井戸制作!とにかく掘れ!
読んでいて少しでも感情が動いたら、評価・リアクション・ブックマークをお願いします。
「そんな話はどうでも良くて!いつまでもオーバーテクノロジーに頼ってるようじゃダメだから、これからはどんどん暮らしをダウングレードしていきたいんだよ。ということで、風呂のために、井戸づくりをぱぱっとしていくぞ!」
>普通生活を便利にしていくものなのに…酔狂だなあ
>でも最近は原始的な生活が楽しそうに見えてきた。私疲れてるのかな…
>うん。確実に疲れてるな。病院へ行くことをおすすめする。原始的な生活なんて馬鹿な男くらいしかしないよ
>〇〇←ここの精神科オヌヌメ。ここ、極稀に男が来ることがある
ほんとコイツラ…まあいい。こいつらはほっといて井戸づくりを始めよう。
解析によると、ここらへん一帯は地下水が豊富な土地だ。深く掘る必要はあるが、わりとどこを掘っても水自体は出てくる。
「さて、このドリルでまずは適当に深く穴を掘っていきますか」
俺はドリルを地面にぶっ刺し、ぐるぐるとネジを巻くように手動で回していく。
うん、ヨヒラが作ったからか、力を入れやすく使いやすい。がんがん掘れていく。
そして、ドリルで掘ったその穴をスコップで広げていく。
>ドリルってそう使うんだな
>原始的ぃ!←これ流行らせたい
>これも根気とパワーが必要そうだなあ
いや、この作業、見た目ほど力はいらない。道具が優秀だからだろう。まあ、この感じだと根気は必要そうだが…筋トレと思って頑張ろう。
スコップで穴を俺の体が入るくらいのサイズまで広げる。ある程度広げ終えると、掘った穴に体をねじ込んで、ドリルで更に深くどんどん掘っていく。そしてその穴をスコップで広げていく…これの繰り返しだ。
「おおー深くまで来ると周りが真っ暗!配信は見えてる?」
>大丈夫だよ
>相変わらず見やすいような画角だし、暗さもしっかり補正されて配信されてるよ
うむ。いつものごとく自動的に配信の画角は特殊な状況にも関わらず上手いこと撮影してくれているようだ。ありがたい。
「なら良かった、どんどん掘っていくぞ!あ、多分この作業かなり時間がかかるから、あとでチップさんに頼んでカット編集を多用した版を動画にするからね。一応配信はつけたまんまで作業するけど、見てて面白くないだろうから、まあ…ウツギの配信でも見て暇を潰しといてくれ」
>了解
>もうすでに二窓しながら見てるよ
>動画にしてくれるのありがたい
>私は男の筋肉をどれだけ見ても飽きない猛者だからずっと見てるよ
まあ、いろいろな人が居るよな。各々好きな方法で楽しんでくれ。
そうして俺は穴を掘り続けた。
一日では終わらなかったので、一旦配信を終了。
次の日。また同じ作業。
「お?なんか水が出てきたぞ?これはきたか?」
>とうとうきたああ!!
>長かったな
>でも、手動なことを考えると思ったより早いのかな?
>チョロチョロとした勢いだが、一応水は出てはいるな
「ここからもうちょっと掘ればもっと水が勢いよく出てくるだろ!よーし、あと一踏ん張りだ!」
そうしてここから悪戦苦闘しながら掘り続けること数時間、そこそこの勢いで水が出てくる深さまで掘ることが出来た。
>水の中に溺れながらも掘るとは思わなかった
>宇宙服着てまで穴を掘るの、見てて面白かったよ
>宇宙服パッツパツだから、体のラインが見えてとても眼福でした。
俺が宇宙服に着替えた理由は、途中から土が混じったドロドロの水中で穴を掘ることになったからだ。
この服は宇宙だろうが、水中だろうが、マグマの中だろうが問題なく過ごせるスグレモノで、宇宙船に乗るときは万が一の事故に備えてコレを着ることを推奨されている。
これだけ高性能なのに普段から宇宙服を着ない理由は、この宇宙服はいわゆる防御力特化のもので、普段使いには向かないこと、ピッチリした見た目の割に少しだけ体を動かしにくいこと、そしてなによりこの服は充電式で、SCエネルギーをかなり多く消費するからだ。
やっぱりなるべくならSCエネルギーを使わずに生活したい俺としては、宇宙服なんて着たくなかったのだが…流石に水中を普段着で作業するのは無理があった。時には割り切りも大事。
SCエネルギーを使わずに生活したいと言いつつ、実は普段着も超微量のSCエネルギーを消費しているのだが…そこは自分ルールでセーフとしている。なにせ、超微量だし。
「まだまだ浅い井戸だけど、これ以上この道具で掘るのはしんどい!だから、穴掘りはコレで終了。浅い井戸は飲み水には適さないらしいんだが、まあ風呂専用の井戸と考えよう!」
>人力でこれだけ掘れただけでも凄いよ
>私の体も穴を掘れば水が出てきますよ!私の体で井戸掘りしてみない?
