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貞操逆転スペースファンタジースローライフ!?~男女比が1:10の宇宙で男に生まれた俺が、辺境の無人惑星でスローライフする姿を配信する  作者: ながつき おつ
5章 幻の惑星、ジ・アース!

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宵時散歩!月が綺麗ですね!

読んでいて少しでも感情が動いたら、評価・リアクション・ブックマークをお願いします。



「じゃあ、行こっか?」


「おう!」

 

 俺、セリ、閣下、クスネは、セリに連れられ、夜の散歩に出かけた。


「あ、お弁当持った?」


「うん、しっかり持ってきてるよ」


 セリに頼まれ、俺はお弁当を作ってきた。どうも今日は外で夕食を食べたいらしいのだ。


 ただ、今の時刻は夕食にしては時間が遅い。もう日も落ちてきて、辺りは真っ暗だからな。だから正直、お腹はペコペコだ。


「さて、今日はどこへ行くんだ?」


「今日の目的地は……不明!」


「えっ?不明?とっておきの場所を見せてくれるんじゃなかったのか?」


「ふふふ、不明っていうのは、決まった場所に行くつもりはないってこと。だって今日の目的は、この森のヌシに会うことだもん!」


 ヌシ!なんとまあワクワクする言葉の響き!


「この森にヌシなんているんだ」


「うん!絶対ヒノキはヌシみたいな生き物が好きだと思うんだよね!案内するから楽しみにしておいてね!」


 俺は単純なので、ヌシに会えると聞いてから、ずっとワクワクしている。だって、ヌシだよ!ヌシ!ロマンがあるよね!


 ただ、どうもそのヌシは夜にこの森を無作為に動き回っているらしく、見つけることが困難らしい。セリも偶然でしか会ったことはないとのこと。


 …といっても、会えないとは一ミリも思っていない。セリはしっかり「案内する」と断言した。こういうときのセリは大抵どうにかしてくれるのだ。


 セリは「こっち、いや……こっちな気がする」などと閣下とも相談しながら、どんどん進んでいく。

 

 時にセリは棒を地面に刺して倒れた方向に進んでみたり、これは本当にそうなのかは不明だが、時に閣下がこの森の生物たちに聞き取り調査のようなことをして、ヌシがいる方向の辺りをつけてみたり…


 

――そうやって探すこと数十分。


 唐突に、森の空気がぴたりと止まったように感じた。


 どこか冷たい風が、俺の肌を刺す。空気が張り詰めた感じがする。


「あれは…!」


 あまりに巨大な、白い大蛇。俺の目の前に、突然ぬるりと姿を表したのだ。


 …一瞬、目の錯覚かと思った。あまりに「当たり前」みたいに、そこにいたから。


 大蛇が、全てを見透かすような知性を感じる目で、俺を見ている。言いしれない緊張感のようなものが、俺の身体を固まらせる。


 俺はゴクリとつばを飲んだ。


「ヒノキ、そんなに緊張しなくて大丈夫だよ?あの大蛇様、すごく優しいからね」


 セリが俺の手をぎゅっと強く握る。たったそれだけで、俺の緊張はみるみる解けていく。


 

 …突然のことで驚いてしまったが、確かに冷静になってよく見てみれば、あの大蛇はとても優しそうな目をしている。それに、しっかり見ればかなり美しい。


 …なるほど。


「あれがこの森のヌシなんだね」


 セリに聞くまでもなく、俺はあの大蛇がヌシだと確信している。


 おそらく、あの大蛇には「生き物」のはずなのに、「広大な自然」のような雰囲気があるからだろう。あんなに白い体が、この暗い森に不思議と溶け込んでいる。


 生物でありながら、自然のような存在。


 …なんか、いいな。俺もいつか、あんな雰囲気を醸し出す存在になりたい。自然とそんな願望が頭によぎった。


「僕は大蛇様って呼んでる!すごく神秘的でしょ!?」


 確かにあの大蛇様には、どこか神聖な雰囲気を感じる。全てを見守るような優しげな目、デカすぎる巨体、纏う清らかな空気感――どこからどう見ても、偉大な存在にしか感じないもんな。


 うん、俺も大蛇様って呼ぼう。



「こんばんはー、大蛇様」


「かっか!」


「わん!」


 みんなが大蛇様に挨拶をする。


 …なんか、みんなとてもフランクに接しているな。セリなんて手を降っているし、閣下やクスネも普通に駆け寄って行っているし。


 みんな恐れ知らずだなあ……まあ、大蛇様もそう接してもらって嬉しそうだし、いいのだろうけど。

 

