恋人同棲!その4!トリカ先輩からのアドバイス!
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――どうして強くなりたいか。
俺は昼食を食べながら、トリカや視聴者たちと、そのテーマを中心に会話をしてみることにした。
会話から自己理解が深まるということを、俺はセリの家で体験したからな。
「ぱっと思いついた答えは……強くなりたいから?」
>おいw
>強くなりたい理由→強くなりたいから!!!
>お前ってやっぱ大雑把だよなwww
>そんな答えがありだったら、この世の全ての問題が解決するぞ!
いや、色々細かい理由はあるんだよ。でも、前世由来の理由が結構多くて、表で話せないんだよ。
…ん?そういや、なんで俺は前世があることを秘密にしているんだっけ?別に話してもいい気がしているんだが…
あ、そうだ、思い出した。前世があると母にバレた時、「そういうことは秘密にしておきなさい。せっかく自分だけのアドバンテージなんだから、種明かしする必要なんてないわ」と言われたからだ。
俺も「別にこんな話してもなあ…」と思っていたし、「こんな荒唐無稽の話をしても信じてくれないだろう」とも思っていたから、母の言う通りにしたんだよな。
そしてそれからは思考を止め、「前世のことは話さないもの」と考えていたんだが…
トリカに「ここで暮らす間くらいは考えを止めるな」と言われているし、久々に考えてみるか。
えーっと……うーん……うん、割とすぐに結論が出た。
「話さなくてもいいや」
>は?
>何がだよ
>なんか知らんが話せ
おっと、思考がちょっと漏れてしまった。気をつけないと。
前世のことは、話しても信じてもらえないとは前ほど思ってはいない。ただ、「別にこんな話してもなあ…」とは、今でも思っている。
それに、もし視聴者に話すのなら、その前にヨヒラやウツギに話しておきたいという気持ちが大きい。その気持ちを無視するのはなんか違う気がするのだ。
さて、一旦この問題について考えるのはここまでにしよう。今は強くなりたい理由だ。
「俺が強くなりたいと思い始めた原点は、『人生をかけて筋トレし続ければ、どれくらい肉体的に強くなれるか』ということを知りたいという好奇心。あとは、『体を鍛えればモテるのでは?』っていう下心。主にその二つなんだが…」
あと、前世で貧弱だった後悔。主にその三つだな。
>〇〇すればモテるのでは!みたいな思考、女子だけだと思ってたwww
>いや、普通男はモテたいと思わんだろwww
>研究者の息子だから、そんなに好奇心で行くところまで行けたのか?
>今でもモテたいと思ってるの?
「今でもモテたいとは……ちょっとしか思ってないな。うん」
「はぁ……まったく」
>草
>ちょっとは思ってるのかよwww
>思わずトリカ様も冷たい目線を向けるほどの発言
>お前、実は女子だったりしない?マインドが女子すぎるwww
いや、仕方ないだろ!俺だって「はあーあ、女にはもうこりごり」みたいな、モテ男の末路みたいな発言を心からしてみてぇよ!でも、男が貴重な宇宙に転生しようが、恋人ができようが、心からはそう思えないんだもん!
女性から逃げてこの惑星に来たくせに何を言ってるんだよと言われても仕方ないが、それとこれとはちょっと話が違うんだよな。女性が嫌で逃げたわけじゃなく、女性が魅力的すぎるから逃げてきたわけだし…
「ま、もう昼食も食べ終わるし、ここから先はアンドロイド流修行をしながら考えてみるわ。ということで、そろそろ配信は終わるな。じゃ、おつー」
>乙
>おつかれー
>カツカレー
>今日も楽しかったよ
>トリカ様好きだあああああああ!!!
>また明日も配信しても良いんだからね!
ということで、配信終了。
「さて、じゃあトレーニングルームへ行きましょうか」
トレーニングルームには一瞬でついた。トリカがこのダイニングルームの扉と、トレーニングルームの扉を繋げたのだ。
というのも、トリカは「この方が効率がいいわ」と、部屋の場所を組み換えてしまったんだよね。
…あれだな、「人間がワープできないなら、部屋をワープして繋げればいいだけ」みたいな、お金持ちが考えそうな思考だな。
そこまでしなくても……と思わなくはないが、まあトリカがやることなので。
「さあ、修行の取り組み方は今までと一緒。でも、とにかくチャレンジの試行回数を増やすわ」
「ええっと……今までも結構限界までやってたんだけど」
いつも修行では、肉体的にも、精神的にも限界まで追い込んでいるので、簡単に試行回数なんて増やせない。
肉体面なら“肉体修復装置”に入って仮眠を取れば、一瞬で疲労はとれるのだが、精神面はそうやすやすと回復しないからな。大体先に精神的な限界が来るんだよね。
だから、いくら筋肉を修復しようと、無限に筋トレができると言うわけではないのだ。
「それに関しては大丈夫。わたくしがいるもの」
「ん?どういうこと?」
「気力がなくなったら、何度だってわたくしの歌で燃え上がらせてあげる。わたくしも成長してるから、それくらいやってのけてあげるわ!」
トリカが自信満々でそう宣言する。あの様子から、おそらく本当に気力を回復することができる自信があるのだろう。
え?ってことはさあ…
限界まで頑張る→トリカの歌と機械の力で復活する→また限界まで頑張る→以下無限ループってこと!?