>そこまでして風呂に入りたいの?
そこまでして入浴したいのか、だと!?おいおい。野暮なこと聞くなよ?コレだから現代人は…
ワイは転生こそしたが、今でも生粋の日本男児のつもりやで!だから、米と風呂への執着は人一倍あるんや!!
おっと、つい熱くなってエセ関西人のようになってしまった。失礼失礼。
俺が思うに、日本人というのは風呂と米さえ与えけおけば大体満足するコスパの良い種族なのだ。あ、個人的な意見だからな?真に受けるなよ?俺自身が米と風呂さえあれば満足できるってだけの話だ。
それにしても、米、どこかにねぇかなあ…ここらへんにはないんだよね。なんなら、醤油とか味噌とかも何処かから湧いて出てきてくれねぇかな…
なんだかそんなことを考えていたからか、煮物とか味噌汁とかを無性に食べたくなってきた。
まあ、現状どう考えても不可能なことなので、一旦その願望は忘れよう。それより、いまは井戸だ。こっちに集中しよう。
俺は穴から出る用の植物のツタを伝って地上に戻り、丸太で無理やり作った超簡易的なバケツをツタで括り、穴に向かって投げ入れる。
しばらくしてそれを持ち上げると…うん。しっかり水がすくえているな。成功だ。
「よーし!井戸の完成!」
>すくった水、泥水なんだけど良いの?
>そのクソ雑魚バケツのせいかもしれないけど、ほんのちょっとの量しか水がすくえてないけど…
>こいつ、また後先考えずに作ったな
>これ、なにかに使える?
うん、そうなのだ。簡易的な井戸は出来たものの、このままでは正直使い道がない。水は汚ぇし、入手できる水の量も少ないし…井戸としては欠陥だらけだ。
「ま、まあ人力で井戸が掘れたという事実だけで満足した!ほら!穴を掘れば水が出てくるんだぞ!感動しないか?あ、あとは!こういうのは結果より経験が大事なんだよ!!分かった!?」
>はぁ…
>大声で誤魔化すな
>今まで一体なんのために穴を掘っていたのか…
>わかりません!
「…えー。これだけ頑張ったのにまともに使えないのが嫌なので、ちょっとズルしたいと思います。お前ら!これから起こることについては見て見ぬふりをするように!いいな?」
>お、伝家の宝刀くるか?
>もはやお約束
>それなら最初からSCエネルギー使えば良いという正論は言わないでおこう
今からやることを察するのも禁止!!
ということで、SCエネルギー様!いい感じの井戸と、ついでにいい感じの木の浴槽も作ってください!よろしくお願いします!
俺はチップにアクセスし、SCエネルギーを利用する。すると、目の前の状況が瞬く間に変わっていく。
俺が作った井戸が、更に深く、更に使いやすく、更に完成度が高くアップデートされた。それと同時並行して、近くに完成度の高い浴槽も出来ていく。
SCエネルギーで作った井戸は俺のイメージが元になってるので、見た目こそ古いタイプの手押しポンプのようだが、見た目とは違い仕組みはとても高性能だ。
ポンプの押し具合によって水の出てくる量が自由自在。風呂のように沢山の水が必要な場合でも、高度な技術によって超圧縮した水を出すこともできるので、それを用いれば風呂に使うのも簡単。水の出てくる温度も自由自在だし、水のろ過までしてくれているので、飲料としても使えるようになった。
更に、排水機能も完備した丈夫で美しい木の浴槽まで瞬く間に完成した。うむ。木のいい匂いだ。
これだけの仕事を、ものの2秒もかからず作ってしまうSCエネルギーさん。やはり便利すぎる。今回は使ってしまったが、やはりこのエネルギーはあまり使わないに越したこと無いな。ズルすぎる。
「ということで、風呂と井戸が完成しました!拍手!あと、全て人力でつくった俺を褒めろ!」
>パチパチパチ
>SCエネルギーすげえええええ
>SCエネルギーさん天才!イケメン!
>まあおまえも努力だけは認めてやってもいい。結果こそ伴わないが
だから見て見ぬふりしろと何度も…まあいい。
「ということで今日の配信は終了します。よーし風呂に入るぞ!楽しみだな!」
>えっ、えっ。もう風呂に入るの?
>風呂に入るのなら配信終えないで!
>裸見せろ!
>そーだそーだ!
>お願いお願いお願いお願いお願い
「じゃあ、おつ~」
>終わらないで
>おつとは絶対に言わない
>配信続けたほうが良いですよ!
>全財産あげるからやめないで!!!!!
>くぁwせdrftgyふじこlp
視聴者の願いは叶わず、無慈悲にも配信終了。
これが実際の女に頼まれたのなら断れなかったかもしれないが、相手はコメントだ。ただの文字。これになら対抗できる。
さて、モテない女どもが俺の裸を見れなくて血涙を流している姿を想像しながら、風呂を楽しみますか~♪
次回予告:宴の始まりだ!




