確かに、そう思ったのだ。

次回予告:照れ屋イケメンホワイトタイガー

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