実践練習!ガチバトル!
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その後俺たちはクローン人形に意識を入れ、準備万端だ。
「じゃ、合図はうちが言うわよ。バトルスタート!」
その合図と同時に、俺は後方へダッシュした。
>え?
>敵前逃亡?
そう。今回の作戦は、【時間いっぱいまで逃げに徹する作戦】
闘技場での戦いとは違い、時間制限があるのでこの作戦をとった。引き分け狙いのせせこましい作戦だ。
>いや、サイキッカー相手にそんなことしても…
>ウツギはテレポート持ちだぞ?
後方にダッシュで逃げた俺の目の前に、ウツギがテレポートでやってきて、俺に超威力テーザー銃の銃口を向けた。
「サイキッカーからは逃げられないわよ!くらいなさい!」
ウツギはガンガン銃を撃ってくる。
…大丈夫。この程度は想定済みだ。俺なら銃くらい避けられるはず!
(ラジオ体操第五十二。敵が撃つタキオンマシンガンの弾を全てギリギリで避ける時の運動!)
俺は細かくステップを踏みながら上半身を揺らし、全てを躱していく。こういう時を想定してオリジナルのラジオ体操をしていたのだ。この程度できなきゃ、ウツギと戦おうとは思わない。
それに、ウツギは銃を牽制や様子見の時に使う傾向があることは知っている。だから、おそらくここからが本番だ。
「テレキネシス」
きた!ウツギの真骨頂のサイキック。これが厄介だ。
でも、サイキック対策もイメトレ済み。
サイキックというのは、言ってみればただの中距離攻撃。たとえ俺に攻撃の導線が見えなくても、不可避ではない。しっかり理論があり、無敵の技術ではないのだ。それに…
(目の機能を強化――よし、ほんのり見える!)
サイキックというのは、空間に作用する技術だ。目を強化、そして解析すれば、空間の歪みを確認することができる。
ただ、ウツギのサイキックは練度が高いので、ほんの僅かにしか空間が歪まない。それに、攻撃が相当速い。空間の僅かな歪みを視認しつつ、すべてを避けるには、かなりの集中力が必要だ。
(ラジオ体操第六十七。地雷を踏み、爆風を突っ切るときの運動!ラジオ体操第十七。伝説の獣、雷獣のものまね運動!)
まずは、爆速スタートダッシュの連続だ。次に、四足歩行になり、ジグザクかつ不規則に動いていく。
四つん這いになることで、的を小さくし、さらに手の力を込めることで機動力を上げるのが狙いだ。
このように動くことで、ウツギのテレキネシスをかわすことに成功した。
>おおー!
>ヒノキ、やるじゃん。逃げてばっかだけどwww
>ヒノキの動きが人間離れしてて草なんだが
さて、ここまでは及第点。
だが、俺はもう息つく暇もないのに対し、ウツギはまだまだ余力を残している。
俺、あと何分持つかなあ……
「ふふ、これで終わりよ。テレキネシス。パイロキネシス。テレポート」
俺に向かってくる三種の攻撃に軽く絶望しながら、どう対処するか反射的に考える。
ウツギは今までの攻撃全てを同時並行で行うことができる。
テレポートによる銃の攻撃、視認しにくいテレキネシスの攻撃、そして、ものすごく派手で目の引く、パイロキネシスの炎攻撃。
これが組み合わさると、もう俺ではすべて避けるのなんて不可能だ。体も脳も、今の俺では処理速度が足りない。
だから、ここからはある程度被弾覚悟で挑む。
この中で一番喰らいたくないのがテーザー銃だ。あれの貫通力は凄まじく、当たりどころが悪ければ即死だろう。
ただまあ、かするくらいならまあ大丈夫だ。そこがえぐれるだけで、致命傷にはならない。
次に喰らいたくないのがテレキネシス。あれの威力はそこまでではないが、喰らえば動きが遅くなって、その他の攻撃を避けられなくなる。
だから、現状ではパイロキネシスに被弾するのが一番被害が少ない。
ということで、俺は空間の歪みに気をつけつつ、銃をギリギリで躱し、炎に向かって突っ込んでいく。
「うおおおおお!!」
俺は炎に向かって全力でパンチ。風圧で炎を消し、少しでも被害を少なくするように調整する。
あちち、あっつい!痛い!痛すぎる!この方法、そう何度もできるものじゃない!
【クローン人形崩壊まで、残り一分です】
脳内にアナウンスが流れる。
…残り六十秒もあるのか。これはなかなか大変だぞ。
「なかなかやるじゃない。時間もないことだし、そろそろうちも本気でいかせてもらうわ」
あれが来る!
「――深淵からいずる漆黒の炎よ。唸り、轟き、花開け!すべてを燃やし尽くして、勝利の花道を示しなさい――」
ウツギのパイロキネシスの炎が、黒炎の花が咲くように変化していく――
ゴクリとつばを飲んだ。
触れてもないのに、肌がチリチリする。脳内であの炎は危険だと警鐘がガンガンなっている。
実際に対面すると直感的に分かる。あれに少しでも触れるだけで、一瞬で俺は灰になるだろう。
あれには、小指の先も当たってはいけない。完璧に避けないと負ける!
