全員集合!5章最終話!
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「久しぶりの我が家だ!」
俺はオネムなクスネを抱えながらウツギの家から自分の家に戻った。
ここへ戻るのは約一ヶ月ぶりだ。
掃除を怠っていたので、扉を開けただけで少しほこりが舞っている。掃除しなきゃな。
クスネを寝かせ、軽く掃除をしながら寝る前のひとときを過ごしていると、途端に寂しさが込み上げてきた。
この一ヶ月、ずっと誰かと過ごしてきたもんな。今まで一人でも大丈夫だったんだがなあ…
「さて、軽く掃除も終わったし、寝るか!……と思ったが、そうだった。忘れてた」
今日はルリさんと俺の母との話し合いの日だ。寝る寸前で思い出せて良かった。
今は無性に寂しいので、母やルリさんと会えるのがありがたい。
今日は俺に施したチップのアップデートをどうやって作ったのかを聞きたいな。そういえば聞いてなかったし。
じゃ、早速いつも通り。
「我に選ばれし魂よ。会合せよ。零地点へ!」
【合言葉を承認しました。次元跳躍を開始します】
――この日、少しイレギュラーなことが起こった。
もちろんしっかり偽装工作をしたし、合言葉も間違っていない。いつもと何も変わらなく、ただ偽装工作が切れる五分間だけ秘密の会議をする予定だった。
それなのにも関わらず……
「やっほー、ヒノキ。待ってたよ」
「わたくしたちに隠し事ができると思って?」
「ふふん!場所の座標さえ分かれば、うちのテレポートならこんなところだって来れるのよ!」
「さあ、追い詰めましたよ。私のお母様と何をしていたのか……白状してもらいましょうか?」
なぜかすでにこのコックピットにセリ、トリカ、ウツギ、ヨヒラがいたのだ。
…え?なんで?
俺と同時にやってきた俺の母とルリさんも呆気に取られている。
「あらら、バレちゃったのね……じゃあ、これからあなたたちに秘密にする必要もなくなったし、私の作った偽装工作の五分という縛りはなくなるわ!今からいっぱい話しましょう!」
誰よりも早く現状を理解した母は、早速頭を切り替えている様子だ。
…よくそんなに早く切り替えられるな。
「えっ、えっ?なんでここに集まってるって分かったの?というか、ええ……?」
俺なんてこんな感じでまだ頭が追いついていないんだが?多分ルリさんも茫然自失としているし、俺と同じ気持ちだろう。色々説明してくれ!
――そこからネタばらしが始まった。
「御主人様が何か隠し事をしていたということは、すぐに気が付きました。」
最初はヨヒラが代表して口を開いた。きっかけは俺らしい。
それから、みんなで一丸となって俺の隠し事をこっそり暴こうと企てた。ただ、今回の秘密に関しては何か不思議な力が関わっていて、一筋縄ではいかないと早い段階で気付いたらしい。
「そのため我々が最初にしたことは、仮説を立てることでした」
仮説を立てるために、今月はずっと俺の行動、言動を念入りに監視していたらしい。ヨヒラは俺の一挙手一投足を分析し、大量の仮説を立てた。ありえないようなものから、しょうもないものまで、考えられるものはとにかく大量に羅列していったらしい。
ヨヒラの仕事はここまで。
「次は僕の番だね。僕はその大量の仮説の中から、直感で絶対に違うものを弾いていった。あと、ヒノキが寝る前に何かしてるって見抜いたのも僕だね」
「あら?セリちゃんには偽装工作は効かなかったの?」
「ううん。しっかりヒノキは寝ているだけにしか見えなかったよ?でも、僕は不思議と分かっちゃうんだ。寝ているヒノキを見て、『ここにヒノキはいない』ってね」
どうもセリはその類稀なる直感で、秘密を暴いていたらしい。
「ヒノキがここにいないって分かったから、僕はひのきに縁結びのきのみを渡したんだよ?」
「あっ…」
俺は胸に掲げていた縁結びのきのみ入りのアクセサリーを握りしめた。
そうか、あれによって大体の俺の位置を図ろうとしていたのか。俺は秘密の話し合いに行くときでも、常に肌身離さず身につけていた。それが仇となったようだ。
セリの仕事はここまで。
「そこからはわたくしの出番ですわね。あなたの位置を探るために、セリのきのみを借り、わたくしの宇宙船で宇宙を移動していきました。そして、きのみの反応を逐一見ながら、大体の位置を計算、特定しました」
あのきのみはどこに居てもお互いに引き合う性質がある。トリカは羅針盤のようにきのみを使い、宇宙から俺の大体の位置を特定したってわけか。
