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貞操逆転スペースファンタジースローライフ!?~男女比が1:10の宇宙で男に生まれた俺が、辺境の無人惑星でスローライフする姿を配信する  作者: ながつき おつ
5章 幻の惑星、ジ・アース!

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最終一日!その2!意地と意地のぶつかり合い

読んでいて少しでも感情が動いたら、評価・リアクション・ブックマークをお願いします。



「なあ、そういやさあ」


「なによ?」


 俺はウツギの見ているニュース番組を隣で一緒に見ながら、そう問いかけた。


 ウツギはこの暇な時間に、宇宙の主要な事件などをチェックしながら、細々とした料理の仕込みをすることにしたようだ。今も隣でソファーに座りながら、サイキックを使い、遠隔でなにか調理のようなことをしている。


「ウツギが俺の母親から聞いた俺の攻略法ってどんなのがあったんだ?」


 俺がそう言うと、ウツギは少し悩み込んだ。


「…そうね。最終日だし、ちょっとだけなら教えてもいいかしら。あなたも自己理解が深まるだろうしね」


「おお!ありがたい!ずっと気になってたんだよ!」


 ほんと、俺の攻略法って何?


「でもねえ……ご厚意で教えてくれた情報を、全部話すのもなんか癪なのよ」


「ええ!教えてくれたっていいじゃん!意地悪しないで!」


「まあ、あなたの十の弱点――これは最低限、教えてあげてもいいわ。これに付随する話の方がおもしろかったし、これに関しては、教えてあげたほうがうちにもメリットがありそうだしね」


 …教えることでのウツギのメリットとやらがどういう意味かよく分からないが、もはや教えてもらえるならなんでもいい。


 そんなウツギは「でも…」と一呼吸置き、言葉を続ける。


「“息子攻略の方程式”と“百パーセント息子を落とせる禁断の技”。この二つは、どちらか一つしか教えないわ」


 俺攻略の方程式、俺を確実に落とす禁断の技。本当にそんなのがあるのか?


「さあ、どっちにする?」


 ウツギが意地悪そうに俺に問いかける。


 さて、方程式か、禁断の技か…


 てか、百パーセント息子を落とせる禁断の技って、胡散臭さが半端ないな。


 ただまあ、そういうのって妙に気になるというのも事実。


 …ま、悩んでも仕方ないか!こういうときは直感でいこう。



「俺の攻略の方程式を教えてくれ」


「ふぅん、それを選んだのね。あなたなら禁断の技を教えてって言うと思ってたけど……ま、いいわ。あなたを攻略するうえでの方程式、それはね…」


 ウツギはさっとテレポートで空中に書けるペンを持ってきて、こう表示した。


【尊敬×色気×母性×優しさ×時間(大なり)閾値(いきち)→息子は恋に落ちる】


 えっと……閾値(いきち)っていうのは、たしか一定数って意味だよな?


 だから、あの式の意味は、俺が異性に求める五つの要素をかけ合わせ、それが一定の値を超えると、俺はその人のことが好きになるってことかな。


 こう示されると、思うところはかなりある。母の見立てはかなり正確そうだ。



「これを意識して、うちはあなたとの時間をなるべく長く過ごせるように意識してたのよ。だって、うちに足りないものって、時間の値だけでしょ?」


「え?」


 母性、優しさ……?


「なによ?文句ある?」


「イエ、ナンデモナイデス」


「…まあいいわ」


 確かに、俺たちは寝る時間以外はほぼずっと一緒にいた。そのおかげか、もはや俺たちの息はぴったりだ。


 それに、濃密な時間を共に過ごしたことで、今までより俺たちの距離はかなり縮まったことも事実だ。



「じゃ、次に禁断の技とやらも教えて?」


 この流れで、俺はしれっと質問してみた。


「禁断の技っていうのは、言い換えるとあなたが真に弱いもの……って、なに流れで言わそうとしてるのよ!言わないわよ!」


 ちっ、ノリで行けるかと思ったんだが……



「さて、じゃあ次に十の弱点を教えるわ」


 ウツギはそう言うと、テレポートでホワイトボードを持ってきた。


 そこには、箇条書きで俺の弱点が羅列してあった。


――――――


・マザコンだから、母性に弱い。おっぱいに弱い。乳離れも遅かった。おっぱいさえさらし出しとけば、いずれ勝手に惚れる。


・かっこつけだから、頼られるのに弱い。


・犬みたいな性質があるから、香りに弱い。


・バカで単純だから、自分で口に出したり行動したことを、後付けで理由をつけてしまう。とにかく褒め言葉を口に出させたり、頼み事をされたりすると、勝手に「自分はこの人のことが好きだから行動した」と勘違いする。


・寂しがりやだから、スキンシップに弱い。


・ヘタレだから、強引に攻めるのがいい。


・女に夢見がちだから、女らしい仕草などに弱い。例えば、髪をかき上げるなど。


・自己評価がそこまで高くないから、努力する女の子に弱い。努力する女の子がふとしたときに見せる自然体にも弱い。


・女に甘いから、加点方式で女を評価してしまう。極論ずっと一緒にいれば勝手に好きになる。


・魂に童貞根性が染み付いているから、単純な色気に弱い。目と目が合うだけで勝手に人を好きになるほど。けれど、それは息子自身も一番よく分かっているから、チョロいくせに色気だけでは人を好きにならない。それでも色気に弱いことには変わりない。


