酒造開始!あらたなプロジェクト!
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チートデイが終わり、拠点に帰ってきた次の日。俺はいつものように配信する。
「どうもー。最強最高ムキムキイケメンのヒノキでーす。今日も配信していきます」
>また事前告知なしかよ
>今日も楽しみ
>今日から新たなプロジェクトか?
>ちょっとげっそりしてるね
>…首元にキスマークついてるよ?
「え?マジ?チップさんに頼んで消したはず…コホン。えー。いやいや。俺はアイドルみたいなもんだし、女性と肉体関係とか、そういうことは一切していません。そういう生々しい話をすることすら事務所NGです」
そのことについては、コメントは差し控えさせてもらいます。
>お前事務所とか所属してないだろ。いい加減なこと言うな
>アイドル????言葉の意味分かってて言ってるの??????
>別にキスマークなんてついてないのに、誘導尋問に見事に引っかかってて草
>なんか昨日ちょっと人肌恋しくなってたっぽいしね
>もしかして、自分探しの氷上にデートに行けば、奥手な彼も積極的になるのでは?
>はっ!それだ!神スポット確定!
>連れて行く男がいないけど取り敢えず全裸にはなった!
視聴者がコメントでなんか勝手に盛り上がり始めた。嫌な流れだ。
確かに、昨日配信外で俺からトリカを誘ってみた。それは事実だ。
うん、でもね…
そういうことを男から誘うのって、ろくなことにならない。
実際めちゃくちゃ喜ばれはしたのだが…ちょっと、喜ばれすぎたというか、いつもより激しすぎたというか…
要するに…
めちゃくちゃ疲れた!楽しかったのは最初の方だけだった!
これはセリにも言えることなのだが、なんでアイツらって、そういうときだけ無尽蔵に体力があるんだよ!これでも俺はかなり鍛えてるはずなのに、俺だけがへとへとだ!意味わからん!
まあ、こんなこと口に出して言えるわけがないので、心のなかで叫んでみた。
さて、そろそろこの嫌なコメントの流れをぶった切ろう。こういう時は強引にっと。
「これから!!!新たなプロジェクトが始動します!!!名付けて”辺境の全力酒計画”!!!!」
>声がでけえよ
>誤魔化す時大声出すのやめないか?鼓膜も安くないんだぞ
>辺境の全力酒計画ねぇ
>酒なんてあなたが作れるのだろうか?
>昨日見てない人居るだろうから、一から説明して
おっとっと、そうだったな。俺の悪い癖だ。説明を省いてしまう。
「まあ軽く説明すると、自分探しの氷上の”ある一つの問題点”に対処するために、酒を作るって話だな」
>うーん…説明が下手
>何も伝わらない
>謎解きですか???
>こっちで言葉を補正してなんとか伝わるレベル
>私のチップさんが今日も頼りになるわ
説明が下手ですまんな。チップさん頼りの弊害が出たわ。
なんか、上手く説明できないのが悔しい。頑張って説明してみようか。
「まず、俺が見つけた観光スポット、自分探しの氷上。ここで一人で過ごせば、とても自分が探せます。ここまでは良いな?」
>とても自分が探せますwwww
>言葉のチョイスがさあ…
>ばーかばーかwww
>ここまではよくありません!
うん。なるほどね。そういうこと言うのね。じゃあ…
「やーめた!昨日の配信を全人類みろ!それで解決だ!はい!説明終わり!」
>ごめんって
>拗ねるなwww
>伝わってはいるから…
>ちょっと意地悪しただけじゃん。そんなことでふてくされるなよ
「はいはい俺が悪かったですよー。…まあ、要するに、あの場所を満喫したあとは、大騒ぎ出来る場所が必要って話だ」
そう。あの場所は確かにいい場所だ。
だが、いかんせん寂しすぎるのだ。せっかく来た観光客が、寂しさを感じただけで帰るというのは、なんか違う。
非日常の静かさを感じたあとは、人との関わりなどの、何気ない日常の幸せを感じて欲しいのだ。
ほらさ、体が冷え切ってしまったときに飲む温かいホットココアは、いつもより美味しいだろ?