「惑星の中心辺りにいると大まかに分かってからのアプローチとしては、あなたが以前言っていた『なんでこの惑星の中心の核部分が“空洞”になっているんだろうな?』と発言したときの視線の動きを分析し、その空洞とやらの詳細な座標を特定したの」
うへー。そっか。あのときのこともしっかり覚えていたのか。
トリカの仕事はここまで。
「そして最後はうち。トリカから大体の座標が送られてきたから、そこを目星にして具体的な位置を探し当てたの。うちの得意なサイキックを使ってね。あなたが集合しているであろう日の夜に、サイキックでこの辺り一体の空間を把握して、生命反応を探していったの」
サイキックは空間に作用する技術だ。しかもウツギはサイキックのプロフェッショナル。そんなウツギだからこそ、惑星の中心なんて辺鄙な場所にいる俺を探し当てられたのだろう。
「最近のあなたは生命力が増しているから、すぐに見つかったわ。あとはテレポートでみんなをここに連れてきて、先回りしておいたってわけ!」
「なるほど……少ないヒントでここまでするなんて……みんなすごいわ!息子の嫁にするのがもったいないわね!」
説明を聞き終え、母がテンション高く騒ぐ。しれっと全員俺の嫁にされている。
だからさあ……ま、今はいいか。
「…そう。バレちゃったのね……」
ここで初めてルリさんが口を開いた。ショックからまだ立ち直っていない様子が見て取れる。
「お母様。お母様が何か重大な秘密を持っていて、それでもなお一人で何かをやり遂げようとしていることは知っています」
「……」
ルリさんは黙ったまま。そんなルリさんに向かって、続けてヨヒラが懇願するように語りかける。
「わがままを言うならば、私は、お母様の目的達成のお手伝いがしたい。どうか、私たちを頼ってはいただけないでしょうか?」
ヨヒラが頭を下げた。
それに追撃するように、他のみんなもルリさんに声をかける。
「そう!ヒノキなんて頼りないでしょ?わたくしたちも仲間に入れるほうが目的達成にはいいのではなくて?」
「うちも仲間に入れてよね!というか、何が何でも入れてもらうわ!絶対に楽しそうだもの!」
「僕はヒノキが変なことに巻き込まれてなきゃ、何でもいい。でも、ヒノキのことは全て知りたいから、僕も仲間に入れて?」
そんなみんなの言葉を聞き、ルリさんがこめかみを揉むような仕草を見せた。
そして、少しの沈黙の後、ようやくルリさんが口を開いた。
「……仕方ないわね。でも、絶対にここでしか私の目的やある秘密をしゃべってはだめよ?みんな約束できる?」
「「「もちろん!!!」」」
で、ここからどうなったのかと言うと――
◆
そんなことがあった次の日。俺はアンドロイド流武術の修行をしていた。
「なんだか、気持ちが軽い。秘密がなくなったからだろうな。親しい人に秘密を持つのって、俺にとってストレスだったんだなあ…」
やっぱり似合わないことをするもんじゃないな。
「よし!明日ぶっちゃけてみるか!」
うん、秘密にするのだるい!ヨヒラとウツギに前世のことを話そう。全てをさらけ出して人に認めてもらわなければ、俺は先に進めない気がする!もう全部ぶっちゃけよーっと!
ははっ、いざそう決めると、なんだか心の枷がなくなったかのようで、とても気分がいい。
今なら、どこまでも強くなれる気がする。今日はこの無音無光空間ですら心地良い。
体を動かしながら、みんなの顔を頭に浮かべる。今まで学んだことも、今まで臭いものに蓋をするように深く考えてこなかった俺の前世の人生も、全てを思い出す。
すると、修行中だというのに、思わず笑みがこぼれた。
「ふふっ、みんなと一緒なら、どこまでも成長できそうだ」
ドォン……!
……ん?
この無音無光空間で聞こえるはずのない音が聞こえてきた。低音で体に響く、地響きのような音だった。
俺は今、何をした?
無意識にやっていたので、はっきりとは覚えていないが……いま一瞬、すごい動きをしたような気がする。
音の発生源は、確実に自分だ。やったことと言えば、手のひらで空気を掌打しただけ。それだけで、あんな音がしたってことだよな?それも、音の一切響かないはずの無音無光の空間でだ。
「今のもう一回やりたい!」
さっきは無意識だった。あれができるようになれば、確実に俺の必殺技になる!
「えっと……さっきは感情と感覚、全てが一体になったような?全てがガッチリハマったような……俺の場合、前世のことも大事っぽいな。よし、とりあえず同じようにやってみよう!早く俺も天才の仲間入りしたい!」
ただ、先程できたのは偶然だったようだ。この日、それ以降はどれだけ頑張ろうと一切できなかった。
次回予告:閑話休題を4話はさみ、6章の始まり 6章:前世




