花見前編!全員大集合
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「えー今日はアンドロイドのヨヒラに誘われて、皆でお花見をすることになりました!」
>いきなり配信始めるな
>今日も楽しみ
>お?この湖周りの景色結構変わってるね
>ヨヒラさんの家も大きくなってる!
「そうなんだよ。ヨヒラは色々やってるみたいだよ。家で色々な生物を飼ったり、花や生物のスケッチをしたり、毎日様々な花や植物を植えたりね」
ヨヒラはこの惑星での生活をかなり満喫しているようだ。ちょくちょく配信外でここには来るのだが、来るたびにちょっとづつ景色が変わっている。家が大きくなっていたり、木材加工用の部屋が増築されていたり、馬小屋が建築され、そこで馬を飼っていたり、湖に大きなハスのような植物が増えていたりなどだ。
しかもそれらはすべて寄り道として楽しんでいるのだから凄いよな。ヨヒラのメインの目標は、この惑星にある植物だけで大庭園を作ることだ。それも順調に進めつつ、息抜きとして違うことも楽しむ。うむ、お手本にしたいくらい素晴らしいスローライフだ。
>ヨヒラ様の大庭園計画の完成が楽しみで仕方がない
>お!桜がいっぱい咲いてるね!すごい綺麗!
>そっか、そっちは桜の時期か。花見はいいねぇ…
そう、桜!桜っていいよね!前世が日本人なので、桜はやはり特別な花なのだ。この惑星にも桜の木があり、湖の周囲に沢山はえている。前世と同じく綺麗なピンク色の花で、花びらの形も一緒。あのハートのような独特の形が大好きなので、前世と全く一緒なのは嬉しい限りだ。
それにしても、桜の開花時期に合わせてお花見に誘ってくれるなんて…うーん、にくいねぇ!ヨヒラは粋というものが分かっているな。
「おっと、もうみんな来てるみたい。俺が最後っぽいな」
さっきから女性四人の話し声が聞こえてきている。女性が集まると賑やかでいいな。
そういえば、この惑星に来た人達全員が一箇所に集まるのは今日が初めてだ。記念すべき日だな。
俺は今日という日にワクワクしながら合流する。
「おまたせー」
「おそいよヒノキー。ほら、こっちに座って」
セリが隣の椅子をトントンと手で叩く。ここに座れということだな。了解。
俺は誘われるがままセリの隣に座る。もう片方の隣はトリカだ。
俺は軽く宴の席を観察する。
焚き火を囲むような形の木の机と、五つの簡易的な木の椅子が置いてある。おそらく主催者のヨヒラが作って置いてくれたのだろう。
木の机や椅子は完成度が高く、しっかりニスのようなものまで塗られている。スコップやドリルを作ってもらったときも思ったが、ニスなんてどうやって手に入れたのだろうか?後で聞いてみよう。
ヨヒラは俺が来たことを確認すると、俺に高級そうなグラスを渡し、ワインのようなものを注いでくれた。これは、確かトリカが好きな銘柄の高級スパークリングワインだな。ということはトリカが用意したのか。
このワイン、一度だけ飲ませてもらったことがあるが、凄い美味いんだよなあ。この惑星でコレが飲めるなんてラッキーだ。
ヨヒラは俺にワインを注ぎ終えると、立ち上がって挨拶し始めた。
「では全員来た所で…トリカ様が用意してくれたお酒で乾杯しましょう。では皆様。ご唱和ください。乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」」
ゴクッ、ゴクッ。プハー!
うまい!久しぶりに飲む酒は体にしみるな!
改めて思うが、なかなかクセの強いワインだ。でも、相変わらずとても美味しい。味ももちろんだが、香りが特に素晴らしい。
まずは味について。このワインは濃厚かつフルーティー。爽やかな酸味が口の中で弾けるような味で、飲み込んだあとには美味しすぎて口の中にとてつもない幸福感が広がる。
次に香りについて。このワインは口に入れた途端、香りが二段階で楽しめるとても特徴的なワインだ。口に入れ、最初に感じるのは衝撃。例えるのなら、まさに香りの爆弾。甘い花の濃厚な香りが爆発的に体中を駆け巡るのだ。
その後、少し遅れてぶどうの芳醇で軽やかな香りが香ってくる。このぶどうの香りはリラックス作用があり、花の強烈な香りによって興奮した体を落ち着かせてくれる。
うむ、飲んでいてとても刺激的で楽しい一品だ。どんどん飲もう!
>そんなビールみたいにゴクゴク飲むな
>ちょっと!それ高価なやつ!というかスパークリングワインをそんなふうに飲まないで!
>流石トリカ様。惜しげもなく最高級のワインを持ってくるなんて…
おっと、飲み方を間違えたようだ。自分を抑えきれずについ一気に飲み干してしまった。次はもっと味わって飲もう。
あ、良いこと考えた。
こんな良いお酒を飲むのなら、今日くらいは羽目を外そう!
