同棲後半!五日目!
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一日、一日……と時間が経ち、シェアハウスの前半が終了した。今日を入れ、残す所あと三日だ。
「おはよう、クスネ。さて、今日も一日がんばりますか」
「わん!」
今日もしゃっきりとした目覚めだ。ぐっすり寝て気分がいい。
俺は顔を洗ったりといった朝のルーティーンをしながら、今までの生活を思い起こす。
今日までの四日間は、朝から食事を食べながら配信し、ダンス練習。昼食を食べ配信終了。昼から修行、夕食、ダンス練習、会議、就寝――そんな毎日だった。
一見すると、一日目と同じことの繰り返しに思えるかもしれない。だが実際には違う。同じ枠組みの中でも取り組む内容は大きく変化している。
何事も常に考えながら取り組むようになったことで、試行錯誤が自然と習慣になったことがその原因だろう。
「うん、決して穏やかな生活ではないけど、やりがいとか充実感がエグい。こういう過ごし方もありかもなあ…」
自問自答をしながら思考を進めていく。
トリカとの生活は、一日たりとも平凡と思えるものではなく、いつも刺激的でハードだ。頑張る時はめちゃくちゃ頑張り、休む時は様々な手段でしっかり休む。そんなメリハリのある生活だ。
だからだろうか?たった四日しかこの生活を送っていないのにも関わらず、俺は明らかに自信がついた。
この感覚はきっと、「一日をちゃんと生きた」という実感から来ているのだろう。
「そっか、トリカがいつも自信満々なのは、こういう生活を送っているからなのか」
今までも俺は多少自信家ではあった。特に肉体には自信があったからか、メンタル面にも良い影響を与えていたのだと思う。
それを極端に言い換えると、俺は肉体的な自信しか持ち合わせていなかったということでもある。
…といっても、そこまで精神的に弱いとも思ってないけどね。
要は俺は、筋肉のこと以外は至って普通と思っているのだ。強靭な肉体と、一般的メンタル。それが俺だ。
そして、確固たる自信というのは、肉体、精神、その両方が満たされている人しか持ち得ないと、俺は考えている。
「今までの俺の自信なんて、そこまで中身が伴ったものではなかったんだが…」
そんな俺が、最近はちょっとずつ自信が付いてきた。それも、中身の伴った。
こうやって確かな自信をちょっとずつ積み上げていくことで、近い将来、俺は弱さをそのまま受け入れられる。なんだか、そんな気がするのだ。
「でもやっぱり、精神面だけじゃなく、肉体面でも進化していたことの方が、俺は嬉しいな」
母の『内包する存在感が明らかに違う』という言葉を信じ、二日目、三日目と、俺は色々なことを試してみた。
その結果、残念ながら筋肉がどーんと強くなったり、必殺技を覚えたりなどは全くなかった。ま、そんな甘い話はないよね。
ただ、動きのキレに関しては、明らかに良くなっていた。なんというか、身体的な理解度が深まったというか、全ての身体の神経が強靭に繋がったというか、頭で思い描いた動きと、実際の動きの違いがなくなったというか……うーん、言語化が難しい。
ま、要は、直感的に身体を動かすことが得意になったのだ。
その結果どうなったのかというと…
「ダンスと料理が爆発的に上手くなったんだよな」
…いや、ほんとになんでだよ。俺、強くなるために修行してたんだけどなあ…
まあ、なんだってできないよりは、できる方が嬉しいからいいんだけどね。ほんと、アンドロイド流武術って不思議だわ。
あと、もう一つ明らかに変化したことがある。こっちに関しては、なんでこうなったのかもっと意味不明だ。
その変化とは…
「ま、これは今日の配信で話題に出すか、そっちの方が面白そうだし」
ということで、もう配信開始してしまおう。配信開始ボタンぽちー。
「ういーす。地元最強ムキムキイケメンのヒノキでーす。今日はトリカが午前中仕事で手が離せないらしく、一人での配信となりまーす」
>告知してから配信始めろ
>今日も楽しみ
>なんだ……トリカ様いないのかよ…
>ちっすちっすー
「今日はねえ、ちょっとお前らに面白いものを見せたくて、朝食前に配信することにしたんだよ」
>面白いもの?
>チソチソとか見せれば面白いと思いますよ!!!
>とりあえず脱いだ。寒い
>そうやってやる前からハードル上げて大丈夫か?
「アンドロイド流武術の修行を最後まで終えたことによる俺の変化が、もう一つ見つかったんだよ。どうもダンスが上手くなったり、料理が上手くなるだけじゃなかったみたいだ」
コイツらには、以前ダンスや料理が急激に上手くなったことを配信で見せた。その時は「それだけ修行した結果がそれかよwww」と笑われたが……さて、今回はどうかな?
