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貞操逆転スペースファンタジースローライフ!?~男女比が1:10の宇宙で男に生まれた俺が、辺境の無人惑星でスローライフする姿を配信する  作者: ながつき おつ
最終章

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博士の過去!その4!人生を語る!

読んでいて少しでも感情が動いたら、評価・リアクション・ブックマークをお願いします。



 クチナシには宇宙を救いたいこと以外にも「この星を元の姿に戻してあげたい」という願いがあった。


 優しいクチナシらしい願いだ。自身の知識欲のために動いている私とは大違い。


 芽が出たことで、その願いは空想ではなく、現実として手を伸ばせることになった。


 それからの私たちは、さらに活動的に活動していった。今までの文明の記憶を余すところなく収集・保護していくのに加え、歩き回りながら植物を植えていくことも日常になったのだった。





「見て!これが梔子クチナシの花だって!あなたと同じ名前の花よ!それにしても、あなたの頭のお花とそっくり……さすが私ね!」


 抱えていたクチナシから、呆れの感情が流れてくる。


「え?偶然でしょ?って?そりゃそうよ。私は今まで花なんて気にして生きてきてなかったんだもの。そんな教養は持ってないわ。でも、偶然でもいいじゃない。結果オーライってことで」


 たとえ偶然でも、私は嬉しかった。なんだか縁があるみたいで、運命すら感じたわ。


「この惑星で色んな花を復活させてきたけど、やっぱり私の宇宙で一番大好きな花であることは、未来永劫変わらないと思うわ。って、ちょっと!照れないでよ!」


 どうやらクチナシは自身の頭の花はとても大事なもので、それと同時に誇りに思っているものでもあるらしい。


 以前『あなたの頭の花、ハリが出てきたんじゃない?』と伝えたときもクチナシは一日気分が良かったので、絶対そうだ。


「そうだ!梔子クチナシの花でこの惑星を埋め尽くしましょう!って、なんで止めるのよ。え?恥ずかしい?それに、他にもたくさん魅力的な花はあるって?確かにそうかもしれないけど、いいじゃない。私が好きなんだから」


 暴走しがちな私と、そのストッパーとなるクチナシ。そうやって二人でどんどん植物を植えていった。


 

 それから数十年後のことだったかしら。私たちの快進撃はまだまだ続いていたわ。


「ついに滅びた動物も復活させられることができるようになったわ!」


 クチナシと私は手を取り合って喜び合った。植物が育ったことを応用して、動物も復活できるようになったのだ。


「これからは保護と植物の再生だけじゃなく、動物の再生もしていきましょう!」


 それから数百年にわたり、活動を続けた。


 クチナシといると、本当に楽しいことばかりだ。二人でいっぱい会話して、素敵な思い出がどんどん積み上がっていく。



 そんな他愛のない会話を、日常を、日を変え、場所を変えながら繰り返す日々。


「この惑星の娯楽、本当に面白いわね。これだけ長く生きているのに、娯楽で溢れているからか、一切死ぬ気にならないわ」


「クチナシってこの優しい愛の歌が好きなのね。私はこの上級国民が下々の人を見下して笑う気持ちのいい歌の方が好きだけど……って、なによ、感性は人それぞれなのよ」


「私って動物に詳しくないのよね。母星では生きることと、周りを見返すことに必死で、そういうところを重要視していなかったの」


「見て!この漫画、いっぱい人が死んで爽快感があって楽しいわ!って、そうだったわ。クチナシはこういうの苦手だったわね」


「え?こんな動物存在しないの?これだけ詳細にデータがあるのに?はあー、相変わらず娯楽に関してはすごい情熱とこだわりね。まさか創作のモンスターを復活させちゃったとはね。やっちゃったけど……可愛いからよし!」


「ほんと、クチナシって愛の話と運命の話と自然の話が好きね。長く生きることで自然は好きになってきたけど、愛や運命に関しては私にはよく分からないわ」


 振り返れば、大昔のこういう一つ一つの会話が今でも鮮明に思い出せる。それくらい楽しかったの。



――また数百年が経ち、この惑星の半分を見回った頃。


「気のせいかしら。あなたの花……いえ、なんでもないわ」


 嫌な想像が頭をよぎったが、頭を振って考えないようにした。


 …きっと私の見間違い。それか、今日はちょっと調子が悪かった。それだけよ。


 この日も、その次の日も、見ないふりをして日常を過ごしていった。



 ある日、嫌な想像が真実であることを裏付けるようなことが起こる。


「クチナシが起きてこない?いつもはこの時間には起きてるのに……どうして?」

 

