閑話休題 毒花女達!
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トリカ視点
「はあっ…はあっ……」
もう、何時間トレーニングしただろうか?
過剰なトレーニングにより、わたくしの身体はもうヘロヘロだ。
それでも、今はトレーニングをやめる気にならない。せめて、この胸の内に秘めていた悔しさを消化しきるまでは。
「このままじゃ……絶対、終わらせないわ…!」
一人になると、この胸の内の悔しさを隠すことはもう無理だった。
招待された母たちを見送り、宇宙船に戻ったわたくしは、身体を休めることも忘れ、真っ先にトレーニングに励んだ。
そうしていないと、この胸の内の激情で、どうにかなってしまいそうなのだ!
「あのクソババア……今度は絶対に、わたくしの歌で跪かせてやるからな…!」
…悔しい。悔しくて仕方がない!
昨日改めて母の歌を生で聞いて、一瞬でも「負けた」と思ってしまったわたくしが許せない。まだまだスケールの小さいわたくしが、どうしても許せない。
歌手としての総合力なら、依然として母には勝っている。歌唱力だけでいっても、実力は肉薄していた。
でも、そんなものでは満足できない。わたくしは、全てにおいて母を超えたいのだ。
「わたくしは、太陽を……超えるのよ…!」
わたくしは“歌唱力トレーニングルーム”で、決意を声に出す。
以前ヒノキのお母様はこう言った。
『ヒノキが木だとしたら、トリカちゃんは恒星光なのよ』
ねえ、ヒノキ?あなたはその例えに納得していましたわよね?わたくしが、あなたにとっての恒星光だと。
ヒノキにとって、日光はとても大事なもので、なくてはならないものなのでしょう。それは分かっています。
けれど、わたくしはそんなもので終わる気はないですわよ。
わたくしにとって恒星光なんて、スケールが小さいもの。
わたくしが目指すもの。それは、この宇宙すべてを照らす光。全宇宙を照らしてしまうほど、明るい恒星。
たった一つの惑星を照らすだけの太陽なんかじゃ、わたくしは満足しないの。
「太陽なんて、通過点にしてやる!歌ですべてを焦がすほど、明るく光輝いてやるわ!」
そうして、この日わたくしは、気を失うまでトレーニングを続けたのだった。
――次の日。わたくしは自室のベッドの上で目覚めた。気を失っている間に、機械によって自動的にここに運ばれたのだろう。
ベッドに腰掛け、気分の落ち着く甘い紅茶でも飲みつつ、ほっと一息つく。
「…昨日は頭に血が上って、少々感情に任せて無茶なトレーニングをしすぎましたわね」
昨日のことを思い出し、大きくため息を吐く。
そんなふうにがむしゃらに努力したって、いきなり成長できるわけではないとは分かっている。論理的で科学的、精密で綿密なトレーニングこそ、成長への一番の近道だ。
でも、歌手という生き物は感情を大切にするもの。機械のようにトレーニングしたって、歌はうまくなっても、魂を揺らす音楽は歌えない。機械では歌姫にはなれないのだから。
だから、たまにはそういう日があったって良いのだ。あんな非効率で無茶苦茶なトレーニングでも、わたくしには必要な時間だった。
すべての経験を糧にして、わたくしは輝く。成長に限界はないのだ。悔しいという感情を受け入れ、糧にし、悔しさすらも楽しむ。そうやって無限に成長し続ける。それでこそわたくしだ。
紅茶の温かさと甘みで心も身体も落ち着いてきた頃――思い起こすのは、今月あった様々な出来事。
今月の始めは、わたくしは確かに怒っていた。ヒノキが勝手にわたくしの母をカマクラホテルに招待したからだ。
「でも、本当は…」
正直、「怒り」なんてほんの少ししかなかった。怒りというより、「事前に何も言ってくれなかったことにスネている」といった感情の方が正しい。
でも、ヒノキはわたくしがかなり怒っていると勘違いし、慌てている様子。
そんなヒノキは、どうにかわたくしの怒りを鎮めようと、配信外、特にベッドの上で、まるでお姫様を扱うときのような甲斐甲斐しい態度で接してくれました。
ふふ、もうとっくに許しているのに、気にしすぎるヒノキはとてもかわいかったわ。まるで、留守番中になにかやらかしてしまった子犬のよう。とても、母性本能がキュンキュンしました。
どうもわたくしは、ヒノキの困った顔が大好きらしい。そして、どうもヒノキは罪悪感を突かれて責められるのに弱いらしい。
「ふふふ、ヒノキ?わたくしは攻める手を止めないわ。悪いわたくしを許してね?」
朝から最愛の男のことを考えたからか、昨日とは打って変わって気分がいい。
ですが、仕事の時間にはまだ早い。いつもよりゆっくりと朝の時間を楽しみましょうかね。
なんだか今は、無性に朝から肉を食べたい気分ですわね……よし、今日の朝食はTボーンステーキにしましょう。
メニューを決めるとほぼ同時に、自動調理器で作られた朝食が、シュンと目の前に現れた。
…さて、朝食を食べながら、もう少し今月あったことを思い出しましょうか。
今月は仕事以外では、何があったかしら?
