公園制作!その3!閣下大はしゃぎ!
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セリから「昔俺たちが遊んだ公園を再現する」と聞いて、少し疑問が浮かび上がってきた。
再現の許可を出す前に、一応確認しておこう。
「俺たちが子供の頃遊んでいた公園って、ここで再現出来るの?」
前世の記憶がある俺から言わせてもらうと、現代の公園って、俺からしたらもはや「遊園地」とそんなに変わりないんだよね。
そんなの、どうやって再現するんだ?
いろんな高度な技術がたくさん使われているはずだから、再現なんて不可能じゃない?
「別に完全再現するつもりはないよ!僕がやろうと思っていたのは、簡易的な再現。あ、でも、ゲームで作ったものを現実で再現するサービスを使って、ここに百パーセント全く同じものを完全再現するのも楽しそうだね!」
「ちょっと!?それはダメ!あのサービスは流石に金がかかりすぎる!」
「ちぇー。でも、ただ簡易的に再現するだけだったらいいでしょ?」
「それならもちろん、全然いいぞ」
「ありがと!じゃあ、早速始めるね!」
「かっか!」
「おう。閣下も自由にやってくれ!」
そのようなやり取りを終えると、セリは「この辺かなぁ」と一人でぼやきながら、公園を歩き回りだした。閣下も見るからにやる気満々で、まずは一通りこの公園を回ることにしたようだ。
その間に、俺がふとコメント欄を見ると、
>あなたたちって公園でどんなふうに遊んでたの?
>子供の頃の話興味あるから聞かせろ
>私たちがお前の昔話を聞いてやるから感謝しろよ
>しかたないなあ…ほら?話してもいいよ?
こんな流れになっていた。
なんでコイツらこんなに上から目線なんだよ…お前らがただ俺たちの昔話を聞きたいだけだろうに…
というか、そんなコメントをされたら、俺が別に聞きたくもない昔話を聞かせる嫌な奴、みたいに見えるじゃん!
「お前らがそんなふうに言うなら、絶対に話さないからな!」
お前らには教えてやんない!ばーかばーか!
>やれやれ…ほんとわがままだなあ
>はいはい。また話したくなったら話してくれればいいからね…ほんと男の子って駄々っ子なんだから♪
>そう。あの頃は楽しかった。それは俺がまだチ◯毛も生えていないオスガキだった頃―――
おい!無理やり俺の回想に入るな!もう付き合ってられん!こんな奴ら放置だ放置!
「よし!ここにしよう!」
コメント欄と遊んでいると、突然セリの声が聞こえてきた。どうやら、セリが場所を決めたようだ。
何をするか気になったので、俺は少しの間、セリの様子を見ることにした。
チャララララン♪ 荷物が届きます♪
そんなお知らせ音とともに、セリが指定した場所に、ある二つのお届け物がワープしてきた。何かを買ってここに届けてもらったようだ。
セリが買ったあの二つ、俺はとても見覚えがある。
俺とセリが子供の頃に遊んだ「バックパネル」と「全身鏡」に、見た目がそっくりだからだ。
「ふふ、どう?懐かしくない?これで子供の頃、写真を撮っていっぱい遊んだよね」
セリが俺に振り向き、届けられたものを優しく撫でながらそう言った。
俺は優しく笑いながら、コクリと頷く。
あのバックパネルは、設定によってどんな場所でも映すことのできる魔法のスクリーンのようなもの。
あの鏡は、一定の短い時間、どんな姿にでも変身できる魔法の鏡のようなものだ。
二つ合わせて「フォトスポット」として遊べるのだ。それに、二つを組み合わせると、写真のバリエーションは無限大だ。
「えっと?あら。バックパネルは見た目だけ一緒のただのスクリーン。全身鏡はただの鏡なのか。本当に簡易的に再現しただけなのね」
俺がチップで解析してみると、そういう結果がでた。
「完全再現しちゃったら、ヒノキの作った遊具と技術レベルが離れ過ぎちゃうからね」
たしかに、俺の作った原始的な遊具と、俺たちが昔遊んだ高度な技術が使われているフォトスポットが並ぶと、バランスが悪いか。
そこら辺も考えてくれていたなんて、流石はセリだ。
「こういうの、懐かしくて楽しいでしょ?ヒノキも興が乗ってきたんじゃない?きたよね!?じゃあ、次からは一気にどかんとお金を使って、完全再現したものを作るね!いいよね?」
セリが早口でまくしたてるようにそう言う。ようやくエンジンがかかってきたようだ。
「確かに、楽しそうだしいい……危な!危うく流れに任せて許可を出しそうになったじゃん!もちろんダメ!それは流石に金がかかりすぎるからな!」
ここで許可を出していたら、一気に俺の財布がさみしくなっていただろう。あぶねー。
「ちぇー。作戦失敗かあ…最初はこんな感じで小さく再現しつつ、だんだんと派手にやってやろうと計画してたのになあ…」
なんと、セリはしれっとそんな考えを持って公園作りに挑んでいたようだ。
…もしかして、最初から俺の許可を取るために動いていた?