 クチナシは日が進むにつれ、ほんのわずかに眠る時間が長くなっていった。


 それでも無理やり頭を振って嫌な想像のことは一切考えず、同じようにまた数十年、数百年過ごしていった。


 クチナシ自身もそのことについて触れようとはしない。


 けれど、タイムリミットは確実に近づいている。クチナシの頭の花を見れば、嫌でも思い知らされてしまう。


 もう自分を誤魔化すのも限界だ。絶対に見間違いなんかじゃない。


 それでも、私は現実を認めたくなかった。


 私はクチナシとこの楽しい日常をずっと過ごしていたいだけなのだ。


「私たちの頑張りによって、クチナシが見たい景色はもうすぐ見られるわよ」


「今じゃあこの惑星は命あふれる惑星になった。人間こそ私しかいないけどね」


「それにしてもあなたって何者なのでしょうね。いくら探しても、これだけ文明が進んだ惑星でも、あなたのことは一切資料がない。なんなのよ、もう…」


「またちょっとだけ花がしおれてきた……どうすればいいのよ、もう……どうすればいいか、分かんないわ」


 意地でも嫌な事実を認めてなるかと日々を過ごしていたある日のこと。


 この日、積もり積もった不安が原因か――見ないふりをしていた嫌な現実が、そっと胸からこぼれ落ちてしまった。


「あなたは……そう、やっぱり寿命なのね」



――クチナシは、寿命を迎えようとしていた。


 私が意地を張ったせいで、そのことを受け入れるまで、かなり長い時を有した。


 一方、クチナシ自身はとっくの昔に寿命を受け入れているようだ。


 クチナシは自然の摂理を大事にして生きている生き物だ。たとえ私のように寿命を延ばす方法があったとしても、寿命に逆らったりはしない。

 

 そもそも、元々弱っていて、死にかけていた生き物だ。これだけ長い間生きていられただけで奇跡だったのかもしれない。


 ただ、今まで私と共に数百年生きていることから、クチナシは元々寿命が長い生物だろう。今ほんの少し弱ってきているとはいえ、そんなにすぐ寿命を迎えるわけではないはずだ。


 実際クチナシ本人も、ただ寿命の折り返し地点を過ぎただけと、軽く考えているフシがある。きっと私たちに残されている時間はまだまだ長い。


 それでも、最初は悲しくて悲しくて、どうしようもなかった。しばらくはなんにもやる気が起きなかった。



 けれど、死に向かって懸命に生きるクチナシと長い間過ごしていると、考えも自然と変わっていく。


「クチナシ、あなたには最高の死をプレゼントするわ!」



 それから私は、クチナシに最高の余生を過ごしてもらうため、前向きに活動し始めた。


「あなたが死んでも私は死なないわ。絶対に死んでなんかあげない!だって、私の心は一切死にたがっていないもの。なんなら、燃えまくっているわ!この復活して最高になった惑星で、余生を楽しみ尽くしてやるの。だから、安心して眠りなさい」


「あなたが死んでも、絶対に泣いてあげないわ。笑顔であなたの最後を見送るって決めたの」


「もう、何度も言ってるじゃない。そんなに心配なら、約束してあげる。あなたが死んだ後も、私はずっと笑って過ごし続ける。ほら、指切りしましょう」


「あなたが死んだら、悪いこと仕放題ね。眠る時間だって不規則になるし、食べ物の栄養なんて考えないし、一日中ぼーっと過ごすこともありそうだわ。ある意味楽しみ……え?ダメ?」


「お墓にはいっぱいの梔子クチナシの花を植えるわね。そして、あなたの好きなもので周りを埋め尽くすの」


「クチナシが眠っている間に、どんどん準備を進めているの。最近では、お墓が豪華になり過ぎちゃって困ってるくらいよ」


「…無理はしなくていいわ。ずっと眠っていたっていい。何もしなくてもいい。でも、お願い。死なないで」


「これで、この惑星は全て見終わったかしら。ほんと、長かったわね」


「そう、今日なのね。分かったわ」


「あなたは何も気にせず、私に全て任せて安心して眠りなさい」


「おやすみなさい。クチナシ」


 ぽとりと頭の花が落ち――私の胸の中でクチナシは安らかに眠った。


 クチナシの体がどんどん冷たくなっていく。


 それでも、気張って気張って、最後の最後まで笑顔で迎えた。



 それからしばらくして――私の頬に一粒の涙が伝った。


「う、ううう、うわああああん!やだよおおおお!なんで死ぬのよ!嫌だよ!うわあああん!」


 一度溢れると、もう止めることはできない。


 胸を押しつぶすような悲しみが私を襲った。


 頬を伝う涙は止まらず、地面一面に咲く大量の梔子クチナシの花を濡らした。



次回予告:クチナシがどうにかしたかった存在

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