俺は隣のトレーニングルームに入り、“仮想対戦モード”に設定。対戦相手をバカ恐竜のパワーを千倍にした生き物に設定する。すると、この部屋にデータで再現されたバカ恐竜が構築された。
データとは言え、もちろん質量もある。
>え?千倍って…
>やりすぎじゃない?
>そんなの勝てるわけないだろ!
「いや、増やしたのはパワーの値だけだから、全て攻撃を避けてぶん殴れば、勝てないことはないんだよ?まあ、今回の目的は勝つことじゃないんだけどな。さてと、相手の攻撃を尻尾スイングだけにして、実際にダメージを食らう設定にして…」
>おい…
>安全機能があるから絶対に死にはしないはずだけど、流石にそれは…
>今日一日動けなくなるくらいにはダメージを受けるぞ?ほんとに大丈夫?
後は俺の身体の表面を生命力でキラキラさせて……よし、準備完了!
視聴者の制止を振り切り、対戦をスタートする。
「受け止めてやる!かかってこい!」
余裕の笑みで俺は構えた。
目の前に迫りくるバカ恐竜の尻尾。千倍に攻撃力が増したバカ恐竜の尻尾が俺を襲う――
どかーん!
俺は攻撃を受け、ものすごい勢いで壁までふっとばされた。
「対戦終了!いてててて、流石に千倍はやりすぎたな……めっちゃ痛い」
俺の対戦終了と言う声に合わせて、再現されたバカ恐竜はこの場から消えた。
>一瞬「まさか、受け止めるのか……?」と思ったら、案の定ふっとばされた件
>え?でもさあ?なんであんな攻撃食らってピンピンしてるの???
>ダメージは食らってるんだよね?
>何が起こったの!?あの威力の攻撃に、何も装備してない人間が耐えられるわけなくない!?
>説明不足!!!
「ハハハ」
>ハハハじゃなくて
>笑うな
>はよ説明しろ
「ま、この通りだ。なぜか耐久力が意味分からないくらい増えてました!」
いやあ……俺、成長したなあ…
>いや、なんでだよwww
>……ほんとになんで?
>よく分からないけど、よく分からないということが分かった
「ね?なんで俺、耐久力が増えたんだろうな?それも、意味分からないくらいに」
俺のもう一つの変化。それは、視聴者から「えちえちモード」と言われている状態になると、人外じみた耐久力になることなのだ。
「なんか、マグマの中に入っても、雷に打たれても、相当な高度から落下しても、耐えられるようになっちゃった。痛いは痛いから、もう二度と試したくはないんだけどな……今日はこれをお前らに見せたかったんだよ」
>そんな軽々しく言われても…
>もっと具体的に色々教えろ
>例えば刃物とかに切られるとどうなるの?
>解剖して調査したい!ヒノキの身体、どうなってるのかな!?ワクワク!
――その後、俺が試した様々なこと、チップによって俺の体をスキャンしたデータなど、洗いざらい視聴者に話した。
その結果や情報などを踏まえ、視聴者と議論をして、一つの結論を出した。
「なるほどな。まとめると、防御力が上がったんじゃなくて、HPが上がったってほうが適切ってことか」
>刃物とかでちゃんと刃が入るのなら、そうだろうな
>おまえ、RPGとかに出てくる、めんどくさい敵ボスみたいだなwww
>せめて防御力も上がってくれたら、かなり強かったのに……
そう、この話の肝は、「HP」が爆発的に上がっただけで、「防御力」という数値はそこまで上がったわけではないという所。これが厄介だ。
それの何が厄介かっていうと、ダメージはしっかり食らうし、痛いこと。あと、斬撃とか、一撃必殺系のものに対処できないというのも厄介だ。
「まあまあ、確かに最強!って感じではないけど、ないよりはあったほうがいい力ではある。これからはそういう特異体質だと思って過ごしていくかー」
それにしても、HP増えるねえ……わがままを言うと、もっと分かりやすい魅力がほしかったなあ。
あ、でも、この力があれば、トリカが言っていた隕石を殴るとか、海を割るとかはできなくても、なんとか見栄えのある映像を撮ることができるんじゃないかな?ある意味応用の効く能力とも言えなくはないし。
「さて、それが分かったところで、見せたいものは終了だ!朝食を食べて、いつも通りダンスの練習していくぞ!あ、そうだ。後もう一個報告。明日はカマクラホテルで本格的にMVを撮るから、配信なしな。なんか、トリカの親友と共演するらしいよ。じゃ、そういうことで、バイキング行ってきまーす!」
この後は宣言通り、いつも通りダンス練習の配信をして、配信は終了した。そして、午後からはいろんな衣装を着て、ぶっ通しで本格的なMV撮影をした後、明日に備えてしっかり就寝した。
次回予告:めちゃくちゃ嫌われてるんだけど…