じゃあ、バランスを配慮していたように見えたのは、俺の油断を誘うためだったのかもしれないな。
続けて、セリは駄々をこねるように、バタバタと騒ぎ出す。
「このやり方だと僕の思い描いていたものが完璧には作れないじゃん!せっかく僕たちって地域の公園を遊び尽くして全制覇する“公園破り”遊びをしてたから、公園には人より詳しいのにさあ…」
セリはもっと自由に、現実で公園を作ってみたかったようだ。
セリが俺たちが今まで遊んできた、「鏡の大迷宮」「重力の方向や強弱がランダムに変わる変形型巨大ジャングルジム」「対ロボットかくれんぼ場」「トリックアートおにごっこ場」などのワードを、ぶつぶつと呟いている。
…いやいや。セリさん?あのねえ…
「この小さな公園に、そんな大規模なもの作ろうとするな!」
今セリが呟いたものは、どれも超巨大な施設だ。そんなものを作られたら、お金の面でもこの公園のバランスの面でも、大変なことになる。
「ま、それもそうか。正直本気で大規模なものを作ろうとはちょっとしか思っていなかったから、別にいいんだけどね。じゃあ僕はとりあえず、このフォトスポット周りを装飾したりして、これだけを完成させることに集中するよ」
俺の説得もあり、なんとか諦めてくれたセリ。よかったよかった。
セリに本気で交渉されたら、俺なんてひとたまりもないからな。本気じゃなくてよかったよ。
ふぅと一息つくと、ふとコメント欄に目が入った。
>ニヤニヤ
>へぇ…君、場破りみたいに公園破りしてたんだ?お前にも可愛いとこあんじゃん
>くっそガキっぽくて草wwww
>でも、公園を全制覇ってかなり長い間遊ばないと出来なくね?
>ヒューヒュー!お熱いこって!
あ、今までの会話で、コイツらに俺たちの子供時代の一端がバレてしまった。
別にバレてもいいっちゃあいいのだが、こういう風に囃し立てられると、やっぱりちょっとだけムカつくな。
まあ、そうだよ。俺たちは子供の頃、狂ったようにセリと二人で公園で遊びまくっていた。
その「公園で遊びまくること」が、どうも変わっていることらしく、なぜか若い世代の女性たちから、からかわれる対象となってしまうのだ。
娯楽が多いこの宇宙で、そんなに長い期間公園で遊びつづける子供って、意外にも少ない。
どうも公園は「親に連れられて遊ぶ幼い子向けの場所」みたいなイメージが強いらしいのだ。
聞いた話によると、若い世代は、ある程度成長すると大人ぶりたくなって、公園で遊ぶことを「卒業」とか言っていたそうだ。
その人たちにとって、公園で遊び続けることは、恥ずかしいことらしい。
あんなに楽しい場所なのに、見栄を張って遊ばなくなるなんて、もったいないことだ。
まあいい。茶化してくる奴らなんて、無視無視。そういう人たちは、いっても一部の人だけだからな。逆に「キッズだなあ…」と、優しく見守るのが大人というものだ。
さて、俺も砂場や水遊び場の作成に取り掛かろう。
――それから、数時間が経過した。
「まさか、閣下が一番張り切るとは思わなかったなあ…」
俺はしみじみと呟く。
「でも、閣下が張り切ってくれたおかげで、かなりいい公園ができたんじゃない?」
まあ、たしかにそうだが…
改めて俺は完成した公園を見渡してみる。
こうしてみると、やっぱこの公園、アレみたいだ。
「デートスポット?」
「……まあ、ちょっと閣下がはしゃいじゃっただけだから、許してあげて」
本当に閣下はやる気満々だった。なにせ、閣下待ちの時間がかなりあったくらいだからな
閣下を待っている間は、セリがノリで買った、回転しながら光の軌跡を出すフライングディスクで、俺たちはのんびり遊んでいた。
そうやって楽しくはしゃいでいると、楽しそうな雰囲気に釣られたクスネが突然どこからか飛び出してきた。
それからは閣下が公園づくりに満足するまで、クスネとともに一緒に過ごしたというわけだ。
閣下がやったこと。それは、基本的に俺が作った遊具やベンチの装飾や、アップデートだ。やったことはそれだけ。
まあ、その作業を一人SCエネルギーを使って行っていたので、やりすぎたというわけだ。
閣下は俺が作ったベンチ系の物の背もたれなどに、ハートの装飾などを入れたり、ブランコに二人横並び用のものを付け足したり、全ての遊具にパステルカラーの色を塗ったりなどの作業を、何度も手直しして、完成度の高いものを作り上げていたのだ。
その後姿は、まさに職人。
さらに、俺が作ったばかりの砂場や水遊び場にも修正が加えられていて、シンプルなものから、「映える」ものへと模様替えされている。
「かっか!」
閣下はどこか「ふぅ…やりきった」みたいな表情をして、満足げだ。
…こんな可愛い反応をされると、怒るにも怒れないな。
「ま、怒ることでもないか。完成度が高いことは良いことだしな!なあ、セリ。せっかくだし、この公園で昔みたいにちょっとだけ遊ぼうぜ!」
「そう言うと思って、はい。昔使っていたカメラを、ヒノキのママに頼んで送ってもらったよ。これで、写真をいっぱい撮ろう!」
おお!懐かしい!昔はこれで無限に写真を撮って遊んだよなあ。
あの頃は、というか、あの頃も、毎日がとても楽しかった。
それはきっと、俺の近くには常にセリがいてくれたからだろうな。
――そんな思いに浸りながら、俺たちは閣下やクスネとともに、しばらくの間夢中で写真を撮りまくって遊んだのだった。
次回予告:謝り方下手くそ選手権優勝