料理依頼!初めてのクエスト!
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「ういーす。突出ミラクルムキムキイケメンのヒノキです。今日も配信始めてていきます」
>配信始めるなら告知くらいしろ
>今日も楽しみ
>自己紹介、ムキムキイケメンの部分だけは変わらないのな
「今日は初クエストを受けようと思います!」
>唐突だね
>クエストか!いいね
>ワイが出したあなたが履いているパンツが欲しいっていうクエスト受けて!
>さて、どんなクエストを受けるのか…
「もう受けるクエストは決めてます。面白そうで、報酬の良いクエストを見つけたんだよ」
>なんだ、もう決めてるのか
>ワイの依頼!こい!パンツ!
>多分パンツの依頼は受けないと思うんだよなぁ…
うん、そういう個人の欲望が丸出しな依頼が沢山来てましたよ…そんなの選ぶ訳無いだろうに…
まあ、今回選ぶ依頼はある種そんな個人の欲望丸出しの依頼なのだが…いやぁ、つい報酬につられてね…
「今日受けるクエストはこれ!あ、長文注意な」
―――
【クエスト:男の手料理が食べたい!】
達成条件:百個の男の手料理(指定の弁当箱を100個送ります)
報酬:超収納リュック
男が調理した料理が食べたいです!出来ればなにか肉を調理して送ってほしいです!大至急!助けて!
私はある有名果物農家の跡取り娘です。今は親の指導の元、絶賛修行中!
先日仕事の休憩中、後輩との会話中にこんな事がありました。
「先輩っていいとこのお嬢様なんですよね。じゃあ!お見合いとかいっぱい経験してるんじゃないですか?先輩は凄く素敵な女性だから、きっとモテモテなんでしょうね!いいなあ…」
キラキラとした目で私に語る後輩。
この後輩は職場で唯一仲の良い仕事仲間です。私のような親が凄いだけの人間をとても慕ってくれています。
そんな可愛い後輩に対して、わたしはつい見栄を張ってしまいました。
「そ、そう!いつもモテモテ過ぎて困っちゃうわぁ〜。でも、私には親から決められた彼ピッピがいるから、あまりモテても意味ないんだけどねぇ~。私の彼ピッピが料理好きでぇ~いつも愛情たっぷりの料理をつくってくれるんだよねぇ~」
実際、私には親から決められた男がいました。しかし、鼻息を荒くしてアタックした結果、遠い惑星に逃げられた過去があります。
後日聞いた話によると、どうやら、その男は私の凄まじい勢いに引いてしまったようです。
最初に「S◯Xを前提にS◯Xしてください!」というアプローチをしたのがダメだったみたいです。男を見て、つい欲望が漏れてしまいました。
その後も親がなんとか持ってきてくれたお見合い話にことごとく失敗しまくり、その結果今では親から「もう自分で男を探せ」と呆れられてしまっている状態です。
なんとか男といい感じになろうと頑張っていますが、現状どうにもなっていません。
ということで、勿論彼ピッピなんて嘘です。料理好きの彼ピッピというのは、ただの私の妄想彼氏なのです。
そんな私の嘘に気付きもしない可愛い後輩は、純粋な目で私にお願いしてきます。
「へぇ~いいですね!羨ましいです!料理好きの彼氏さんですか!今度、最近男と全く喋っていない哀れな私に、彼氏の手作り料理をお裾分けしてください!一口だけでいいですから!オスの手料理を食べると、メスの本能が暴れ出して体に凄く良いという噂もあるくらいですし、どうしても食べてみたいんです!」
しっかり丁寧に頭を下げて頼み込んでくる後輩。後輩はこんな頼みごとの時でも、どこか品が良いのです。私とは大違い。
ちなみにこの後輩、昔とても仲の良い男がいたらしいです。正直私のほうが羨ましいんだけど…
「ま、まあいいよ!でも、料理が好きなだけで上手なわけじゃないから、あまり期待しないでね?」
「大丈夫です!男の手料理を食べた事実さえあれば、今後一生頑張れる気がします!」
と、言うことがありました。
可愛い後輩のため、そして私の嘘がバレないためにも、なんとかヒノキ様の料理を送ってくれないでしょうか?
お返しとしては、超収納リュックをお送りしようと思っています。
このリュックは入れたものを自動的に圧縮してくれるので、相当な量が入ります。勿論リュックから出せば入れたものは元通り。さらに、中にいれたものを自動で整理整頓までしてくれるスグレモノです。
これはやり手社長である母が私の成人祝いにくれたプレゼントです。多少古いモデルですが、性能は超優秀。かなり高価なものですが、男の手料理と私の保身のためなら、手放しても痛くありません!(正直使ってませんし…)
ただ、やはり元値が高いのでお弁当箱百個分くらいは最低ほしいです。あさましい女ですみません。
きっと、この超収納リュックはヒノキ様のスローライフに役立つと思います。
長文失礼しました。
―――
「はい、このクエストを受けます」
>なげーよ
>もっと簡潔に書け
>なんでこんな長文クエストを受けようと思ったのか…
>クエスト受けてもらおうとしたらこんな長文書かなきゃいけないのか…
いやいや…別に長文の必要はないぞ?
