閑話休題 毒花女達!心の中を覗き見
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セリ視点
僕は今日もゲームをする。色々なことを考えながら…
僕はおそらく普通の人より賢いのだと思う。頭の回転が人よりも速い。試しに知能指数を測ったときはかなり上位の値だった。そのおかげでゲームは上手いけど、デメリットも有る。
思考が速いせいか、沢山のことを考えすぎてしまうのだ。
ヒノキはどんな女が好きか、どうすればヒノキを独占できるか、ヒノキはあの時どうなふうな考えだったのか、ヒノキは僕のことをどう思っているのか、ヒノキは僕と恋人になって嬉しかったのか、ヒノキは…
ずっと、ヒノキのことばかり考えてしまう。ヒノキへの思いが溢れてとまらない。僕の頭の中はヒノキのことばかりだ。ヒノキ無しでは生きていける気がしない。ヒノキ依存症なのだ。
僕はヒノキに恋してる。生まれてからずっとずっと、多分、これからも、ずっと。
生まれた年も同じで、家も近かったため、ヒノキとは幼い頃からよく遊んでいた。僕は自分のことをとても幸運だと思っているが、人生一番の幸運は生まれた場所と時期が良かったことだと思う。お母さん。産んでくれてありがとう。
そんな僕が、何故いつもゲームをしているのか。もちろんゲームが宇宙一の娯楽だと思っているからという理由が大きいのだが、それだけではない。
ゲームをしていると夢中になれる。僕の溢れてしまいそうなヒノキへの気持ちを制御できる。
だから僕は1日中ゲームをしているのだ。
1日中ゲームして、少し散歩して、甘いものを食べて、夜にはヒノキと大人のゲームをして、また朝になってゲームをして…
僕はこんな最高の一日を繰り返している。女なら誰もが僕の生活を羨むだろう。
ただ、僕はこの生活に一切の不満が無いというわけではないのだ。
その不満とは、ヒノキが僕だけを見てくれないということだ。
「死ぬときにはヒノキの腕の中で死にたいな…」
ふとゲームをしながら独りごちる。
ヒノキは決して知らないだろうね。僕がヒノキのことを狂おしいほど愛しているということを…
こんな重い愛情を向けたら、ヒノキが壊れてしまうかもしれない。
だから、今日も僕はゲームをする。荒れ狂う恋心を鎮めるために。
それも全て、願いを叶えるため。
(僕はヒノキの唯一の女になりたい。というか、絶対になってみせる)
僕は毎日何度も何度も心の中でそう呟いている。
だから、僕はヒノキの言う結婚だってしても良いのだ。
ただ、問題があるとすればヒノキ自身。
ヒノキは女性にちょっと誘われればホイホイとついて行ってしまう。特に、おっぱいの大きい子や、肌の露出が多くてセクシーな女、母性的な女性にもとことん弱い。
ヒノキは最悪、女なら誰でもいいのだ。長い付き合いだからこそ、そういう部分があることをよく知っている。
なぜヒノキがそんなふうなのか、理由もなんとなく分かっている。ヒノキは前世が男女比1:1だったせいだとか、この世界の女が魅力的すぎるせいだとか言い訳しているが、僕からするとそれだけが理由なわけではないと思う。
何故ヒノキが女なら誰でもいいのか。その理由は、ヒノキが一人でも生きていけるからだ。僕はそう思っている。
ヒノキは女に頼らなくても生きていける。おそらく本人にその自信もあるのだろう。
人は支え合って生きていくというが、ヒノキは支え無しでどんどん歩いていけるタイプの男なのだ。
実際、ヒノキは新しいことに挑戦することを厭わない。闘技場に参戦する男なんて今までいなかったし、一人でスローライフをすることなんて普通の男は発想すらしないだろう。
ヒノキは闘技場で通用しないことを嘆いたり、スローライフが思い通りにいかないことを嘆いているが、そんなことは全く問題にならない。実際に思い通りにいかなくとも大金を稼げてしまっているし。
