居候生活!その2!お互いの目標!
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「おはようヒノキ!さあ、今日から居候としてうちの指示にはしっかり従ってもらうわよ!」
「おう、朝から元気だな。おはようウツギ」
しっかり寝て、今日も気分がいい。それに、人に起こされるのって、なんだかちょっと嬉しい。
「今日は……というより、この一週間は、うちとがんがん勝負してもらうわ!視聴者にうちがあなたより優れているってことを、この機会にしっかり見せつけてやるのよ!」
「えっと、勝負っていうのは、戦いみたいなこと?」
「全てにおいてよ。戦いも、スローライフの上手さも、人としての魅力も、なんだって競うつもりよ!」
なるほど。ウツギはそのつもりなのか。でも、これだけは言わせてくれ。スローライフに上手い下手はないぞ。強いて勝ち負けで表すなら、楽しんだもん勝ちってところかな。
…おっと、少し話がそれたな。今は競い合いのことだ。
今までだったらウツギとの勝負なんて絶対に勝てないので、やりたくなかったのだが……俺は強くなりたい。心も身体も。
だから、そろそろウツギにいろんなことで挑戦するのもいいかもしれないな。
それに、もう闘技場での勝ち逃げの件も、もはやどうでもよくなってきている。今の俺なら、闘技場でも多少なら戦えそうだし。
…これは、なかなかハリのある一週間になりそうだ。
「オッケー。でも、俺もウツギの強さの秘密とか、料理スキルとか、鍛冶とかを学びたいから、そこは忘れないでくれよな」
「…そうだったわね。まあ、うちのできる範囲でしっかり教えてあげるわ。うちもあなたと配信でコラボするだけで、もっと有名になれそうだし……お互いに実りのある一週間にしましょう」
お互いに実りのあるねえ……確かにそれが理想だが…
そのためには、ちょっと工夫が必要だ。
なぜなら、お互いの目標を叶えれば叶えるほど、相手の目標から遠ざかるからな。
俺は友情を育みたい。ウツギは女としての自信をつけたい。
この二つは、まるで二股に別れた道を進んでいくようで、交わることが難しい。
…ま、こういう時こそ妥協案だ。ウツギに女としての自信をつけてもらった上で、俺はしっかり線を引いて友情を育む。正直かなり難しそうだが、できるだけ頑張っていこう。
「さて、今日はどんな一日にする予定なんだ?一応居候だから、大体の指示は聞くぞ?」
「今、なんでも言うことを聞くって言ったわよね?」
「言ってねえよ」
「じゃ、じゃあね――」
ウツギの目が輝く。
…いや、聞けよ。なんでも言うことを聞くわけじゃないからな!一旦止まってくれ!
「毎朝起きたら、うちのこと『可愛い』って言って!」
勢いよくウツギはそう叫んだ。
…思っていたより可愛いお願いが飛んできて、ちょっと拍子抜けだ。正直、もっとどぎつい命令をされると思ってた。
「えっと、それくらいならまあいいけど……ウツギ、今日も可愛いな」
「…もうちょっと気持ちを込めて言ってくれる?はい、もう一回」
なにこの女、めんどくせえ…
それに、実際に口にしてみて初めて分かったが、意外とこれ、恥ずかしい。可愛いなんてクスネにたくさん言っていたから、それくらいお安い御用だと思っていたんだが…
どうも俺、女性の容姿を褒めると、こそばゆくなってしまうみたいだ。
ただ、ウツギは俺を期待の眼差しで見続けている。うーん……どうしよう…
「ウツギサマ、カワイイデス」
「ちょっと、なんでもっと棒読みになるのよ!それくらいならいいって言ったでしょ!さあ、早く!」
「分かった、分かった、ちょっと待って!」
なんか厄介なことになった!こんなことなら、安請け合いしなけりゃよかった!
…まあ、一度約束したことを破るのは、男が廃るか。ここは、ちゃんと気持ちを込めて、しっかり言葉にしよう。別に、嘘をつくわけじゃないしな。
深呼吸して、ウツギの目を見て、しっかり感情を込めて……
「ウツギ、可愛いよ」
…恥っず!なにこれ!?