「うぐっ!」
その時、俺の体にものすごい圧力がかかった。
これは……テレキネシス?
なんでだ!?空間の歪みにはかなり気をつけていたはずだが!?
「ふふふ、残念だったわね。空間の歪みからテレキネシスを回避していたようだけど、この黒炎には、空間をめちゃくちゃにする熱量があるの。こうなった以上、もはやテレキネシスは不可視になるのよ」
「……なるほど。これは、詰んだか?」
脳内でイメージトレーニングはかなりしたんだが……やっぱり想像と実戦は違うなあ…
>きた。ウツギの必勝パターン
>あ、終わった
>こうなったらもうウツギの勝ちだな。風呂入ってくる
>闘技場でトドメを刺すときによく見たシーンだ
「あなたにしてはよく頑張ったけど、まだうちには勝てないわ。じゃ、さようなら」
ウツギが俺に向かって龍をかたどった黒炎を向かわせてくる。
どーん!!!!
この場に砂と煙が混じった、ものすごい煙が吹き荒れる。
そして、煙が消えると――
この場に俺の姿はなかった。
「どうやら灰になるまで燃え尽きたようね……あら?勝利アナウンスが流れないわね?そう設定したはずだけど……どういうこと?」
さん、にい、いち……
終了!
【勝敗:Draw】
クローンが崩れ、意識が元の体に戻っていく――
「よし、これでしっかり引き分けだな!一勝一分けで俺の勝ち!」
元の体に戻ってきた俺は、ウツギに対しそう勝ち誇った。
「ええ!どうしてよ!?あの黒炎を喰らって無事なわけないわ!」
「だって、喰らってないもん」
「…は?」
>ウツギ、油断したなwww
>じゃ、さようなら(喰らっていない)
>決め台詞まで言ったのに、当たってないやつwww
ま、種明かしすると簡単だ。
ウツギのテレキネシスを、筋肉で強引にねじ伏せて、無理やり回避しただけだ。
俺はいつも高重力下でトレーニングしているので、その状態でも割と動けるんだよね。「詰んだか?」と言ってたときは、動けないフリをしていただけだ。それに、スター状態だとサイキックの効きが悪いから、それも原因の一つだろう。
「やっぱ、最後に頼れるのは筋肉なんだよな!どんまいウツギ!これからも精進しろよ!」
ガハハ、煽れるときに煽るのは礼儀だから、俺はガンガン威張らせてもらおう。
「……もう一回!もう一回やるわよ!今度は最初から本気でやるから!」
「やだよ。そうされたら勝てないじゃん」
「ちょっと!なんでよ!」
>ウツギざっこwww
>ヒノキ程度に勝てないとか、マ???
>黒炎のサイキッカーさんwww
「もう!そもそも逃げるなんて卑怯よ!それに、闘技場での戦いなら絶対勝ってたわ!」
「はいはい。言い訳乙。ベロベロバー」
「もう一回、もう一回よ!」
「ま、今回は何戦でもやるんだけどな」
「……へ?」
俺からまた勝ち逃げされると思っていたウツギは、俺の返答にしばらくの間の抜けた顔を晒した。フレーメン反応をしている時の猫みたいだ。
「俺の目的は、一回だけでもウツギに吠え面をかかせることだったからな。目的は達成したんだよ。それに、もう勝ち逃げとかにはこだわってないしね」
>なんかヒノキが大人で草
>確かにちょっと大人になったが、一回吠え面をかかせるという大人気なさもあるなwww
>微妙に大人になりきれない男
「そう。そうなのね。ならいいわ。このクローンは一日に十回が限度だから、今日は十戦するわよ」
「りょうかーい。さて、今度は攻めも頑張ってみるか!」
――残りの九戦は、ゼロ勝、二分け、七敗という結果に終わった。
逃げに関しては一戦目の通り。攻めに関しては、ウツギに一度たりとも攻撃を当てることができなかった。ウツギはもはや反射的にテレポートを使えるようで、緊急回避として使ってくるのがかなり厄介だったのだ。
まあでも、最初から本気のウツギにも二回引き分けられたので、まあまあ頑張ったのではないだろうか。
…ただ、後半の方には俺の動きを完全に攻略されて、逃げるのも攻めるのもまるで手も足も出なかったんだけどな。
ウツギって地味に分析力があるし、それを元にした戦闘構築力もあるからなあ…
「なるほど、あなたの今の実力はだいたい分かった。それに、今後の修行の方針も見えてきたわ」
「おっ、修行をつけてくれるのか!それは楽しみだな!」
ワクワク。闘技場上位ランカーの修行って、一体どんなものなのだろうか?
「じゃ、最初の修行は――妄想よ!」
「は?」
次回予告:私が来た!プラスウルトラ!




