遊戯対決!ホラーハウス
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「ここには毒を持つ生き物以外にも、不思議な生き物が多いな」
>確かに
>希少な生物がいっぱい
>あんまり生物に詳しくないけど、たしかに見慣れない生き物多いね
ツチノコのような生き物がぬかるんだ地面に隠れるように這っていたり、ケサランパサランのような毛玉みたいな生物が集団でふよふよと楽しそうに浮いている。
それ以外にも、翼の生えた猫のような生き物が木の上で羽休めしていたり、二足歩行のワニみたいな生物が沼へ潜っていったり、タツノオトシゴのような形をした生き物が空を優雅に泳いでいたり…
相変わらずこの惑星は生き物がのびのびと暮らしているなあ。ほんと見てて飽きないわ。俺もあれくらいのびのび暮らしたいものだ。
「おお!あれ見て!きれいだなぁ…」
>ジェリーフィッシュみたいなのが空を飛んでる!
>カラフルに淡く光っていて綺麗…
>でもあいつ毒あるから気をつけてね
おっとそうか、あいつは毒持ちか…ちょっと気が緩んでいたな。気をつけよう。
「そういえば、ここらへんに俺の幼馴染のセリが住んでるらしい。場所的にはもうそろそろ着くはずなんだけど…お?なんか人工物っぽいのが見えた!あれかな?」
目に入ったのは大きな門。その奥には大きい館のような建物がある。
>なんか…不気味だな…
>ホラーゲームに出てくる洋館みたい
>ゲームなら確実にここに入った人は生きて出られない
「いや、雰囲気がさあ…全体的に暗いよ!普通に怖え…なんでこんな家にしたんだよ…お化け屋敷じゃん!」
その門の入口の両端には、葉の全く生えていない黒い木がそびえ立っており、門や館にも不気味なツルのような植物が沢山まとわりついている。
大きい館の周りにはうっすらと霧が立ち込めており、この森の薄暗い雰囲気と相まって不気味さが凄い。
さらにカラスのような鳥が館の周りを飛び回っており、ゴーストのような生き物がケラケラ笑いながら館の周りに沢山浮いている。
この世のものとは思えない場所に迷い込んでしまったかのようだ。
さっきから寒気がとまらない。こういう雰囲気苦手なんだよ…勘弁してくれ…
>普通におしっこチビッたんだけどどうしてくれるんだよ…
>お、ゴースト種じゃん。これはまた珍しい
>ゴースト種ってどこにでもいるらしいけど、肉眼で見えるタイプはそうそういないらしいからね。これだけはっきり見えるのはかなり稀だよ
>ゴースト種って意外と害はなくて可愛い奴らだぞ
いや、怖いもんは怖いんだよ!俺にはゴーストさんを可愛がるのは無理だ!相性が悪い。
「えーここに入るとホラーゲームが始まりそうなので、一旦引き返しますかね…」
「ちょっと!ここまで来たんだったら入っていきなよ!」
「うわああああ!びっくりした…って、はあー。何だセリか…気配消して近づくなよ…」
びっくりしすぎて口から心臓が飛び出しそうになったぞ。おいセリ、ニヤニヤするな。
「いや、普通にそこから歩いてきただけだよ。ビビって注意が散漫になってたんだね」
「び、ビビってねえよ!」
>明らかにビビってて草
>うわあああああwwwww
>なんでこんな所にこんな家を建てたんだ?
「そうだよ!なんでこんなところに家を建てたんだよ!」
しかもこんなお化け屋敷みたいな家をさあ…おっかないからやめろよ…
「いやぁ…宇宙船で東に飛びながら住むのにいいところ無いかなぁ…って探していたら、そのときたまたまここの不気味な雰囲気とゴースト達が目に入ってね。それでピンときたんだよ!ここに住むのはすごく面白そうだ!って。ちなみに家は以前ゲームでつくったのをコピペしてここに持ってきただけだよ」
「思いつきかよ…」
この宇宙ではゲーム上でつくったものを現実に再現することなんて容易だ。まあかなりの金はかかるのだが…
セリは俺から相当な額のお金を奪い取っていったので、お金の面は問題なかったのだろう。
「また俺のお金を無駄遣いして…コピペって結構金かかるのに…」
「だって!思いついたんだもん!ゲーマーとしてはひらめきは大事にしないと!それに、一生で一度くらい自分がゲームでつくった家に住んでみたくてさ。やっちゃった!」
>わかる。ゲームの中でつくった家とか実際に住んでみたくなるよね。そんな金ないからできないけど…
>いうて主も金遣いは荒いよね
>似たもの同士だな
…いやいや…全然似てないぞ!俺はここまで金遣いが荒くないからな!ちょっと高い買い物するときの思い切りが良いだけだ!