そんな感じで、寂しさを感じた後の人の温かみは、より温かく、よりありがたく感じるはずだ。
だから、騒げる場所が必要なのだ。
騒ぐといえば…宴!だから酒だ。
まあ、酒を他から仕入れれば、わざわざつくらなくていいのだろうが、せっかくなら全てこの惑星産のものでもてなそうとも決まったので、酒を作ることになった。
俺も酒造りには興味があったので、ちょうどいい提案だった。
まあ、大規模で本格的な酒造りはウツギ主導で行うことに決まったので、俺の酒造りは趣味みたいなものなのだがな。
「ではまず何から始めるか…酒蔵とか、もっと立派な果樹園とか、酒に向く果物探しだとか、やることは色々ある。でも、とりあえず俺流の方法でやっていこうか」
まずは小さい規模でシンプルにやってみる。そこからどんどん規模を広げたり、難易度の高いことをする。いつもやっていることだ。
>で、具体的になにするの?
>酒って果実をほっといたら出来るんじゃないの?
>よく飲みはするけど、作り方は雑にしか知らないな
「酒っていうのは、そもそも何か原料をアルコール発酵させたものだ。ほとんどは酵母を入れて発酵させるらしい。あ、ちなみにこれは調べて出てきた情報な」
正直そう説明されても、俺にはなんとなくしか理解できなかった。
>ああ、発酵ね。あれ、美味しいよね
>食材が腐るのと、発酵するのの違いすら知らない
>酵母ってあれだろ?なんか菌のすごいヤツ
うん。お前らも俺レベルの知識しかないか。普通に生きていて酒造りなんてする機会は無いしな。仕方ないことではある。
これだけ視聴者はいるし、中には詳しい人もたくさんいるだろう。だって、よく見る調理機械に、発酵させる機能もしっかりあるくらいだしな。それを使っている人は発酵くらい知っているだろう。
でも、あまりそういう人はコメントする気は無いようだ。
まあ、一度そういう流れになると、今更私はもっと詳しく知ってますなんて言いづらいよな。分かる分かる。
「このプロジェクトはこの惑星に住む皆が協力してくれるらしいから、果物とかその他の芋とかの食材は俺のもとにいろんな種類がいっぱい届けられてるんだよね。でも、今回使うのは二つだけ。コレです!」
俺はある一つの果物と瓶詰めされた一つのものを見せる。
>ぶどうか
>あとそれは…蜂蜜か?
>ってことはワインと蜂蜜酒をつくるのか
>ワインって高いから作るの難しいんじゃないのか?
まあ、高いワインなどはこだわりや手間がとてもかかっているだろうが、そういうのといっしょにしないで欲しい。
あくまで俺が作るのは原始的な方法で作るワインなのだから。
「実は、ワインとか蜂蜜酒とかは作るのが簡単なんだよね。やり方は簡単。ワインは果実を潰して放置。蜂蜜も水と混ぜて放置。それだけだ!」
俺は現状なんとなくしか酒になる仕組みを理解していないので、簡単に作れるシンプルな方法をとりながら、直感的に理解していこうという作戦だ。
>話を聞くだけなら簡単そう
>あんな高いワインがそんな簡単な方法でできるわけ無いだろ!…え?まじで出来るの?
>口噛み酒とかしませんか?
>男が作った口噛み酒…いい響きだ
「なんか、口噛み酒って嫌じゃね?俺はその方法を取ることなないからな。変に期待するなよ」
この宇宙の飢えた女なら、俺の口噛み酒からなんとかして俺の唾液だけを抽出することみたいな、信じられないようなこともされそうだしな。
一見不可能に思えるが、やりかねないのが怖い。
>つまんな
>君には失望したよ…
>君はその程度のこともできないんだ。そんなんじゃこの会社やっていけないよ?
>お前の意思なんて関係ない。やれ
>お前ら諦めるなよ。こいつならおだてればいつかやってくれるぞ
>まあ、†世界一チョロい男†だからね
パワハラ上司みたいなのがやたら湧いてきてしまった。パワハラ駄目、絶対。
あと、コメントになら俺はおだてられても平気だからな!所詮お前らはただの文字なのだ。実際にあって交渉されたら断れないかもしれないが、コメント相手なら俺も強気に出られる。
まあ、こんなことを自分で言うのは情けなくはあるが…
【自分のウィークポイントも愛してあげれば、いつかはそれが長所になる】
なんかそんなことが本かなんかに書いてあったような、なかったような気がするし!大丈夫だ!
…この言葉は俺が自分を正当化するために生み出しただけな気もしなくもないので、一旦深く考えるのはやめておこう。
「まあいいや。取り敢えず酒造りを始めていこう。まず必要なのは…樽だ!」
次回予告:結果、なにもしなかった日になった




