博士奮闘!滅びの運命の対策!
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「では、続きの物語を話していこう。なるべく重要なところだけピックアップして、私がHIRARIと関係を深めたところから話していこうか――」
それから二人で計画を練り、いろんなことを同時並行で進めていった。
「幸い現状まだ時間はたっぷりある。そうやすやすと宇宙は崩壊しないはずだ。だから、とにかく最初の優先事項は、いつやってくるか分からないエイリアン対策だな」
「承知しました。では、量産型アンドロイドを作れる技術レベルまで他の惑星の文明を引き上げましょうか」
「そうね。高次元バーチャル旅行の技術を使えば、他の人間に紛れ、バレないように自然とテコ入れができるはず。あまりよくないことだけど、仕方ないわ。不自然にならない程度に一気に文明を引き上げるわよ!」
「同時にエイリアンからこの惑星を隠す必要があります。今この惑星は魔王という爆弾をかかえているようなもの。あまり戦闘という刺激を与えるのはよくないでしょう」
今はこの宇宙にエイリアンの気配は一切ない。おそらく魔王が人間と一緒に存在を抹消してしまったのだろう。
ただし、エイリアンの性質上また力を蓄え、現れる可能性は高い。
あいにく、エイリアンについての資料はそこそこの数現代まで残っている。身を隠すのが上手く、なんとか細胞が一ミクロンでも生き残れば、そこから再生する根絶のしにくさを持っているのだ。しかも、その個体は耐性を得てしまうおまけ付き。
その後は一匹でも数を増やし、世代交代によって耐性がどんどん増えていくというとても厄介な存在だ。
そして、エイリアンの何よりの特徴は、「執念深さ」だ。
私はその資料を見て最初に頭に浮かんだこと。それは、
(もしEエネルギーによって生き残った個体がいたとしたら、どうなってしまうだろうか?)
という懸念だ。
そうなれば、自分たちを滅ぼしかけたEエネルギーという痕跡を血眼になって探すだろう。そうでなくとも、この惑星によって大規模侵略が失敗させられている。この惑星は絶対に狙われているはずだ。
「そうね、ならば、全力でこの惑星を隠しましょう」
全ては強力な運命のうねりに対抗するため、宇宙の崩壊をどうにかするため――私たちは全力で動いた。
◆
「ようやくアンドロイドの量産が始められるわね」「では、計画をスタートします」
その後、爆発的にアンドロイドは広まった。
「あの計画のために、娯楽が大量に必要になるわ」「ならばそのような文化になるように調整します」
その後、娯楽が金となる時代に突入した。
「私のように偶然にもこの惑星に来られると困る」「ではワープ技術の調整、及びワープの禁止などの法整備を整えます」
その後、宇宙全体の法整備が整っていった。
基本的にそれらは全てHIRARIに任せていたが、私が口を出したこともある。
特にアンドロイド関連のことについてはこだわらせてもらった。
例えば、アンドロイドの基本設計に「アンドロイドは愛されて輝く存在である」隠し機能を追加したり、「アンドロイド流武術」という、やり遂げたアンドロイドが人間っぽくなると言われている空想上の武術をやってもらうようにしたわ。
これは、生前クチナシがこだわっていたから、とくに根拠なく加えたわ。それに、HIRARIを作ったときから、私はアンドロイドという存在に可能性を感じている。だから、根拠なんてなくても、アンドロイドにだけはこだわりたかったのだ。
HIRARIには「アンドロイドに愛という概念は邪魔になります。私以外は」と強く反対されたけれど……私はどうしてもそうした方がいいと思ったのよね。
というより、私もクチナシが信じた愛の可能性を信じることにしたの。
アンドロイド流武術が意外と理にかなっていたことも相まって、たくさんお願いしたら最後にはHIRARIも折れてくれたわ。
同様に、クチナシが可能性を感じていたEエネルギーを本格的に発展させていったのもこの頃ね。
◆
「ついに今日が運命の分岐点。そして、これが無事に終われば、下準備はようやく完了ね」
私たちは地球の中心、魔王ちゃんが封印されている場所まで来ていた。
この滅びの強大な運命の流れは、最終的に行き着く先は同じでも、進む道は二股になっている。私が見る限り、おそらく高確率でとんでもなくスピードの速い道へ進んでしまうはずだ。
だから、運命が進むスピードがゆっくりなもう一方の道へなんとか誘導するため、私たちは今日まで頑張ってきた。
「考え直す気はないのですか?」