誰もやったことがない前代未聞なことをためらわずにやってしまう勇気。これがヒノキの一番すごい所なのだ。
一人で道なき道をどんどん進んでいく力があるので、そもそもヒノキは本心ではパートナーを必要としていないのだ。ヒノキ自身はそのことを認識していないが。
「ヒノキにはそんな性質があるから、いつも性欲に振り回されるのだと思うんだよね。心が異性を必要としていない分、それを補うように性欲で強く異性に惹かれてしまうのかな?」
僕は華麗にコントローラーを操作しながら、ぼそっと呟く。
荒唐無稽な仮説だが、僕の勘ではその考えは間違っていないと確信している。
これじゃあ、決してヒノキの言う理想の結婚生活なんて出来ないだろう。ヒノキはただ結婚という憧れを口に出しているだけで、心が伴っていないのだから。
「でも、ヒノキはちょっとずつ、ほんのちょっとずつだけど、毎日変わっている。成長しているというのが正しいのかな?コレならいつか、僕の願いが叶うのかもしれない」
ゲーム画面に【YOU WIN!】という文字がデカデカと表示された。僕は続けて次の対戦を行う。
僕だけを愛して欲しい。僕だけを見て欲しい。脳内にいるのは僕だけでいい。
女ならきっと大なり小なり男に対してこのような欲望はあるだろう。僕も同じ。ただ、僕の欲は自分では制御できないくらい他の女より大きいけれど。
僕のこの大きな欲望の実現のためには、行動しないといけない。作戦も必要だ。
今の所大きな敵はざっと見て二人。トリカとウツギだ。
トリカは真っ向から向かってくる強力なライバルだ。とても魅力的な自分自身をこれでもかとヒノキにアピールしている。
もう一人のウツギは…うん。今はまだ大丈夫。でも、きっとあの人も将来、強力なライバルになると僕の勘が囁いている。要注意だ。
僕が見た所、あの女はメスとしてのポテンシャルがそもそも高い。フェロモンとでも言うのだろうか?それがとても強い。オスの本能に訴える力が強いのだ。同じく本能で動いているようなヒノキとはとても相性がいい。そんな天性の才能を持っている。
でも、僕は誰にも負けるつもりはない。
僕はヒノキの好みの女性とは程遠いだろう。胸は多少大きいけれど、僕以上に大きい人はたくさん居るし、僕は母性的でもないし、セクシーな格好をしているわけでもない。
でも、僕は僕なりのやり方で全員に勝つ。実際に、今一番ヒノキが大事に思っている女は僕だ。その自信もある。それでも、僕は一切油断はしない。
これはゲームだ。欲を実現させることは、ゲームで勝つのと一緒。人生で大事なことはゲームが教えてくれた。
毒のように少しづつ、少しずつヒノキの心のなかに僕という存在を浸透させていこう。
複雑なことなんて必要ない。ただただ長い期間、ヒノキと一緒に日常を過ごすだけでいいのだ。
その日常の中で、ヒノキが一瞬でも僕を魅力的に感じる瞬間が一度でもあればその日は十分だ。
それを何度も繰り返す。そうすれば、いつかきっとヒノキは僕がいないと生きていけなくなるはずだ。
なんだかんだヒノキは情が厚く、懐が深い。とっても優しいから、僕がお願いすれば絶対にかまってくれる。
でもヒノキ?それは僕が仕掛けた罠なんだよ?
僕にかまった時間や、僕に貢いだお金が増えるにつれ、どんどんヒノキの中で僕のことが大切な存在になってしまっているはずだ。ヒノキって、とっても単純だからね。
僕もヒノキもまだまだ若いから、人生はまだまだ長い。ゆっくり、ゆっくりと焦らずいこう。こちらはいくらでも準備オーケーだが、ヒノキはまだまだ準備不足。
「僕は待ち続けるよ。待つのは得意だ。追いかけるのも得意だ。ヒノキが僕だけを見てくれるまで、僕は待ち続ける。このゲームに勝つまで、ずっとずっと…」
【YOU WIN!】
今回の対戦も僕の勝ち。
今日はこれくらいにして、もう寝ようかな。
明日も僕はきっとゲームをするだろう。100年でも1000年でも。ずっと。
だって、勝たないとゲームは面白くないからね。




