機械武術!序式・転生の行!
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「では、アンドロイド流武術について、一から教えますね」
「おう!」
俺はヨヒラにクスネを預けたのち、トレーニングルームでヨヒラからアンドロイド流武術を教えてもらうことに。
「では、まずは座学から入りましょう」
>私もアンドロイド流武術は気になる!
>一ミリも聞いたことない武術!ワクワク!
>果たして、ここにアンドロイドの強さの秘密があるのか!?
「まず、アンドロイド流武術とは、“最弱の武術”と言われています」
…え?最弱?
>は?
>嘘つけ。アンドロイドって最強じゃん
>意味が分かりません!
「なぜ最弱と言われているかというと、この武術は“強者のための武術”だからです」
強者のための武術?
それだけ聞くと強そうな武術に聞こえるが……ま、一旦最後まで説明をきこうか。
「そもそもこの武術は、強靭なスペックを持つアンドロイドのために作られたものです」
まあ、「アンドロイド流武術」と名がついてるくらいだしな。
「そんな元々が強者のための武術ですので、アンドロイドのように元々身体が強靭ではない人間がこの武術を習得しようとしても、得るものが少ないのです。故に、“人間にとって”最弱の武術というわけです」
>なるほどね
>アンドロイド流武術が無名な理由はそこにあるっぽいな
>貧弱な人間は最強の武術である“宇宙CQC”を習得すればいいもんな
「え?じゃあ、俺も強くなるためには、その武術を習得しない方がいいんじゃないか?」
「はい。強くなるという一点においては、“宇宙CQC”を習得するのが最も効率的です」
ええ……強くなれないのなら、習得する意味なくない?
>だよなあ…
>悲報。ヒノキ、強くなれない
>え?でも、ヒノキは習った方がいいんだよね?
「それなのにハッセンさんが俺にアンドロイド流武術を推薦したのは、いったいどういうことだ?」
「お祖母様は武術の達人。実際に“身体の声”を聞けば、その人の成長に一番適切な武術を見極め、勧めることができます。経験と直感を重ねた総合的な判断でこの武術に決めたのでしょうが――真意はお祖母様にしか分かりません」
続けてヨヒラは、「あくまでこれは予想ですが…」と前置きしたのち、その予想を聞かせてくれた。
「おそらくですが、御主人様の肉体があまりに規格外で、アンドロイドの平均値に届きうるくらいのスペックがあったことも、この武術を推薦した理由の一つでしょう」
>はあ!?やっば!!
>ヒノキ、人間をやめていたwww
>ええ……アンドロイドに届きうる人間とか、もう人外だろ…
>まあ、アンドロイドは肉体だけじゃなく、技術も思考スピードもその他も凄まじいし…
>おまえ、実はそんなにすごかったのかよ
ヨヒラ曰く、肉体スペックの数値だけで言うと、俺はすでに人間としては常識外れの値らしい。
…ホントにぃ?
俺の認識では、俺なんかまだまだ道半ばだよ?だって、俺はまだ二十五歳。人生をかけて筋トレをしている俺からすれば、まだ筋トレという山の一合目くらいしか登っていないイメージだったんだが…
そんな俺の考えはそのまま顔に出ていたらしく、ヨヒラは呆れ顔で口を開く。
「御主人様。この機会にちゃんと事実をお伝えしますね。御主人様が毎日当たり前のようにやっている筋トレは、常人なら気が狂ってもおかしくないくらい、ぶっ飛んだハードさなのですよ?」
あら、そうなの?別に俺がやっていることなんて、限界まで筋トレして、特殊な装置に入り数分仮眠、そこで筋肉の疲労を取る。また限界まで筋トレをする……これの繰り返しだ。
確かに気力はガリガリ削られるが、やってること自体はとてもシンプルだから、やろうと思えば誰でもできるくないか?
…と思ったが、この宇宙の人間は、努力の基準がぬるいからなあ……ここまで死ぬ気で頑張ろうと思わないのが普通か。
娯楽が金になる社会――これは、頑張った分だけ結果が返ってくる社会ではないということでもある。だから、俺の「根性でとにかくやる」って発想の方が異端なんだろうな。
それに、俺たちの寿命は長いので、わざわざ毎日を全力で駆け抜ける必要なんてない。みんなからすれば、俺は「マラソンのスタートから全力ダッシュしてる滑稽なやつ」ってことになるんだろうな。
…でもさ、毎日を全力で生きても、意外となんとかなるもんだよ?
「少し話がそれましたね。話を戻しましょう。では次に、アンドロイド流武術が、どんな思想・目的で設計されたのかをお話しましょう」
おっ!あれか?「一撃必殺!」だとか、「生き残るための武術」だとか、そういう流派のようなものか!それはとても大事だな!
「アンドロイド流武術のテーマは、『内的感覚の強化、及び非合理性の追求』というものです」
はえ?
