集合会議!楽しいからやってるだけ!
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寝る前に、今日は母とルリさんと集合の日だ。今日は眠れなさそうだし、ちょうどいいかもな。
というのも、ウツギの用意してくれたベッドから、ウツギの香りがするのだ。流石にそれは悶々としてしまう。このベッドで俺は一週間普通に眠ることができるのだろうか?
「そういえば、母とルリさんの目的を聞いていないな。今日はその辺りを聞いてみるか」
ってことで…
「我に選ばれし魂よ。会合せよ。零地点へ!」
【合言葉を承認しました。次元跳躍を開始します】
いつものように、俺たち三人はこの惑星の中心の空洞、コックピットに集合した。
「あら?ヒノキあなた……いいわね。男としての色気が出てきてるわ!ようやく子どもから大人の男に成長してきたようだな。母は嬉しいぞ!」
来て早々、母は俺の頭をグイグイと強く撫でる。
「やっぱり、愛は人を成長させるのよ~。ヒノキ君がいい感じでルリも嬉しいな♡その調子でヨヒラちゃんにも愛を教えてあげてね♡」
愛を「教える」なんてのはちょっと違う気がするが……まあ俺なりに頑張ってます。手応えこそないけどね。
その後母は、しれっと頭を撫でる手を胸や腕にスライドさせ、軽くセクハラしながら言葉を続ける。
「この時期はたしか………ウツギちゃんとのシェアハウスが始まった時期よね?ってことは、ウツギちゃんがあなたに色々やったようね!ヒノキ、早くウツギちゃんとも結婚しちゃいなさい!私はウツギちゃんも大好きだから、全然ウェルカムよ!」
「そうそう。男の子はやっぱりそれくらいやんちゃな方がいいのよ~。愛の力は無限大よ♡だから、ヨヒラちゃんにもガンガン攻めてあげてね♡あのコ、シャイだから~」
…ねえ。五分しかないのに、そういう話に花を咲かせないでくれるか?
「そういうのいいから、さっさと話し合いしようよ。母とルリさんの目的とか、なんで俺を巻き込んだかとか、まだまだわからないことがこっちは多いんだからな?」
「そうね。息子にスネられるとこっちも困るから、これくらいにしておきましょうか」
「ふふふ~」
ニヤニヤするな!俺をからかって遊ぶな!
「さて、ここからは真面目にやるぞ。まずは私の目的から話そうか。私の目的はとっても単純だからな」
母がそう告げる。ようやく話が始まるようだ。
「私の目的、それは……」
「それは……?」
「特に無い!」
「…はあ?」
いや、そんな風にためてからドヤ顔で言われましても……
「強いて言えば、未知の解明がどうしても面白いからだ!この宇宙ではテクノロジーが発展しすぎて、人間が解明できない未知なんてないと言われている。だが、私から言わせてもらえば、その考えは間違っている!ジ・アースや閣下などのように、この宇宙は未知で溢れてるんだ!な?ゾクゾクするだろ!?」
そう熱っぽく語る母の目は、少女のようにキラキラと輝いていた。
…うん、すっごく母だ。
この人は昔から、こういうところがある。トリカが歌ってる時みたいに全身で楽しんで、セリが俺に貢がれて喜んでいるときのように、まっすぐで無邪気だ。
俺は母のこういうところ、結構好きだったりする。
「それにだ、秘密があれば、解明したくなるのが人間ってものだろ?」
「ヒイラさんは~、ただの研究バカよ~。秘密の多いルリには、とってもありがたい存在なのよ~」
母も研究バカと言われ、嬉しそうだ。
「知識を積み上げ、仮説を立て、実験し、分析し、データを集め、論文として発表する。それのなんと面白いことか」
うん。母の目的は分かった。ただ娯楽として研究を最高に楽しんでいるだけだ。
なにか大きな使命があるとか、とんでもないバックボーンがあるとかをちょっとだけ期待していたが、やっぱりそうではなかったようだ。
でも、すごく母らしくて素敵だと思うよ。
「ちょっと語りすぎたな。じゃあ、ここからはルリさんにパスしよう。私は引き続きこの場所を調査してるからな」
「はーい♡じゃあ、ルリの目的を話すね~。ルリの目的も単純といえば単純よ」
ルリさんは、いつもより少し真面目に続ける。
「ルリの目的。それは、もう一度愛する夫と会うこと。それだけよ」
ま、そうだよな。なんか夫がいるとか言ってたしね。なんとなく察してはいた。
「でも、たったそれだけのことが、ものすごく難しいのよね…」
「えっと……それはどうして?」
これが分からないんだよな。会いたいなら会えばいいのに、それができない状況ってなんだ?