まあ、セリの金遣いの荒さはいつものことだ。おそらく俺があげたお金の殆どは使い切っているだろう。
「では、コホン…ヒノキ。恐怖の館へようこそ…今日はこの館で一晩ゆっくりしていってください…ふふふ。けれど、けっして夜には外へ出てはいけません…何があっても保証出来かねますので…」
セリが突然この館に住む不気味な女執事のような立ち振る舞いをしだした。そんな事言われたらもちろん…
「絶対にゆっくりしていきません!帰る!」
申し訳ないがゲームみたいに「ありがとうございます、ご厚意に甘えさせてもらいます」とはならない。明らかに泊まるとヤバそうな館なんだもん。
「ちょっと待ってちょっと待って!Uターンして帰ろうとしないで!変な誘い方しちゃったけど、ぶっちゃけ僕はヒノキとこの家でゲームしようって誘おうとしただけなんだよ!たまには息抜きしようよ!それならいいでしょ?」
「まあ、それならいいか。最初からそう言ってくれ。いやあ…セリと遊ぶのも久しぶりだな」
そんなこんなありつつ、俺はセリの館へ入っていった。
中はこの館の雰囲気に合った不気味な内装だ。セリは面倒くさがりだが、ゲームでは細部まで拘るタイプなので内装にも手抜きがない。
そのせいでかなりおどろおどろしい雰囲気が漂っているが、今はセリが一緒にいるのでそこまで怖くはない。
「じゃあヒノキ!せっかくだから恐怖の館らしくいこうよ!そうだな…この館からは一度入ったら出られません。出る条件は一つだけ。私にゲームで勝つこと!いい?」
「おう!負けないぜ!一瞬でこの館から出ることになっても構わんよな?」
>主ってゲームうまいの?
>この人脳みそまで筋肉なのにゲームとかできると思えない
>正直、ナメてます
ふっふっふっ…ほんと視聴者は見る目がないなぁ…実は俺、かなりゲームは上手い。
俺は前世ではちょっとしたゲーマーだったのだ。視聴者に俺のゲームの腕前っぷりを見せつけて驚かせてやろう!いやぁ…久々のゲーム楽しみだなあ。
―――3時間後。
>びっくりするほど勝てない
>いやまあ…あなたも思ったよりは強かったよ…
>相手が悪かったな…
>この配信、いつから耐久配信になったの?
負けが込みすぎて死んだような目になる俺。
セリに一向に勝てる気配がないのだが…強すぎるだろこいつ!
そうだった、こいつゲームだけはめちゃくちゃ上手いんだ!すっかり忘れてた!
「もう!そんなに負け続けるってことは、ずっと僕と一緒にいたいってこと?ほんとにヒノキは僕のことが大好きなんだなあ…それならそうと早く言ってよ~」
「違う!セリが強すぎるだけだ!俺は一切手加減なんてしていない!もうここまで来たら視聴者も俺が勝つまで付き合えよ!」
>えぇ…
>徹夜コースじゃん
>あなたの負け顔みるのも飽きてきたんだけど
大丈夫!そろそろ勝つから!ゲームを変える!このゲームじゃ一生勝てない。
「ふふふっ。非常食ならたんまりあるから、いつまででもいていいよ!」
「いやいや、俺はすぐに帰るぞ!絶対勝ってやるからな!…ところで、運要素が多いゲームとかに変えない?」
「まあいいよ。運ゲーなら勝てると良いね」
余裕の笑みを浮かべるセリ。そういえばこいつ、何故か運ゲーも強いんだ!占い(運と勘)でこの惑星まで俺を追ってきたくらいだし、運ゲーに変えるのは悪手だったか?
でもまあ、いくら運が良かろうと流石に一度くらいなら勝てるだろう!大丈夫大丈夫!
―――結局徹夜でゲームし、運ゲーでたまたま一度俺が勝てたときにはあたりは真っ暗になっていた。ほんと、長い戦いだった…
もう遅いし、やたら疲れたのでこの家に泊まらせてもらうことにする。
そして、この男女比が1:10の宇宙で男が女の家に泊まるなんてことをすれば…まあ、ね?
…せめてお手柔らかにお願いできませんか?え?ダメ?久しぶりすぎて自分を抑えられそうにない?
…うん、これはちょっと気合を入れないといけないやつだな。
だが、俺は日々の筋トレのおかげで体力には自信がある!ひ弱なゲーマーなどには負けん!遠慮せずにかかってこい!
―――次の日の早朝、何故か妙にツヤツヤしたセリと、げっそりした姿の俺。
さて一体、昨夜は何があったんでしょうねえ…
次回予告:もしかして俺ってスローライフしてない?