俺は脳内のチップの自動解毒作用をオフにした。これでアルコールによって思う存分酔える。
よーし!久しぶりに酔うぞ!
「さて、一人一つづつ何か食材を持ってくるとのことでしたので、わたくしはお酒を持ってこさせてもらいましたが…あなた方は何を持ってきましたの?」
トリカが優雅にワイングラスを傾ける。飲む姿がやたらと様になってるな。相変わらずやたら高貴さがあるなコイツ。
「俺が持ってきたのは…じゃじゃーん!虚無バナナの塩漬けを干してドライフルーツにしたやつでーす」
俺は真っ先に自分が持ってきた自慢の一品を見せつける。
>なぜそんなものを持ってきたのか…
>果物を塩漬け?
>虚無バナナなんか持ってきてドヤ顔するな
「虚無バナナって…なんで宴の席にそんなもの持ってきたのよ…」
ウツギが口いっぱいに肉を詰め込みながら串で俺の方を指す。
その持っている串は、ヨヒラがあらかじめ用意しておいてくれた盆栽鹿の串焼きだ。それ!俺も食べたい!ものすごい勢いでウツギが肉を食べているが、俺の分も残して置いてね?
…まあ、かなりの量用意してくれているから大丈夫か。
盆栽鹿の肉はあの時バカ恐竜に取られて存分に楽しめなかったからな。今日は思う存分食べ尽くしてやろう。
「いやいや、これが意外と塩漬けにして干すとイケるんだって!めっちゃ美味しくはないけど、食べられるようにした俺凄くね?」
最近配信外で虚無バナナをどうにかして美味しく食べられないかずっと頑張っていたのだ。これがその研究結果。干すことで気持ち程度甘みが出てきて、ごくわずか飲み込みやすくなるのだ。さらに軽く塩漬けにしたことで、最初の方は噛んでいて飽きがこない。
まあこれだけ加工しても、ずっと噛んでいると次第に味が無くなって虚無顔にはなってしまうのだが…そこはこれからの研究に期待だ。
「…まあ良いですわ。あなたには期待してなかったので」
「おい!」
トリカは俺の研究結果が気に入らなかったようだ。結構頑張ったのに…
トリカはセリの方に目線を向け、話を促す。
「僕?僕はねえ…ガチャ芋っていうのを持ってきたよ!解析によると、どんな味になるかは焼いてからのお楽しみだって。なんだか面白そうじゃない?」
セリは目をキラキラさせながら答え、人数分のガチャ芋を焚き火に入れて焼いていく。
コイツは一日中ゲームばかりしているが、一日一回くらいは気晴らしに散歩に出かける。散歩に行くと頭がスッキリしてゲームをより楽しめるらしい。おそらくそのときにでもこのガチャ芋を見つけたのだろう。
>ガチャ芋…ああ、あれね
>ガチャ芋嫌い。だって、ハズレしかでないから
>当たったことある人見たこと無い
>ほんとに極稀に極上の美味しさの芋がでるらしいけど…私は信じてない
視聴者にはガチャ芋で痛い目にあった人が結構いるようだ。
ちなみに、俺も何度も痛い目にあっている。
ガチャ芋かあ…それがこの惑星にもあったのか…
このガチャ芋、味にかなりのランダム性があり、しかも焼くまでどんな味になるのかがわからないという不思議な品種なのだ。だから、ガチャ芋と呼ばれている。
そうやってランダム性を楽しまれているガチャ芋だが、厄介なことに、このガチャ芋、美味しい味になる確率が相当低いのだ。ガチャで例えると、最高に美味しい味のURはほぼ出ず、基本的に美味しくないCばかり出る。
俺も一度一本だけ取り寄せて食べてみたことがある。その時の結果はコモン。その結果に俺はムキになって、勢いでガチャ芋を100個買い、100連ガチャにチャレンジしてみたが、九割以上コモンとレアだった。
コモンだと美味しくなくて、レアだとちょっと気持ち程度美味しくなったか?というような味だった。三回だけSRがでて、それはまあまあ美味しかった。ただ、百回やったのにURは出なかった。
このガチャ、封入率どうなってるんだよ!?悪意を感じるぞ!
やはり、ガチャという文化は危険だ。ガチャをやっているときは自分が自分でなくなってしまう。自分を止められない。良いのが出るまで何度も何度もチャレンジしたくなってしまう、ある種の中毒性がある。だから、俺はもうこの芋には手を出さないと決めたのだが…まさかこの惑星でコイツと相まみえるとは思わなかった。
せっかくだし一回だけ、一回くらいならガチャを楽しんでもいいよな?
次回予告:破滅の始まり




