恋人同棲!トリカとシェアハウス!
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一日しっかり寝て、朝。カプセル内がだんだんと明るくなり、クラシック音楽がだんだんとフェードアウトしてきたことによって、俺は自然と目が覚めた。どうやらこの時間に起きるように設定されていたようだ。
いつもより朝が早いからか、クスネはまだ寝ている。
「うわっ。母とルリさんからお怒りメールが来てる…」
内容は「最近よく眠れてる?」「最近会えていないけど、元気にしてた?」というものだ。万が一にでもメールから俺たちが集まっていることがバレないように、ぼかしたのだろう。
…こう皮肉めいた言葉で伝えられると、直接怒られるよりグサッと来るな。
まあ、今夜は忘れないように気をつければいいとして――
今はこれからの生活のことだ。
これから一週間、トリカとのシェアハウスが始まる。
…が、何をするのか、どういう生活を送るのかなどを、現状全くすり合わせていない。
それなのに、昨日トリカは『朝から忙しくなる』と俺に伝えていた。トリカの中では、もう予定は決まっているようだ。
一体俺に何をさせようとしているのだろうか?というか、なんでビジュ変したのだろうか?
俺が朝起きてもまだ困惑していると、バン!と勢いよくベッドルームの扉が開いた。
「うん。しっかり起きたようね。おはようヒノキ。さあ、五分後にはもう朝食の時間よ!急ぎなさい!」
「…ええっと。トリカ、おはよう」
トリカは昨日と同じ、妖精女王が色っぽく成長したような姿だ。このままずっとあの姿なのだろうか?それだとちょっと問題が…
「なにをそんなに戸惑っているのよ?」
「いや、トリカのその姿にまだ慣れてなくてな…」
と、俺が伝えると、トリカは少し微笑んだ後、堂々と胸を張った。
「ふふ、こんなわたくしもいいでしょう?ま、そのことは朝食の時に説明するわ。とにかく急ぎなさい!」
そう言い残し、トリカは颯爽と部屋から出ていった。勢いよく来て、勢いよく帰っていったな。
それでですね……うん、これで二回、変化後のトリカの姿を見たわけなんですが……どうしても、俺はこう思ってしまって仕方がない。
「――なんか、えっちだ…」
◆
「さあ、ヒノキ。朝食の前に、配信を開始しちゃいなさい。視聴者にも色々説明したいしね」
「おう、了解」
朝食の席につくと、俺は言われるがまま配信を開始した。
「ういーす。指示待ち人間ムキムキイケメンのヒノキでーす。今はトリカの家のダイニングルームから配信しています。そして向かいの席にいるのが…」
「トリカよ」
「今日は二人で配信していきます」
>配信始める前に告知をしろ
>今日も楽しみ
>今日はいつもより配信開始時間が早いね
>え?なんかトリカ様のビジュアルが変わってるんだけど!!!
>トリカ様美しい…
「ね?なんかトリカの姿が変わってるんだよね。それも込みで、トリカが色々説明してくれるらしい」
姿が変わっただけでなく、存在感、迫力、魅力などがかなり増してもいる。見た目の変化だけでは片付けられないほど、明らかに以前のトリカと違うのだ。
「その前に、まだあなたの口からこの姿の感想を聞いてないわ。わたくしの恋人なんだから、似合ってるとか、可愛いとか、そういう言葉をかけてくれたっていいのじゃなくて?」
>それはいけませんねえ…
>プンスカオコのトリカ様
>大きくなって、今までより見下すような目が似合うようになりましたね!
>#トリカ様に踏まれたい
いや、あの、えっと…
そりゃ、その姿も似合ってるし、最高なんだけどね。そんなことより刺激的すぎて、愛する彼女に言うべきことじゃないことを口走りそうなんだよ。
「えっと……すごく可愛いです」
「それだけ?」
なんとか無難な答えを絞り出したのにも関わらず、トリカは追撃してくる。俺の誤魔化しを一切許さない。
「う、美しいです」
「それ、さっきコメントにあったのを引用しただけよね?わたくしはあなたの本心を聞きたいの。さ、言ってごらんなさい?」
トリカが俺の目を覗き込む。俺の全てを見透かしてしまうような、妖しげな目だ。
…いいのかな?本心を言って。嫌がられないかな?