「…もっと簡単な言葉で説明すると、アンドロイドがそれぞれ個性を見出し、成長するための子供向け武術、といったところでしょうか」
なるほど?テーマこそ難しくてよく分からなかったが、概要はなんとなく分かった。
「この武術の大きな特徴は、とにかく自分と向き合うことで、自分でも知らなかった“新たな自分”を発見できるというものです。ほとんどのアンドロイドはこの武術の修行をきっかけに、自分なりの戦い方を見つけていきます」
ヨヒラは楽しそうに、「私の場合は、この背中の戦斧です」と、背負っていた斧をぶんと一振りした。
>ヒエッ……最近慣れてきたとはいえ、改めて見るとその斧怖い…
>ヨヒラ様の斧フェチはその武術が元凶だったのか…
>諸悪の根源
「えっと……要するに、オリジナルの必殺技を習得する武術ってことだよな!それなら、やる気出てきた!」
「…まあ、間違ってはいません」
>ヒノキって、物事の捉え方が独特だよなあ…
>ちょっとヨヒラさん困惑してて草
「一応伝えておきますが、この武術はあくまで初歩的なもの。これをやれば強くなれるといった代物ではないですからね。現に、アンドロイドでも月に一度程度しかこの修行は行いません」
「ふふふ~必殺技~♪」
「…聞いていませんね。まあいいでしょう。では、後は実践で学んでいきましょうか。やる気があるうちに始めるほうが習得効率はいいですからね。まずはウォーミングアップからです」
さて、どんな修行が始まるのだろうか?ワクワクしてきた!
「ご主人様はこの壁を背に、座っていてください。……はい。それでオッケーです。では、始めますね。この修行のルールは、目を開けずに動かないことのみ。目標は完全なる静止状態に至ることです。最初は難しいと思いますが、とにかく目標に向かって頑張ってみてください」
俺は指示通りに目をつむり、壁を背にあぐらをかく。
「では、アンドロイド流武術序式・転生の行。“滝行”スタートします」
お、滝行か!前世ではそういうのもあったが、今世でその言葉を聞くのは初めてだ!
よし!滝行ってなんか楽しそうだし、多分俺には簡単だろう!
余裕でクリアしてや…
ドオォォォォォン!!!
え?何、このおtあばばばばばば―――!!
(痛い寒い重い!それに、滝の水量?流れ?とにかく勢いが強すぎる!身体が潰れそうだ!)
俺の背に、思っていた倍以上の暴力的な圧力がかかる。きっつ!なにこれ!?
「聞こえていますか?御主人様。まだレベル一で安全ですので、このレベルで身体を慣らしてください。時間が経てば、どんどん難易度が上がっていきますからね」
水の轟音で周りの音が何も聞こえない中、ヨヒラの声が不思議とスッと頭に入ってくる。
ええ!これからもっとレベルが上がるのか!?
これはかなり気合を入れないとダメなようだ。
…いて!痛い!
なんだかさっきから、この滝から水以外の何かが流れてきていて、普通に痛い!そのせいで集中力が途切れてしまう。なにこれ!?
「この滝には、色々なものが水に混じって落ちてきます。今御主人様が顔をしかめている原因は、ただの小石です。レベルが上がると、岩や氷も混じってきます。ちなみに、水もただの水ではありません。少々特殊な水となっております」
ヨヒラは続けて、特殊な水について説明を始めた。
――聞いた話をまとめると、どうもこの水はアンドロイドの身体を作成する時の原材料にも使われる、“ギャラクシークリスタル鉱石”の成分が溶かしてあるらしい。それによって、この水はオーロラのような見た目に変化し、高エネルギーを持つらしい。
そして、この特殊な水にさらされ続けると、アンドロイドのボディが洗練され、固くなったりする効果があるらしい。他にも、血行促進、美肌効果、ストレス軽減など、様々な良い効能があるとのことだ。
いや、温泉じゃないんだからさあ…
で、肝心なのは人間に対する影響だ。
この水は細胞一つ一つを刺激するらしく、アンドロイドほどではないが、人間にも良い効果がある。ただ、高エネルギーを持った水にさらされ続けるというのは、それだけで心身に大きな負荷となる側面もあるので、気をつけてくださいとのことだ。
「レベルが上がるにつれ、水の粘度、密度、温度、さらには、デバフ付きの水になるなど、多種多様に変化します。いずれ、水の流れの方向すらランダムになるでしょう」
ってことは、上から落ちてくるだけじゃなくて、下からすくい上げられるみたいなことも起こり得るってこと!?俺の知っている滝行じゃない!完全に別ゲーだ!
「では、私も久々に反対側で同じ修行に入りますので、後はお一人で頑張ってください」
待ってヨヒラ!あなたは御主人様を買いかぶっています!こんなの、普通に死んでしまいます!
いて!痛いなもう!小石の分際でよお!
水の勢いが強すぎて、小石でも結構痛いんだからな!
ああ。今、なんでこの武術が流行ってないのかが、ストンと腑に落ちたわ。
こんなの、人間が耐えられる訳ないからだ!
(この修行方法を考えたやつ、バカだろ!…いてっ!)
次回予告:これにはお坊さんもタコ殴り