「あっ、えと……大蛇様。はじめまして!ヒノキといいます!こんばんは!」


 俺も遅れて挨拶すると、大蛇様も舌を震わせて答えてくれた。


 うん、大蛇様、思ったよりお茶目だ。この様子を見ると、大蛇様は堅苦しいのより、肩ひじをはらずに交流したほうが喜んでもらえそうだ。



「わん!」


 クスネが大蛇様の近くでひと吠えした。とても尻尾を振っている。


 何事かとクスネの周囲をよく見てみると、そこには小さな数匹の白いヘビが、大蛇様に寄り添うように這っていた。


 どうやらその小さなヘビたちと、クスネは交流していたようだ。


「なあセリ?あの小さいヘビ、大蛇様の子どもかなあ?可愛いなあ…」


「そうだと思う!いつも一緒にいるし、なにより大蛇様があの小さなヘビたちを見る目が、すっごく母性に溢れているもん!」


 大蛇様は、お母さんヘビだったようだ。



「ねえ大蛇様?しばらくの間、僕たちを乗せて行ってくれない?」


 セリが突然なんかすごいことを頼みだした。


 えっ?いいのそんなこと頼んで?失礼に当たらない?


 …と、俺が思い悩んでいるうちに。


 大蛇様は俺とセリをその頭でぽんとかち上げ、空中に放り出し――気づけば、俺たちは大蛇様の頭の上にいた。



 …突然のことに、驚く暇もなかった。一瞬頭が真っ白になっちゃったよ。


 でも、これはあれだよな。乗せてくれるってことだよな?


「しゅるる」


 おどけたように、大蛇様は舌を震わせる。大蛇様はやっぱりお茶目だ。


「なんか、かち上げられた時も、着地の時も、不思議と痛くなかったな」


「大蛇様は優しいからね」


 答えになってないようなセリの返答に自然と納得しながら、俺は両手を後ろについて、身体を預けるように座り込む。


 てのひらに大蛇様の肌がじかに触れる。ひんやりとしているのに、奥に生き物の鼓動のような微かな温もりがある。しっとりとした鱗の感触が、ざらりとした硬さを返してくる。鱗と皮膚の奥には、強靭で柔らかい筋肉が蠢いているのを感じる。


 その不思議な触り心地に、俺は改めて「ああ、やっぱり本物のヘビなんだな」と、妙に納得してしまった。


「あ、そういや、閣下とクスネはどうしてるだろう?」


「二匹とも大蛇様の尻尾側の方に乗って、子どもたちと交流してるみたいだよ」


 と、そんな風に頭の上で会話をしていると、大蛇様は動き出した。


 そのスピードは思ったよりも早い。全く動きによる振動を感じないのに、景色はどんどん流れていく。


 すると――


「ん?なんだか……うわわわわ!」


 突然視界がどんどん高くなっていく。大蛇様が空に頭を伸ばしているのだ。どうもまた、大蛇様のお茶目が発動したようだ。そのようにして、俺たちはしだいに上へ上へと運ばれていった。


 そして、背の高い木を抜け、この森の天井を突き破ると――


「おお!すごい!」


 月明かりの当たらない深い森から、視界が開け、一気に明るくなった。


「ヒノキ!上を見て!」


「おお……月が綺麗だ…」


 邪推かもしれないが、きっと大蛇様がいきなりこうしたのは、この景色を見せたかったからだろう。


 この森、月が見える場所って限られているからなあ…


「さあヒノキ、お弁当を出して!ここでお月見しよう!」


「ナイスアイデア!なるほど、お月見するためにお弁当を持ってきていたのか!」


「僕は元々大蛇様の上でのんびりお弁当を食べようと思ってただけだったんだけど……お月見までできたのはラッキーだね!」



――そうして俺たちは、大蛇様の頭の上で、のんびり月を見ながらお弁当を食べることにした。


「ねえヒノキ。『月が綺麗ですね』」


 セリは俺の肩に頭を預け、ふいにそう呟いた。


 セリは俺に前世があるということを知っている。ここに来てからはやっていないが、子供の頃は前世トークをよくせがまれていたので、しょっちゅう話していた。その時にアイラブユーを「月が綺麗ですね」と訳した文豪がいるという話題を出したことがあり、セリはそれを覚えていたのだろう。


「なんだっけ、『死んでもいいわ』って返せば良いんだっけ?……でも、あれだわ。言われて分かったけど、なんか言葉遊びがすぎて、好意を伝えられてるって感じはしないな」


 なんか遠回りなんだよね。正直俺の好みではない。俺の場合はもっとストレートに好意を伝えられる方が嬉しい。


「じゃあ、もしヒノキがアイラブユーを愛してる以外に訳すなら、どんな感じ?」


 そうだなあ…


「要は女性を口説いているんだよね。だったら、俺ならこう訳すかな?『焼き肉奢ってあげる!』」


 これ、最強の口説き文句じゃない?絶対好意伝わるだろ!


「ふふ、なにそれ。全然ロマンチックじゃないよ。ヒノキは文豪にはなれないね」


 そんな風に笑い合いつつ、俺たちはお月見を楽しんだのだった。


次回予告:情報量が多い!

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