ヒノキと宝さがしをしたり、配信外でヒノキの作った秘密基地で過ごしたり、配信外でヒノキと二人っきりでまた海デートしたり……でしょうか?
最近のヒノキは配信が終わると、誰かと過ごすことが多くなりましたからね。その時間でデートを楽しんでいるというわけです。
ふふ、ヒノキとのデートは、何度やってもいいものですわね。まさに至福のひとときでした。
「わたくしをここまで夢中にさせるなんて……罪な男」
ヒノキと一緒にいると、満たされる。
なのに、満たされた途端、もっともっと欲しくなるのだから、女というのは本当にやっかいだ。
そうやって、どんどんわたくしは欲張りになっている。そんな自分が、わたくしは嫌いじゃない。
「だからヒノキ、もう戻れませんわよ?」
あなたの想像するような、ぬるま湯のような恋愛では終わらせてあげない。
攻めて攻めて攻めまくって、熱く刺激的な愛で、あなたを燃やしつくしてあげますわ!
どれだけわたくしが苛烈に攻めようが、きっとあなたなら大丈夫。
だって、ヒノキのお母様も、こう言っていたでしょう?
『あなたが木だとすると、セリちゃんは土で、トリカちゃんは恒星光(日光)なのよ』と。
それならば――
たとえどれだけ燃えるような強い光でも、あなたなら成長の糧にしてくれる。そう信じることにしたのです。
だって、わたくしが好きになったヒノキという男は、大木のような力強い存在なのだから。
そしてムカつくことに、あなたはかなり根強くセリという土に根付いている。あなたの土台が安定しているのは、セリの支えがあるからなのでしょう。
…けれど、だからこそ――わたくしはあの娘を利用してやるつもりですの。
土台が安定しているということは、わたくしが心おきなく攻め立てても、あなたはびくともしないということでもある。だから、遠慮なんてしませんわ。
使えるものは全て利用し、攻めまくる。それが、わたくしのやり方ですから。
「安定なんて、させてあげませんわ。感情を揺らしまくって、あなたをめちゃくちゃにしてやりますわよ……ふふふ」
朝食のステーキを骨までしゃぶり尽くしながら、わたくしは獰猛に笑うのだった。
ステーキで満たされたお腹をさすりながら、しばしの食休みタイム。仕事に取りかかるには、まだ微妙に早い。
…暇つぶしがてら、もう少しだけ今月のことを思い起こしましょうか。
あと今月あったことでいえば…
些末な事ですが、海でウツギと喧嘩したり、あのクソババアと歌で喧嘩したこと、くらいですかね。
思えば、今月は喧嘩をたくさんしました。
喧嘩の原因?全て、相手の非ですわね。
誰がなんと言おうと、わたくしは一切悪くありません。
でも、いい女は懐が深いものでしょう?わたくしはいい女なので、特別に許してさしあげました。寛大なわたくしに感謝なさい?
――そろそろ仕事の時間ですわね。
今月は約二週間後にヒノキとのシェアハウスがある。その時までに、終わらせられる仕事は、なるべく終わらせておきたい。
今月も、攻めて攻めて、攻めまくりますわよ!
ウツギ視点 メッセージ上でのやり取り
ウツギ ねえねえ聞いてよ。ホタル!ヒノキったら酷くない!?
ホタル めんどくせぇ… もう、何度も聞いたよ…
ウツギ うちが満足するまで何度でも聞いて!
ホタル ( ´Д`)=3はぁ… あんたとヒノキさんが仲がいいのは分かったから、いちいちそんなことで連絡しないでくれる?
ウツギ そんな事言わずにさあ!聞いてよ!まあ、勝手に話すんだけどね!でね、今日の夕方のことなんだけど――
ホタル (#^ω^)ピキピキ
このように、友達同士仲良く?メッセージのやり取りをしていたのだった。
次回予告:掲示板回