――――――


「ねえ!?最初の〇〇だからって文言いらなくない!?全部悪口じゃん!!」


「いや、うちに言われても…」


 ま、そうだよな。すまん。


「で、こうやって羅列したのを見せてみたわけだけど、どう?思うところはある?」


「いや、まあ……うん」


 一理あるというか、耳が痛いというか、思い当たる節があるというか、図星を突かれたというか……あ、全部大体同じ意味か。


 これを見て思い出すのは、これまでのウツギの行動だ。今までよりやけに頼ってきたり、髪をかきあげる仕草が多かったり、やけに何度も目が合ったりした覚えはある。


 …そっか、あれは明確なアプローチだったのか。


 そう自覚すると、単純な俺は途端にドキドキしだした。顔がカッと赤くなる。

 

 そんな俺を見て、ウツギはニヤニヤと笑う。手のひらで踊らされているようで、少し悔しい。



「これと時間を意識してこの一週間あなたと過ごしてみたけど、大体合ってるわよね?だって、明らかにあんた、うちのことを意識する時間と回数が増えているもの」


「ソ、ソンナコトナイヨー」


 あくまで過ごす時間が長かったからウツギのことを考える時間と回数が多くなっただけで、別にウツギのことが好きになったんじゃないんだからね!


 …まあ、ぶっちゃけこの一週間、俺は意地だけで乗り切っていた。好きとか嫌いとか、絶対に意識しないようにしていたからなあ…


 こんな男女比が偏った宇宙だからこそ、誠実であることは大事だ。少なくとも俺はそう考えている。


 これだけされてもウツギの誘惑から耐えられたのは、ある意味一番の「修行の成果」と言ってもいいかもしれないな。



――楽しい時間はあっという間、二人でだべっていると、いつの間にかもう帰る時間だ。


 俺はクスネを担ぎ、玄関を出た。すると、ウツギもついてきた。お見送りしてくれるようだ。


「お見送りありがと!ウツギのおかげで、俺はいっぱい成長できたよ」


「そう。それなら良かったわ」


 ウツギとの修行の日々はかなり俺の糧となっているだろう。本当にたくさんのことをウツギから学ばせてもらったもん。


「そう清々しい顔で帰られると、ちょっとムカつくわね…」


「ええ……なんて理不尽な…」

  

 そりゃ、今の俺には達成感があるからな。清々しい気分にもなるってものだ。


「そうね、結局あなたはうちに手を出さなかったし、成長もしたし……目標を達成したものね。でもね、うちには百パーセントあなたを落とす禁断の技もあるんだからね。油断してると痛い目見るわよ?」


 ってことは、この生活でウツギはその禁断の技を使わなかったんだな。


「いやいや、なんだかんだこの一週間で俺はウツギに手を出さなかったんだから、これからもいけるいける!」


「…それは、シェアハウス中はうちから手を出さないって約束させられたからよ。その縛りさえなければ、今頃あなたとうちはズブズブの関係よ?流石に自信があるわ」


「また“もしも”の話をされてもな」


「あら?この七日間で何度もいい雰囲気になったことは事実よ。あとちょっとうちが押せば、すぐに流されそうな空気だったじゃない。明らかにうちにメロメロで、意地だけで耐えてたくせに…」


「うぐっ」


 そりゃ、寝るとき以外はずっと一緒にいたし、ウツギから期待した眼差しで見られ続けていたし……そんなことされれば、たまにそういう雰囲気になることも仕方なくない?


 大事なのは、それでも決して手を出さないことだから。


 …まあ、そんな時に、もしウツギから手を出してきて、抵抗できたかというと……うん、考えるのはやめておこう。それこそもしもの話だ。


「さて、そろそろ本当に帰るわ。じゃあな!楽しかったぞ!」


 なんだか、このままだといつまでもだべっていそうだ。だから、俺は少し強引に気持ちを断ち切り、この場から立ち去ることにした。


「またいつでも遊びに泊まりに来なさいよ!絶対ね!」


「おう!あ、そうだ。そういえばこれは言ってなかったな」


 振り返り、言い捨てるようにこう叫ぶ。


「今後も手は出さないだろうけど、それでも俺はウツギのこと大好きだぞ!じゃあな!」


 月明かりがやけに澄んで見えるこの夜空に、俺の言葉がこだまする。

 

 どうも、最後の最後で気が緩んだ。好きとか嫌いとか、絶対に意識しないように今まで過ごしていたのに…


 俺は背中で軽く手を上げ、この場から逃げるように走り出した。


 星々は俺たちを祝福するように煌めいていた。



――残されたウツギは、ヒノキの母から聞いた禁断の技について思い出していた。


『息子が何より弱いのは、本気で自分に恋する女性よ!だから、ウツギちゃんが本気で恋すれば、息子は必ず答えるはず。頑張ってね!』


「そうならないように、こっちは歯を食いしばって頑張ってるってのに……ホント、ムカつく男だわ」


 ウツギは慣れた手つきで、勝手に早鐘のを打つように脈打つ自身の心臓を、テレキネシスで強引に鎮めたのだった。


次回予告:裏で暗躍する女性たち

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