確かに理論上なら無限だが…
なんかこのループ、かなりヤバそうじゃない!?精神に異常をきたしそうなんだが!
まあ、いつかは気力も底を尽きることになるはずだし、時間という制限もあるので、現実的には無限ループとはいかないだろうが……それでも相当ハードな修行になりそうだ。
…これは、かなり気合を入れないとやばいな。
「さ、早急にアンドロイド流武術を攻略しなさい!大丈夫、あなたならできるはずよ。ノルマは三日。三日以内にクリアすること。いいわね?」
トリカはそう言い残すと、俺が「三日なんて無理」という弱音を言う暇もなく、足早に別室で歌のトレーニングを始めてしまった。
俺は遠ざかっていくトリカの背中を眺めることしかできなかった。
…いつまでもぼーっと立ち尽くしているわけにはいかない。さっさと修行に入ろう。
「…トリカはやると言ったらやる女だ。いくら俺が弱音を吐こうが、何度でもやらせるだろうな」
一人、俺は呟いた。
ただ、トリカは厳しいだけの女ではない。これまでの経験から推測すると――明らかに絶体絶命の状況に追い込まれることは多々あったが、解決方法が何もないというのは一度もなかった。
だから、きっと何かアンドロイド流武術をクリアする糸口くらいは、用意してあるはずなのだ。
糸口……糸口ねえ……そういえば、トリカは「頭を動かし続けろ」と言っていた。そして、「それがあなたのためになる」とも。
多分あれは、アンドロイド流武術を達成した経験から来るヒントだったんじゃないか?
なら、いっぱい考えよう。きっとそうすれば修行は進むはずだ。
さて、まずはウォーミングアップの滝行だ。最近では滝行にも慣れてきたので、滝に打たれながら考え続けることだってできるはず。
…ま、考え事に夢中になりすぎると、いくら慣れたといえども最後までやりきれないだろうけどな。滝行だってそんなに簡単なものではないし。
考え事半分、滝行半分くらいの意識で集中して、なんとか頑張ってみるか。
「滝行スタート!」
俺は激流に身体をさらされながら、今までトリカが発言した言葉を一つずつ思い出していく。
『恐怖をそのまま受け入れ、楽しむ』『頭を動かし続けなさい』『どうして強くなりたいの?』
他にも俺は、いろんな人にアドバイスを受けている。
母は『弱さを受け入れなさい』と言っていた。
ヨヒラは『内的感覚の強化、及び非合理性の追求。とにかく自身を見つめ続け、合理的な動きをしすぎないように気をつける』これを一瞬たりとも忘れるなと言っていた。
セリは『考えすぎの時はたいてい思考が変な方向に迷い込んじゃう』と言っていた。
…あれ?セリとトリカの言うことが真反対なんだが?一体どっちを信じれば……
「…い゛ったあ!」
つい気を緩めてしまい、頭に岩がクリーンヒットしてしまった。考え事に没頭しすぎてしまった。
やっぱり、考えすぎはダメだな。考え事は意識の半分のみ。いや、やっぱりもうちょい割合を減らそう。マルチタスクが苦手な俺は、そんな器用にできない。頭を動かすのは一割くらいにして、後は滝行に集中しよう。
――その後は、考え事の割合を減らしつつ、なおかつ思考は止めず、俺は滝行を順調に進めていった。
心も体もいい感じに整ってきた頃、ふとこんな気づきがあった。
…ん?よく考えれば今この状態って……セリとトリカのアドバイス、両方の条件を満たしているんじゃないか?
今は頭を動かしつづけ、なおかつ考えすぎていないので、肩の力の抜けた自然体な状態。この感じ、めちゃくちゃしっくりくる!
そっかそっか。俺の場合、どうやら思考と感覚の黄金比は1:9のようだ。
最後にそれが分かったところで、滝行の時間が終了した。
いつも通り、このあとは魂咲の行に入る。
よし!多少だが、成果はあった。頭の片隅でだけ考え事をしながら、あとは感覚で行動する。この方法でまだまだ頑張るぞ!
次回予告:崇めよ……閣下を崇めよ……奉れ……