「このクエストを受けたのは、ぶっちゃけ、たまたま目に入ったからだ!報酬もいいし、依頼主がなんか面白そうな状況だしな」
>先輩さあ…
>なぜそんな見栄を張ってしまうのか
>女なら本当に男が作った手料理かどうかなんて判別余裕だからなあ…
>でも、お見合いなんてするなんて、実家に力がある証拠だよな。かなりの有名農家と見た
>今どき有名果物農家ってことはかなり大物の匂いがする。おそらく一等ランクの果物を作ってるんだろうな…
この宇宙では、食材には六段階のランクがある。食材を売る場合は、機械によって品質を自動的に解析され、ランク付けされるのだ。
食については色々細かい歴史や文化があるらしいが、俺は細かいことは知らない。
食についての歴史はあまりに複雑かつ、情報量も多すぎるので、専門家じゃないと解説するのは難しいのだ。
俺が食について認識していることといえば、もはや食は完全に娯楽扱いになっているということくらいだ。
高度に技術が発展したことによって、人はもう食には困っていない。どんな惑星だろうが、栄養満点のタブレット食が無料で配られる。
それに加え、食材の保存技術も発達しているので、普通の食材なんて溢れかえっている。だから、相当美味しくないと食材は高く売れないのだ。
それなのに有名果実農家というのだから、おそらく最高ランクの一級の果実を売っているのだろう。いいとこのお嬢様、お見合い話があるなどから、そう推測できる。
最高ランクの果実を育てるのには、強運と、育てているものへの大きな愛情、血の滲むような努力や、延々と続くような根気もいると世間では言われている。
農家で成功するというのは、ものすごく大変なことらしいのだ。
そんな貴重な一等農家の一人娘まで俺の配信を見ているなんて、俺も有名になったものだ…
まあなんだか、この一人娘はやたらと小物臭がするのだが…
うん。親が凄いだけ説はあるな。
「このリュックは今の俺に必要だし、このクエストはちょうど良かった。遠出するときにいっぱい採集したいといつも思ってたんだよね。じゃあ、早速料理していきます!」
しっかりした作りの弁当箱も百十個ほど一緒に送付されていた。これにいれろってことね。了解。
十個は予備かな?
だが、予備にしては少し多い気がする。
もしや、俺が余分に作って送ってくれるという僅かな可能性を願っているのか?
やはりこの依頼主、ちょっと小物臭いぞ?
>あなた、料理なんて出来るの?
>お弁当を作るなんてあなたには難易度高くね?
「大丈夫大丈夫!俺、そこそこ料理得意だから!見とけよ!」
俺は前世では自炊生活だったのだ。そんな凝った料理は作れないが、多少の料理は作れる。
それに、俺もいつかウツギのように重箱に美味しい料理を詰め込みたいという夢があるのだ。その夢へのステップアップのためにも、できる限り頑張ってみよう。
まずは、緑鳥の塩焼きをドカンと大きくいれる。これで弁当箱の八割がうまる。次に、付け合せに気持ち程度の彩りとして、生で食べられる葉っぱを敷き詰め、虚無バナナと、りんごも加える。
完成!
>ざっつwww
>料理が…得意?なのか?
>確かに私とかよりは料理できそうな手つきだけど、これはなあ…
仕方ないだろ!材料も設備も食材も少ないんだから!米と冷凍食品と調味料と電子レンジとコンロとその他諸々の料理道具さえあれば、俺でも華麗に料理できたんだ!
俺は出来る範囲で頑張ったほうだと思う。
ほら!りんごなんてウサギさんカットだぞ!凄くね?
「まあ、今できる最高の出来の弁当なんてコレくらいだ。よーし、あとは緑鳥と、葉っぱと虚無バナナと、りんごを100個分集めてくるので、今日の配信は終了。配信外で同じことをやっておきます。じゃあ、おつ~」
>おつ
>おつかれー
>カツカレー
>今日も楽しかったよ
その後、俺は森で食材を集め、無事にお弁当を納品。クエストを成功させた。
わーい!超収納リュックだ!これで採集が捗るぞ!
ちなみに余談だが、このクエストの依頼者は、セコいことにお弁当を後輩には一切渡さず、独占して一人で体をスパークさせていたらしい。
そして後輩にその事がバレ、唯一慕ってくれる後輩すらいなくなったとさ。
次回予告:イエローカード20枚まではセーフ




