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貞操逆転スペースファンタジースローライフ!?~男女比が1:10の宇宙で男に生まれた俺が、辺境の無人惑星でスローライフする姿を配信する  作者: ながつき おつ
5章 幻の惑星、ジ・アース!

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宵時散歩!その2!別れ際でのこと! 

読んでいて少しでも感情が動いたら、評価・リアクション・ブックマークをお願いします。



「ヒノキはさ、僕と過ごした一週間、『何気ない日常だったなあ…』みたいに思ってるんじゃな?」


「おお、よく分かったなあ。まさに今ドンピシャでそう思っていたよ」


「ふふ、ほんと、ヒノキはバカだなあ…」


「え、なんで唐突に罵倒!?」


 大蛇様の頭の上でのお月見中、もうそろそろトリカの家に行かなければならないギリギリ時刻のこと。もうすぐ別れの時間にも関わらず、会話が弾んで仕方がない。


「だって、これは僕が意図してそうやって過ごしてもらったってことに、一切気づいていないんだもん」


「んん?」


 意図して?何か狙いがあったってこと?


「ほんとはヒノキに僕のゲームで身につけたいろんな技術を教えたり、またジュニアで旅行に行ったり、僕のお姉ちゃんと会う予定があったりとか……僕だって色々計画はあったんだよ?それを全て没にして、急遽何もしないことを選択したんだ」


「…マジ?」


 セリからそんな気配は全く感じなかったので、まさかそんな思惑があったとは一切思わなかった。


 …あ、でも、ヒノキのお姉さんと会わなかったのは、ちょっと良かった。小さい頃から優しく接してもらっていた立場でこんなこと言うのはあれなんだが、個人的にあの人苦手なんだよね。なんというか、ただただ相性が悪い。


 ま、今はその話はいいか。


「え?じゃあさ、セリはなんで予定していた計画を没にしたんだ?」


「だって、ヒノキがここに来た当初、不毛な考え事をしていたみたいだったからね。もうちょっと肩の力を抜いたほうがいいと、一目見て思ったんだ」


 続けてセリは、「考え事をするのは悪いことじゃないんだけど……ヒノキの場合、考えすぎの時はたいてい思考が変な方向に迷い込んじゃうから」と、補足した。


 …まあ、思い当たる節はある。といっても俺の認識では、ただ考え事が苦手だから斜め上の方向に進んでしまうのだと思っていたのだが……そっか、考えすぎが駄目だったのか。


「力を抜いて過ごしたから、この一週間でヒノキはとってもいい表情に変わったと思う。最高にカッコいいよ!」


「ほんと?それなら嬉しいなあ…」


 それが本当なら、全てセリのおかげだろうな。だって俺は特別なことは何もしてないし。


「うん!やっぱりヒノキは自然体が一番だよ!僕も自然体のヒノキと暮らせて、すっっっごく楽しかった!!」


 そう言って、セリは俺の腕をぎゅっと抱きしめる。



 …つい嬉しくなって、反射的にある言葉を口に出しそうになった。


 交際期間が一年もないのに、流石にそれを伝えるのはまだ早い。


 一度頭をブンブン振って、普通の返答を意識して答える。


「俺もセリの期待する俺でいられてよかったなあ……俺、どうもセリに失望されたくないみたいだからさ」


「ふふ、ヒノキはバカだなあ……僕がヒノキに失望することなんて、今後一切ないのに。それに、自然体が一番と言いつつも、別にどんなヒノキだって僕は好きだからね」

 

 続けてセリは、「だって、僕はヒノキがそこにいるってだけで嬉しくなっちゃうんだもん」と心底楽しそうに笑う。


 俺も同じだ。俺もセリと一緒にいるというだけで嬉しくなってしまう。特別なことは何もなくても、勝手に心が満たされて、どんどんセリのことが好きになるんだ。


「なんかセリに全肯定されると、どんどんダメ男になっていきそうで怖いな…」


「ふふふ、一緒にもっと堕落しよ?」


 そうやって、俺たちは笑い合う。


 …またあの言葉が喉まで出かかったが、なんとか飲み込んだ。俺って今、二人も恋人がいるし、ヨヒラにもアタックしているという、宙ぶらりんな状態だからなあ…



「……じゃあ、俺はそろそろトリカの家に行ってくるな」


 すっごく別れたくないが、流石にこれ以上トリカを待たせるわけにはいかない。予定時刻はしっかりオーバーしている。怒られることが確定した。


「分かった。じゃあ最後に、ヒノキ。僕はヒノキのこと、誰よりも期待してる。評価してる。それに、愛してる。だから、ね――僕はとにかく待ってるから!」


 何を待っているか、言わなくても伝わった。


 プロポーズされることを、セリは待っているのだ。


 …まあ――ね。


 俺はいずれ、セリにプロポーズするのだと思う。何度も「結婚しよう」って本気で言いかけたくらいだし。


 それを言えなかったのは、今の俺には覚悟が足りないからだ。結婚を重く考えているからこそ、今プロポーズするのは不誠実な気がしてな。簡単に言ってはならない――そんな気がしたのだ。


