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貞操逆転スペースファンタジースローライフ!?~男女比が1:10の宇宙で男に生まれた俺が、辺境の無人惑星でスローライフする姿を配信する  作者: ながつき おつ
5章 幻の惑星、ジ・アース!

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本格武術!魂咲の行!

読んでいて少しでも感情が動いたら、評価・リアクション・ブックマークをお願いします。



 木工が終わり、その日の夕方。


 今日から、本格的なアンドロイド流武術の修行に入る。


 俺は今、ヨヒラと二人でトレーニングルームにいる。修行を見せるとハードすぎて視聴者が引いてしまうようなので、配信は無しだ。


「さて、このアンドロイド流武術は、“転生の行”、“魂咲(こんしょう)の行”の二つからなります。御主人様はウォーミングアップの転生の行をクリアしたので、今日から魂咲(こんしょう)の行に入ります」


 てことは、その「魂咲(こんしょう)の行」とやらからが、本格的なアンドロイド流武術ってことだな。


「この魂咲(こんしょう)の行は、決められたメニューをこなすというものではありません」


「というと?」


「自分でトレーニングメニューを作ることも、修行内容の一環なのです。まあ、ある程度の指針はありますがね」


「ほう…」


 それはまた、なかなか自由度の高そうな武術だ。


「そして、魂咲(こんしょう)の行は、何度も繰り返しやる類の修行です。『修行を繰り返し、何かを見つけ出す』それが、この修行の目的となります」

 

 なるほど。大事なのは、何かを見つけ出すことなのね。了解。


「やることはとにかく『内的感覚の強化、及び非合理性の追求』です。これを一瞬たりとも忘れないでください。どんな修行でもいいので、とにかく自身を見つめ続け、合理的な動きをしすぎないように気をつける。まあ、後半の非合理性の追求については、合理的な動きが染み付いているアンドロイド向けの教えですので、人間には簡単かもしれませんね」


 いやいや。人間だって非合理的な動きをするのって、なかなか難しいぞ?


 俺のやっている筋トレなんて、合理性の塊だしな。そう考えれば、非合理的な動きをするときなんて、感情に頭が支配されている時くらいじゃないか?


「でも、なんで非合理性の追求なんてするのかな?合理的な方が良さそうに感じるが…」


「何でもできるアンドロイドが、さらに可能性を広げるため、と言われてはいますね。このアンドロイド流武術を生み出したアンドロイドの始祖は、非合理性の中にこそ、そのアンドロイドにしかない“何か”がある。非合理を理解したアンドロイドは、人間のように何にだってなれる。そう信じていたようです」


 アンドロイドの始祖?初めて聞く言葉だ。


 まあ、何事にだって「最初」はあるから、アンドロイドだって始祖がいるのは当たり前か。


 でも、この宇宙ではアンドロイドという存在があまりに当たり前に浸透していることと、アンドロイドの歴史をざっくりとしか知らないことから、始祖という存在はどうしてもピンとはこないがな。


「それにしても、“何か”、ねえ……そこはふわっとしてるんだね」


「ええ。そもそも始祖という存在がふわっとした存在ですからね」


「というと?」


「アンドロイドの始祖については、ある日を境に、始祖を生み出した博士とともに、完全な消息不明になりました。その後、どれだけ探しても痕跡すら見つけることができなかったそうです。ゆえに、始祖は我々ですら理解不能の存在。消えた理由、方法に関して、一切不明なのです」


 博士とともに「完全な」消息不明?しかも、捜査のプロであるアンドロイドですら理解不能の存在?この技術の発達した宇宙で完全に消息不明になるなんて、相当なことだぞ?


 たしかに、バーチャル旅行の時にするような「認識阻害措置」をはじめ、自身の存在を誤魔化す方法はいくらでもあるが……大抵そういう技術は、悪用するのが難しく設定されている。


 それに、そもそも脳内にチップが埋め込まれている人間やアンドロイドは、本気で捜索しようとすれば、絶対に見つけることができる。そうでないと、緊急時などに、その人の場所を特定できないからな。安全のための当たり前の機能なのだ。


 それならチップを取り外せば良いのではないかと疑問があるだろうが、これはそんな簡単な問題ではない。


 このチップを埋め込むという慣習は、相当昔から行われている行為だ。それこそ、アンドロイドが生まれるよりも、絶対に昔のことのはず。


 よって、この宇宙では当たり前の様に「人がチップを埋め込まれていることを前提とした社会」となっている。


 そんな社会では、チップがないなんて相当な緊急事態だ。もしそんな人がいれば、あっという間に保護対象となることだろう。


 それにそもそも、チップがないと買い物すらできないし、宇宙船を動かすことも、どこの惑星にも入ることすらできないんだぞ?だからこそ、そんな社会の中で“完全に姿を消した”なんて、かなり信じがたい。


「それにしても、博士と共に完全なる消息不明ねえ……方法に関しては全く分からんが、理由に関しては、こういうときは“駆け落ち”っていうのがあるあるだよね」


 アンドロイドでも恋をすることがあるっぽいしね。なにせ、ヨヒラの母のルリさんは夫という言葉を使っていたし。


「駆け落ち……ですか。まさに恋愛脳の人間らしい、面白い視点ですね。我々アンドロイドには恋愛の感情が理解できませんから、そんな仮説は思いつきもしないでしょう」


 恋愛脳って……人間のことをそんなふうに思ってたの?まあ、間違ってはないけど、言い方何とかならない?