「さあ?早く!」
えっ、えっ、えっ……もう、いいか!言ってほしそうだし、言っちゃえ!
「すごく、えっちです!!!」
「よろしい」
>草
>まあ、ヒノキの気持ちは分かるけどさあ……そんな大声で…
>トリカ様も満足げなの、なんでだよwww
>ヒノキ、タジタジwww
>え?みんなは男性からえっちって言われるの、嬉しくないの?
>…たしかに、よく考えたら嬉しいな!
…なんか今、すごく恥ずかしい。顔が熱い。
俺は顔をパタパタと手で扇ぎながら、なんとか落ち着こうとする。
…それにしても、トリカに失望されなくてよかった。言わせるだけ言わせて、「最低」と、ゴミを見るような目で返されたら、俺はもう二度と立ち上がれなかっただろうよ…
「ヒノキの言うように、ちょっと大人の魅力あふれる姿にビジュアルを変更したのよ。前の姿も完成されていて、気に入っていたんだけどね。反応で分かったはいたけど、ちゃんとヒノキが色っぽく感じているならなによりね」
「えっと、結局なんでトリカは急にその姿に変わったんだ?」
「ちょっと思うところがあって、一時的にこの姿にしてるの。で、その理由なのだけど……ヒノキの空腹具合が限界みたいだから、その話は、食事をしながらにしましょうか」
俺のお腹がぐぅと鳴ったので、この話は一度中断。失礼しました。
でも、しょうがないだろ?今日の朝食はバイキング形式なんだぞ?至るところにうまそうな料理が並んでるんだぞ?だから、お腹が鳴るくらい許してくれ。
いやあ……この部屋に入ったときから、何を食べようかすごく楽しみだったんだよね。
「話の続きはいただきますの後だな」
――ということで、俺たちは料理を取りに行って帰ってきた。
一方はバランスの取れた、見た目も綺麗なおしゃれプレート。もう一方は、一応栄養バランスは考えているものの、とにかく量の多い、ぎゅうぎゅうに詰め込んだようなプレート。
ま、どっちがどっちの皿かは言うまでもないな。
>ヒノキwww食いすぎだろwww
>野菜ドーン!主食ドーン!メインドドーンって感じの皿
>米とパンと麺類まで取ってるし、肉も魚も取ってるし、スープも飲み物も何種類も取ってるし、もうデザートも取ってるし…
>女性としてはトリカ様も食べる方だけど、ヒノキが取りすぎて少食に見えるwww
>随分知性溢れたプレートですね
意外にも、トリカは俺のてんこ盛り皿を見ても嫌そうにしない。それどころか、なんだか気持ち、嬉しそうに見える。
もしかして、あれ?田舎のおばあちゃんとかが、孫がいっぱい食べる姿を見て嬉しがるとか、そういうやつ?
「違うわよ」
…ねえ?当たり前のように心を読まないで。
――結局トリカは、なんで嬉しそうだったのかは教えてくれなかった。
「「いただきまーす」」
さて、どれから食べようかなあ…
トリカの用意したものだし、どれも美味しいというのは間違いないはず。
よし!順番とか気にせず、片っ端から食べていこう!
「食べながらでいいからヒノキも聞きなさい。あなたにも関係ある話ですわよ」
ステーキ肉を口いっぱいに頬張りながら頷く。
うん、肉汁たっぷりでうめえ。美味いというより、旨い。肉汁がじゅわーっって感じ!それにこの肉、柔らかいけど噛み応えもある!ちょうど俺の一番好きな柔らかさだ。
そして何より、朝からこんなしっかり調理された肉を食えるの、嬉しすぎる!!
トリカが「こほん」と咳払いした。おっと失礼、肉に集中しすぎていた。話を聞かなきゃな。
「わたくしがこの姿に変化した理由――それは、ヒノキ。あなたに負けないためですわ」
んん?俺に負けないため?一体どういうことだ?
次回予告:こんな説得もあるのか……!