先へ進もうとする私を、HIRARIが腕を掴んで止めた。HIRARIにしては珍しく余裕がないようで、腕を掴む力がかなり強い。
「ええ、これが私にできる最善だもの。たとえ危険でも、取れる方法があればやらないわけにはいかないわ。あなたにはもっと負担をかけることになるけれど、頼んだわね」
「……承知しました」
「もう、何をそんなに心配してるのよ。きっと大丈夫よ。確かにあの氷に一瞬だけ触れることになるけど、本当に一瞬だけだもの。大した不都合は起こらないはずよ」
「そう……ならいいのですが」
「そうね。もし、私が死んじゃったら…」
「そんなことはありえません!私がいる限り、決して博士を死なせはしません!」
HIRARIは珍しく声を荒らげた。
きっとHIRARIは不安なんだ。
今日のために私たちは何度もシミュレーションしている。数百、数千の仮定を立て、何が起こっても対応できるように、しっかり準備してきた。
それでも、この先どういった結果になるのかは計算では決して分からないところも多い。何が起こるのかを正確に予測できないのだ。
「ふふっ、ホント、平凡な私が作ったとは思えないほどあなたは素敵だわ。大好きよ」
そんなHIRARIを安心させようと、私は彼女を優しく抱きしめた。
「ええ。私も博士のことを宇宙で一番愛しています」
しばらくの間、私とHIRARIは抱きしめあっていた。
「さて、じゃあ行ってくるわ」
ぽんぽんとHIRARIの背中を軽く叩いたのち、彼女から離れる。
「行ってらっしゃいませ」
気合注入して、今は最高に調子がいい。これなら、きっと大丈夫だ。
「魔王、待たせちゃったわね。あなたに聞こえているかは分からないけれど、聞こえている前提で話すわ。大丈夫、あなたを一人にはしないわ。滅びる時は、私も一緒。これからは私とあなたは運命共同体になるの」
私は分厚い氷に包まれた先の魔王に語りかける。
「私たちは魔王について、この氷について、何度も調査している。その結果、分かったことがあるわ」
まずこの部屋、ここは時間を凍結させる機能がある。食材を冷凍して保存するように、ここにいれば時が進むことはほとんどない。
さらに、この魔王についても分かったことがある。
「あなたの正体は、この惑星で初めて作られた、プロトタイプのアンドロイド」
布切れのような黒いマントを羽織ることでかろうじて人形に見えているが、実際にはボロボロの目と脳とコアしかない。
きっとその邪悪な存在感や見た目から、魔王と呼ばれてしまったのだろう。
「あなたは元々、宇宙の収縮に対抗するために極秘で作られた、切り札のような存在なのでしょう?」
調査の結果、驚くべき事実が判明した。
この宇宙は今なお、ゆっくりと収縮しようとする力に晒されているのだ。
その収縮を防ぐために作られたのが、このプロトタイプだった。言うなれば、「宇宙のコア」のような存在だ。
取られた手段は、「プロトタイプを宇宙そのものに寄生させる」というもの。宇宙の構造の一部として組み込み、内側から収縮を食い止める。
だが、どうやってそれを実現したのか。
プロトタイプが作られてから二千年が経った今も、私にもHIRARIにも解明できていない。
どれほど資料を集めても残されているのは、プロトタイプがどういう存在であるかという概要と、最低限のメンテナンス方法だけ。
きっと、とんでもない一人の天才が独自に成し遂げたのだろう。
この宇宙のコアによって、長い間この宇宙は均衡を保っていたのだ。
「ただし、不幸にもあなたの存在は忘れ去られてしまった」
最低でも二千年以上前から地球の中心で宇宙の均衡を守っていたのに、長い間誰にも評価されず、誰にも知られず、誰にもメンテナンスされなかった。
「それでも、地球に重大な危機が迫った時、もはやボロボロになってしまった体であなたは動いた」
今や誰よりもアンドロイドについて詳しい私から言わせてもらうと、プロトタイプには現代のアンドロイドのようにはっきりとした意識は備わっていない。
ただし、ある種の「この惑星と宇宙を救う本能」のようなものがほんの少しだけ備わっているので、生きているように見えたのだろう。
故にプロトタイプは、生物というより限りなく機械に近い存在だ。
「ただ、エイリアンは想像以上の脅威だった」
ボロボロのあなたでもどうしようもない。このままではこの惑星は、この宇宙は滅びてしまう。
「優秀なあなたが可能性を見いだしたのが、Eエネルギーという新たに作られた対エイリアンへの秘策」
本能が導く最適解のままに、あなたは動く。
「そして――」
次回予告:マジックカード融合を発動!




