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貞操逆転スペースファンタジースローライフ!?~男女比が1:10の宇宙で男に生まれた俺が、辺境の無人惑星でスローライフする姿を配信する  作者: ながつき おつ
5章 幻の惑星、ジ・アース!

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閑話休題!アンドロイドの胸の内 

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ヨヒラ視点 


 秋の風が冷たさを帯び、木々の葉が色づきはじめる今日このごろ。


 こちらの惑星では、夜空に澄んだ星々が瞬き、秋の虫たちの声が静かに響きわたります。


 皆様、御機嫌よう。アンドロイドのヨヒラです。


 最近はどうも、ぼーっとすることが多い。今まではそんなことはなかったのですが……秋だからでしょうか?それとも、今の私には、そういう時間が必要なのでしょうか?


 夜空に溶けるように白く光るあの衛星を眺めながら、ただただぼんやりと時間を過ごす。御主人様が成長するのと比例するように、こんな時間が増えていっている気がします。


「…アンドロイド流武術にでも取り組んでみましょうか」


 こういうときは体を動かすに限りますね。


 様々なアンドロイドがいますが、私の場合、アンドロイド流武術の修行をすると、頭がスッキリします。


 あまり魅力を感じない武術。

 武術としては、得るものが少ない。


 今まであの武術について、その程度の認識しかありませんでした。


 ただ、御主人様を見ていると――もう一度私もアンドロイド流武術に本気で向き合ってみたい。そう思わされるのです。



 私はトレーニングルームに入り、滝行に取り組む。そして、滝に打たれながらゆっくり自分の思考を深める。


 議題一。


【なぜ私は御主人様との暮らしで、女としての隙をあえて晒したのか】


 御主人様とのシェアハウス生活を振り返ると、自らの意思で、わざと小さな隙を残したまま過ごしていた気がします。それが、とても楽しくて――でも、なぜあれが楽しかったのでしょうか。


 …まあ、再度深く考えるまでありませんね。


 少し隙を見せるだけで、御主人様が私に告白してくれるのが楽しかったのです。異性としての魅力をさりげなく見せて、反応を見て楽しんでいた。簡単に誘導されてくれる御主人様が愛おしくて、心地よくて…


「どうも私は愛されることを求めているようです」


 これは私だからなのでしょうか?それとも、アンドロイドという存在が「愛されるのが好き」な性質でもあるのでしょうか?それとも、御主人様にだからこそ、愛されるのが嬉しいのでしょうか?


 アンドロイドが「愛されることが好き」というのは、あまり聞いたことがありません。どちらかと言えば、人間を愛する方が好きというイメージがあります。


 それだけで考えれば、“私”として愛してくれるから嬉しい。“あなた”が愛してくれるから嬉しい。そう考えるのが自然でしょう。


「ただ、この正解としか思えないこの回答が、どうも引っかかる」


 おそらく、私は何かを見落としている。それが何かまでは分からないのが、とてももどかしい。


 …そうですね、今はこれ以上このことについて思考を深掘りできる気がしません。おそらく、この議題について考えるのに、必要なピースが揃いきっていないのでしょう。一旦保留としましょうか。



 議題二。


【人間とアンドロイドがお互い本気で戦争したら、どっちが勝つと思う?】


 これは、お祖母様がよく言っている言葉です。


 お祖母様はその人の考えを知るために、この問いをいろいろなアンドロイドに聞いています。どうもこの問いの答えによって、そのアンドロイドの人となりを大まかに理解できるとお祖母様は考えているようなのです。


 私が聞かれた場合、今までは「もちろん、アンドロイドです」と即答していました。


 ですが、最近では不思議とその考えも変わってきました。


 勝つのはアンドロイドだと今でも思っています。人間とのスペックが違いすぎますし。


 ただ、最近は――


「不思議と今はアンドロイドと即答する気にはなれませんね」


 なぜ私はこのように考えが変わったのでしょうか?


 この惑星に来て、御主人様や他の人たちと関わりが増え、少し思考が柔らかくなったことが原因?それとも、御主人様の人間ではありえないほどの成長を見て、可能性を感じたから?それとも…


 これに関してはさっきとは違い、解決できる気がします。


 深く、とにかく深く思考します。私の脳のスペックをフル活用し、全身全霊で疑問を解消するのです。



 疑問解決の道中、ふと私は、今まであまり本気で思考をしたことがなかったことに気がついた。大体の答えは少し考えれば導けてしまうので、こんなに考える機会なんてなかったのです。


 …深く思考するのって、意外と楽しいですね。これは新発見です。



 さて、楽しいことを続けましょう。


 そもそも「勝ち」とは?本当に勝ち負けだけなのか?なぜ戦うのか?人間とアンドロイドの違いは?人間がアンドロイドより勝っているところは?御主人様が私に与えた影響はどんなもの?戦争ではどんな過程が予想される?私ならどう戦う?他のアンドロイドはどう戦う?そもそも、この答えに正解はある?もしアンドロイドが勝ったら未来はどうなる?……