「ルリの夫はジ・アース出身の男なの。あの惑星って完璧な星間断絶をしているから、ジ・アースに行かなきゃどうしようもないのよね。だから、ルリはどうしてもジ・アースに行かなきゃいけない」
星間断絶とは、他の惑星との交流を完全に絶っている状態だ。完璧なとつけたのは、上位のエネルギーを使って惑星ごと身を隠しているからそう表現したのだそうだ。
「でも、ジ・アースの隠れる能力はあまりにも優れている。現状のルリたちでは決して見つけられない。だから、夫の方から見つけてもらうほんの僅かな可能性にかけて、こんな格好をしているの。まあ、おまじないみたいなものね」
「えっと……?」
「この格好で✗✗した時、夫の反応がすっごくよかったのよ」
「…あ、はい」
恋する乙女の思考回路って、やっぱどこかバグってるんだな。まあ、本人が楽しそうなので俺からはなにも言わないけどね。夫婦喧嘩はクスネも食わないというし。
でも、そうなのか。地球って隠れてるのか…
俺は子供の頃、地球があるはずの宇宙の座標を観測してみたことがある。だが、そこに地球は存在しなかった。周辺をどれだけ探しても、結果は同じ。
俺はそれを「パラレルワールドに転生した」みたいに考えて、あまり深く考えなかったのだが……
話を聞く限り、あの時も地球はそこにあって、観測できなかっただけの可能性が高そうだ。
「でも、そんなにルリさんの夫っていい男なんだなあ」
俺がポツリと呟くと、ルリさんは間髪入れず、嬉しそうに答える。
「そうなの!宇宙一の色男よ!ヒノキくんも一度合えばあの人の魅力が分かるはず!」
その後ルリさんは、「夫がルリの頭を撫でた時、すっごくキュンときた」だの、「おまえ、俺のものになれよ」と強引に唇を奪われたのが嬉しかっただとか、キャーキャー騒ぎ出した。
ルリさんはその夫のことが好きで好きでたまらないのだろう。
…でも、聞く限りその夫さん、俺とは相容れない存在だな。女性の頭を撫でるとか、強引に唇を奪うとか……そういうのはいけないと思います!
「夫は男にしては珍しく、筋肉質で少し日焼けした人だったわ。それに話も面白くて、女好きで……あら?今気づいたけれど、特徴だけで言うと、なんだかちょっとヒノキくんと似てるわね。見た目はぜんぜん違うけど……もしかして、これはおそらく……」
話の途中でルリさんは何かを考え込んでしまった。
というか、その男と俺が似ている?それ、ほんのり不愉快なんだが!
「えっと……おーい、ルリさーん?」
ダメだ。思考の世界に深く沈み込んでしまったのか、俺の声が聞こえていない。
仕方ないので、俺は母に視線を向け、助けを求める。
「しょうがないわね。ここからは、私がルリさんから聞いたことをあなたに伝えるわね」
うん。助かる。
「ルリさんの前でこんなこと言うのもあれだけど、おそらくルリさんの夫はダメ男よ」
「…だよね」
後、多分厨二病だ。集まるときの合図があれだし。
「話を聞いている限りではね。だって、ナルシストで考えなしで……なにより、恋人が十人もいるらしいのよ」
「ん?恋人が十人もいるっていうのは、この宇宙じゃ別に普通なんじゃないの?」
「どうも、ジ・アースではこの宇宙と事情が違うのよね。信じられないことに、男女比がほとんど一緒らしいのよ。ほんと、羨ましいことだわ」
…え?
男女比が偏っているのって、この宇宙の共通したルールじゃないの!?
火は熱いとか、光があれば影ができるとか、氷が溶けると水になるとか……そういうのと一緒で、男女比が偏っているのは当たり前の事象だと認識していたんだが…
なんで地球だけルールが違うんだ?
「もし男女比を平等にする画期的な方法を知っているのなら、教えてほしいのだけど……ジ・アースは教えるどころか、隠れ住むように存在している。これ、とってもきな臭いわ」
そう言いつつ、母はとてもワクワクした表情だ。
「なんで地球は隠れているんだろうな?」
「そう!それなのよ!その謎を私はどうしても解き明かしたいの!私の仮説ではジ・アースは何か重大なことをやらかして――」
「っと、良いところで止めて悪いけど、そろそろ時間みたいだ。じゃあ、元の場所に戻すからね」
「…そうね。はぁ……一週間にたった五分だけしか話せないのって、どうももどかしいわね。話したいことが全然話せないわ」
「ヒノキくんは夫に選ばれた。だから前世の記憶を持って生まれた?……うん。そう考えるのと、妙にしっくりくるわね」
帰り際のきわっきわ、ルリさんがポツリとそう呟いたのが聞こえてきた。
…んんん?
俺が前世を持って生まれてきた原因は、その男にあるってこと?
っと、詳しく聞きたいのに時間がない!ほんと、もどかしい!
「指名を果たせし魂よ。帰還せよ!始まりの地へ!」
【合言葉を承認しました。逆次元跳躍を開始します】
そうして俺は、まだまだ疑問をたくさん残したまま、ウツギの家へ戻ってきたのだった。
次回予告:絶えず自壊する泥の人形