「こひゅっ!ふ、ふひひ。う、嬉しい……嬉しいわ!」
笑い方こそちょっとあれだが、そうやって喜ぶウツギは、まるで少女のようで――
可愛いと言われてからのウツギは、今までよりぐっと可愛くなったような気がして、ちょっとドギマギしてしまった。
ウツギが余韻を楽しみ尽くすという謎の時間により、数分が経過した。
「これからは毎日こうしてもらうからね!」
「えっと……やっぱり勘弁してくれない?」
「ダメよ!うちの目的のために、この儀式は絶対に必要なの!」
儀式って……そんな大げさなものじゃないんだがなあ…
「ん?目的って言った?」
俺がそう疑問に思うと、ウツギは少し悩んだ末、こう答えた。
「…そうね。この際、あなたにも伝えておきましょうか。昨日は女としての自信をつけるって言ったけど、それだけじゃないのよ。この一週間で、うちは絶対に達成すべき四つの目標を立てたわ」
ウツギは俺に見せつけるように指を四本立てた。
「第一目標 女としての自信をつける・魅力を上げる」
「第二目標 視聴者に実力を分からせる」
「第三目標 あなたに魅力を刻み込む」
指折り数えて、一つずつ目標を提示していく。
「……そして、最終目標が、あなたにめっっちゃくちゃに抱いてもらうことよ!」
最後は人差し指を俺に突きつけて、顔を真っ赤にしてそう叫んだ。
へ、へえ…
俺が戸惑っていようが、勢い任せのウツギはまだまだ止まりそうにない。
「だから!まずは女として自信をつけるために、男に褒められたかったの!!!だからだから!ちゃんと可愛いって毎朝口に出すこと?分かったわね!?」
「お、おう」
俺はウツギの勢いに押され、思わず頷いてしまうのだった。
ウツギが恥ずかしがりながらも止まらなかったのは、覚悟を示すためだろう。それくらい強い気持ちでこの一週間を過ごすつもりってことか…
「まあ、第二目標くらいまでは頑張ってくれ」
照れ隠しするかのように、俺はそう答えた。
俺にはそれくらいしか言えない。いくら覚悟を示されようが、俺は俺であまり目標を叶えさせるわけにはいかないからな。
「…ま、いいわ。さて、それじゃあ朝ご飯を食べて、修行に行くわよ!」
――その後、ウツギの作ってくれたとても家庭的でおいしい味の朝食に舌鼓を打ち、配信を開始し、修行のためにウツギのテレポートによって今日の修行場所に連れてこられた。
場所は砂嵐舞う荒野。かなり風が強く、視界が悪い。なかなか過酷な場所だ。ただ、ここには生物が少ないというメリットもあるとのこと。
「さて、今日一日、モグちゃんはクスネくんを守ってあげて?」
「がう!」
一緒に連れてきたクスネを地面に置くと、モグちゃんが遠くに陣取った。目線はしっかりクスネを向いているので、見守ってくれる気は満々なのだろう。
「じゃ、クスネも自由に探検を楽しんでくれ!」
「わん!」
クスネはこの広い荒野を全力で楽しもうと走り出した。力いっぱい走っているだけだが、すごく楽しそうだ。ああいうクスネの姿勢は見習わなきゃな。
ちなみにだが、クスネは高級な服を着ているので、こんな環境だろうと快適に過ごせる。それに、たとえどんな強い生物がクスネを襲おうと、服が自動的に守ってくれる仕組みまである。
かなり過保護だが……まあ、クスネって可愛いから仕方ないよね。
「さて、とりあえずここで一戦交えましょうか」
>お?闘技場の再現か?
>今回は男に見惚れてぼーっと突っ立ってるだけになるなよ?
>でも、ここじゃあ闘技場の環境を再現できないから、本気で戦うと危険じゃない?
闘技場では“バリアフィールド”が展開されていて、その中で戦う戦士は命の危険になることはないし、中でどれだけ怪我をしようと、外に出れば回復する特殊な環境となっている。
詳しい仕組みはよく知らんが、すごいシステムだよな。
「この日のために、こんなのを買ってみたわ!じゃーん!」
>それ、クローン作成装置じゃん!
>くっそ高いやつだ。私の給料の五年分くらいはありそうwww
>よくそんな高いもの買ったなwww
「えっと、俺はそのクローン作成装置とやらを知らないんだが、どういうものなんだ?」
「これはねえ……簡単に言うと、数分間だけ闘技場と同じように全力で安全に戦うことができる装置よ。ま、数分間だけしか使えないけどね」
その後詳しくこの装置の仕組みを聞いてみた。どうもこの装置は本人と完全に一緒のクローン人形を数分だけ作り、その後人形に本人の意識を入れることができるらしい。
数分後にはクローン人形は崩れてしまうが、クローンでの経験もしっかり本人にフィードバックされるとのこと。
…なかなかすごい代物だな。
「別に安全面では問題ないんだよな?じゃあ、早速やろうぜ!」
>前までウツギとは絶対戦わないって言ってたのに、えらい変わりようだな
>勝ち逃げできなくなるけどいいのか?
>流石に本気のウツギには勝てるはずないのに…
>どっちもがんばえー
ふふふ、俺だって成長してるからな。強くなるためなら、別に負けたっていいと思っているんだよ。
…けどまあ、勝てるに越したことはないし、ちょっとずるいことをさせてもらうけどな。
「お手柔らかにお願いな!」
「ふふ、遊んであげるわ」
次回予告:なんで負けたか、明日までに考えておいてください