――考え続けていると、いつの間にか滝行は終了していた。


「…なるほど。要は、私も成長しているということですね。成長すれば、意見だって変わる。ただそれだけのこと」 


 感情の理解度、人間の理解度、御主人様との関係。主にこれらの要素で、考えが少し変わったようです。成長を実感できるというのは、とても嬉しいですね。



「さて、次は魂咲(こんしょう)の行と参りますか」


 この修行は無音無光の空間にいることが苦ではない私にとって、そこまで難しいものではありませんでした。無音無光空間で、頭の引き出しにある動きをランダムになぞるだけ。たったそれだけの得るものの少ない修行。


 だから、あまり大した修行ではないと思い込んでいましたが…


 これも御主人様やトリカ様を見て考えが変わりました。


 御主人様たちは、当たり前のように修行をアレンジしました。実は私、そのことに内心でとても衝撃を受けていたのです。


 やはり、人間はアンドロイドより思考が柔らかいようです。今までやれと言われたからやっていただけの私や他のアンドロイドでは、修行のアレンジなど思いつきすらしないでしょうね。



 驚くことに、この修行はこの惑星に住む全員が真似をしています。


 セリ様はゲームの中で。

 トリカ様は滝行をアレンジし、歌手として上り詰めるため。

 ウツギ様は……無音無光空間で卑猥な絵を描くという謎の行動。これについては触れないでおきましょうか。


 特に驚いたのは御主人様とトリカ様ですね。

 

 御主人様は、無音無光に加え、高重力設定を加えた。

 トリカ様はあらゆる音を滝のように浴びる「音の滝」の滝行に変更した。


 なぜあのお二人は当たり前のように修行をアレンジする方法を思いつくのでしょうか?


 人間だから?


 …いや、そう安易に決めつけるのはあまり好きではない。人間にできることは、絶対にアンドロイドである私にもできる。それが私のポリシー。私のこだわり。私のプライド。


「私は、人間に負けたくない――?」


 体の奥から言葉が湧き上がってきた。そして、その言葉を自分の耳で聞いた瞬間、はっきりと理解した。これが、私の中にずっとあった“芯”だったのだと。今までぼやけていた認識が、ようやく明確化した。


 …なるほど、これが自己理解というやつですか。御主人様に教えておいて、今更私がそんなことに気づくとは…


 私は人間に負けたくない。全てにおいて、どの要素だって負けるつもりは微塵もない。


 …ふふっ、面白い、やってみせましょう。私にだって、修行のアレンジくらいできるはずだ。


 アンドロイドは何かを生み出すのが苦手?関係ありませんね。


「私は全てにおいて、人間を超える」


 

――胸の奥から燃えるようにやる気がみなぎってきた。いつもは感じない、不思議な感覚だ。


「さて、どんな修行にしましょうかね……」


 人間よりスペックの高いアンドロイドなら、御主人様やトリカ様がやった修行より、もっと過酷なものでも余裕なはずです。


 ひとまず、これから滝行をするときは、あらゆる音も滝に混ぜてみましょうか。私は歌姫であるトリカ様にも負けるつもりはありませんので、もちろんトリカ様がやっていたよりハードになるように。たとえ脳が焼けるほどの情報量になったとて、私なら耐えられるはず。


 魂咲の行に関しては、もちろん無音無光でかつ、ランダムな方向に高重力化設定を施し、さらに低酸素、気温変化なども加えましょうか。これをやり遂げれば、最低限御主人様は超えられる。


 そして、さらになにか思いつけば、その都度枷を加えていきましょう。そうですね……まずは、ナノマシンをフル活用して、この惑星で起こっている全てを見通しながら修行しましょうか。


 このようにずっと続けていれば、勝手にオリジナリティのある修行になっていくことでしょう。


 

 この修行を行えば、私ももっと成長できるでしょうか。


 …いえ、弱気になるのは駄目ですね。信じましょう。アンドロイドのスペックを。


「では、アンドロイド流武術・魂咲の行改をスタートしましょう」


 私はハードな設定の部屋で、今まで学んできたスキルの一つ一つをなぞるように体を動かします。


 …きつい。今までより格段にきつい。


 ですが、これくらい軽く乗り越えてやります。それができてこそのアンドロイドです。


 これができれば、次はもっともっとハードにアレンジして……そうして、誰よりも成長してやるのです。



 そんな決意と共に、胸の奥で、確実に何かが熱を帯びた。


 そして気づけば、私の口からこんな言葉がこぼれていた。


「ふふ、もっと突出した個となろう。そうして、アンドロイド界を上り詰めてみましょうかね」



――このとき、私の心臓がドクンと大きく脈打った。


 何かはわかりませんが、今なにかが大きく変わった。そんな気がします。


 では、私は修行を続けます。


 皆様、ごきげんよう。



 ……ヨヒラ自身はまだ気がついていないが、このときのヨヒラのボディは、ヒノキのスター状態のように――いや、もっと力強く光り輝いていた。


次回予告:心のリミッター

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