 やっぱりあれだ。俺はもっと成長しなくてはならない。自信も覚悟も器の大きさも決断力も、色々今の俺には足りなさすぎる。


「じゃあな、セリ。この一週間、最高に楽しかったよ」


 言葉にいっぱいの感謝を込めて、セリの近くでポツリと別れの挨拶をした。


 月明かりに照らされたセリを見て、ふっと息を飲む。誰よりもセリは月が似合う――なんだか自然にそう思った。



 ――その後、乗せてくれた大蛇様にしっかり挨拶し、閣下や子どものヘビたちにも挨拶し、クスネを連れ、俺はこの場を後にした。


 振り返らずに、とにかく俺はトリカの拠点に向かって走った。今振り返ると、名残惜しくてまたセリの元に戻ってしまう気がしたのだ。


 セリの笑顔を思い出しながら走る。背後では、きっとセリがいつものように笑っている――そんな気がした。



 ただ、実際には…


「ヒノキ……流石にそれは反則だよ……」


 一人でしゃがみ込みながらセリの呟いた声は、誰にも聞かれずに秋の夜風に流されていった。


 天真爛漫で、いつもヒノキを翻弄しているセリにしては珍しく、耳まで真っ赤になっていたそうだ。




 走る。とにかく走る。


 今の俺のスピードは、過去最高な気がする。コンディションがとてもいい。


 そうやって走り続け、この森を抜けそうになったところで――


「かっか!」


 なぜか、目の前に閣下がワープしてきた。



 ……え?


「ワープ?SCエネルギーを使ったワープって、そもそもできないようになってるはずだよな?それに、もし違法に無理やりワープしたとしても、警報が鳴り響くはずなんだが…」


 今この場に警報なんて響いていない。一体全体、どういうこと?


 思わず足を止めた俺に、閣下は近づいてきた。


「かっか!」


 そして、閣下は俺の頭にその小さな手を乗せた。



――すると、この場がピカーと光りだし……俺の脳内に、閣下の感情を伴ったある映像が流れてきた。


「…これは、閣下の心?」


 どうやらこれは、閣下が見せているらしい。雪崩(なだ)れ込むように、どんどん映像が脳内に流れていく。



 まずは、ヨヒラに対する後悔。


 おそらく惑星一つぶんくらいの莫大なエネルギーを持つ自分がこの惑星に来た時、エイリアンに気配を察せられたことが原因で、かなり迷惑をかけたこと。そもそも最初はヨヒラと俺をくっつけるための恋のキューピットとして生まれたのに、それを果たせなくて悪いと思っているということ。


 次に、セリへの感謝。


 運命を無理やり変えてしまうほどの、愛の大きさ、強さを持つセリに出会えたこと。愛の惑星であるジ・アースから来た自分としては、誰よりも強い愛を持つセリに出会えて本当に嬉しいと思っているということ。早くヒノキと結ばれてほしいと思っているということ。


 ……頭が追いつかないんだが???



 まあ、あれか。色々な新事実が分かった気もするが……


 とりあえず、閣下も地球に関わるなにかってことだよな?かろうじてそれだけは理解した。


「かっか!」


 閣下は俺の脳内に直接映像を流したかと思うと、またワープしてこの場から消えてしまった。おそらくセリの拠点に帰ったのだと思うが…


 …結局今の、何だったんだろう?


 まあ、このことは母とルリさんと三人で話し合うか。俺には考えても分からん。


 今あったことは一旦忘れ、俺はトリカの家に走った。



「遅い!」


 数時間後、ようやく俺はトリカの家に着く。


「えっと……トリカ、だよな?」


「そうに決まってるでしょ!何よ?」


「いや、姿が…」


「ま、色々あったのよ。明日説明するわ。とりあえず、今日はもう寝なさい!ぬるま湯のような生活はもう終わり!明日は朝から忙しくなるわよ!」

 

「ええ…」


 トリカ?に急かされて、俺はベッドルームに案内される。「おやすみ」と告げられ、扉が閉められた。



 とりあえず、俺は用意された高性能カプセルベッドに寝転び、目を閉じる。色々な疑問点には、ひとまず目をそむけながら。


「……いや、やっぱり説明してほしい!なんでいきなりトリカの姿が変わったんだ?気になって仕方がない!」


 カプセルベッドの中で、思わず叫んでしまった。


 そう。前までは120センチくらいの身長だったのに、今日会うと170センチくらいの身長になっていたのだ。


 他にも、体型にメリハリが出て胸が大きくなっていたり、服の露出が多くなっていたり、目が妖しく紫に光っていたり……正直に言おう。なんか、全体的にエッチだった。


「…あ、そうだ、トリカの姿の衝撃で忘れてた。寝る前に、コックピットに集合しなきゃ……え?このベッド、自動で入眠措置が施されるタイプなの―――ぐぅ…」

  

 高性能カプセルベッドの蓋が閉じ、プシューと優しいアロマの香りがこのカプセル内に漂うと――集合をかける暇もなく、気づけば俺は寝てしまっていたのだった。


次回予告:ヒノキ、さいてー

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