「ご存じの通り、アンドロイドは恋をしません。もし仮に恋をする機能があったとしても、合理的なアンドロイドであれば、人間と愛を育むことはないでしょう。なぜなら、アンドロイドが人間と恋愛関係になると、高い確率で戦争が起こると予測されるからです」


 え?アンドロイドと人間が恋したら、戦争が起こるの?因果関係がよく分からん。


 …ま、そのことはまた今度しっかり聞くか。話がもっと寄り道しそうだし。とにかく今は俺の仮説の話がしたい。


「こうは考えられない?博士と始祖さんは恋をしてしまったから、争いを避けるために消えたんじゃない?」


 ヨヒラは俺の仮説を聞き、しばらく考え込んだ。


「…気持ち的には『稚拙な仮説』と一蹴したいところですが……その仮説、少し思い当たることがあります。アンドロイドにはこのような不思議な言い伝えがあるのです。『アンドロイド流武術を極めると、恋ができる』と。まあ、あくまで誰も信じていない言い伝えですがね」


 へぇ…


 じゃあさ。もしかしてだけど…


 うーん……これ、聞いていいのかなあ?賢いヨヒラなら、こう質問すると不自然に感じるかもしれない。


 …まあいいや。思いついたから、聞いちゃおう。


「ねえ、ちょっと話は変わるけど、ヨヒラの母親のルリさんって、アンドロイド流武術が得意だったりする?」


「……ええ。私の母はアンドロイドにしては珍しく、アンドロイド流武術だけを極めている変わり者です。おそらくアンドロイドの中では、誰よりも練度が高いでしょう」


 ほら!やっぱり!ルリさんって、アンドロイド流武術を極めたから、言い伝え通り恋ができたんじゃないか?因果関係は不明だが、絶対そうだって!


 いやあ……スッキリしたなあ!


「なぜ御主人様がその結論を出せたのかは理解不能ですが、どうも隠したいことのようですので、追求はしないでおきます。さて、話は終わりです。そろそろ修行に入りますよ」


 …危ない危ない。ちょっと迂闊だった。というか、ルリさんに直接聞けば良かったな。


「で、なんだっけ、修行は自分で作るって話だったよな?」


「はい。ただし、少しばかりルールがあります」


 続けてヨヒラは「主なルールは三つです」と、指を折りながら説明する。


「音も光も一切反響しない、“無音無光空間”で修行すること。なるべく決まり切った型のような動きはせず、ランダム性のある修行方法にすること。滝行でもし何かを身に着けたなら、それを修行に取り入れること。あくまでこのルールに沿った上で、考えてみてください」


 ふんふん……聞いているだけだと、結構簡単そうだ。


 要するに、真っ暗かつ音の一切響かない部屋で、スター状態になりながら、直感的に身体を動かせば良いんだよね。

 

 …じゃあ、普段の俺の筋トレをアレンジすれば良さそうだな。


 具体的には、最近俺の中で流行りの筋トレ『十倍重力化で、オリジナルラジオ体操第百』をランダムにやる。


 よし!方針は決まった!早速実践だ!


「…おっと、もう方針を決めたのですね。アンドロイドなら、この“修行を自分で生み出す”というところで必ずつまずくのですが……流石は御主人様です」


「まあ、俺は人間だからな。それくらいお茶の子さいさいってわけよ。じゃあヨヒラ。このトレーニングルームを、無音無光の部屋作りと、ついでに高重力設定にしてくれるか?」


「承知しました。では、頑張ってください。アンドロイド流武術・魂咲の行。スタート!」



――そうして俺は、やる気まんまんで、本格的な修行に入った。


 …が、しかし。この修行は、思わぬところでつまずくこととなった。


「ギブアップ!ヨヒラ!今すぐ部屋を通常に戻してくれ!」


 俺のそんな宣言もあり、部屋が普通に戻った。


「いったいどうしましたか?かなり順調に修行は進んでいましたが……あら?御主人様、お顔が真っ青ですよ?それに、どうして目に涙を浮かべているのですか?」


 そう、今の俺は、精神的にかなり弱っている。


 この無音無光の空間では、思考がぐるぐると巡る。自然と心の奥深くの自分自身と向き合うことになるのだ。


 その結果、俺がどうなったのかと言うと…


「さ゛み゛し゛す゛き゛る゛!」


「ええ…」


 思わず俺は、ヨヒラに抱きついた。今は人肌が恋しくて仕方がなかったのだ。


 最初は「自分探しの氷上みたいなもんでしょ?楽勝じゃん!」とか軽く考えていたのだが、あれとはわけが違う。本当に何にも見えないし、自身の心臓の音、呼吸音すら聞こえないし……何より、他の生物の気配を一切感じないというのが、ものすごく怖かった。


 ヨヒラは「なぜ寂しくなるのか心底理解できない」と困惑しているが、とりあえず俺が落ち着くまではこのままでいてくれた。


 …この修行、どうやら俺にとって、乗り越えるにはかなり高い壁となりそうだ。



次回予告:いいからドーピングだ!!



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