賭博遊戯!本物の勝負師(笑)
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「まずはどれで遊ぼうか?ヒノキが決めていいよ?」
カード、ルーレット、サイコロ、スロット、ボードゲーム、勝敗予想系、客同士の心理対戦系…
うーん。沢山あって迷うな。
完全に運のゲームがあったり、心理戦が重要なものがあったり、スタッフとの駆け引きを楽しむものがあったり、多種多様すぎて困ってしまう。
…よし!決めた!パッと目に入った所にしよう!こういうのは、悩んでも仕方ないのだ。
「じゃあ、まずはあそこで遊ぼうぜ!」
俺が選んだのはシンプルなカジノルーレット。まずは運試しからだ!
よし!ここを起点に、全てのゲームで遊び尽くすつもりで行くぞ!
「ようこそお客様。ルーレットをお楽しみですね?次のゲームが始まるまで、少々お待ち下さい」
タキシードを着たスラッとした男の見た目のディーラーに案内され、俺達はルーレット台の前の席に座り、次のゲームが始まるのを待つ。
カラカラ…コトン。
「黒の7!なんと…おめでとうございます!!!」
おお!すごい!
俺達の前にこのルーレットをプレイしていた男性が、見事一点賭けで大勝ちしたようだ。
「よっしああああああああ!!!!!億万長者じゃあああああああ!!!」
複数のディーラーやスタッフたち、客ですら、大勝ちしたあの男を大げさに祝っている!
口笛や大きな拍手音、動きのあるライト演出、突如現れたダンサーたちによるダンスなどで一気にこの場は祝福ムードだ。
いいね!羨ましい!俺も一点賭けして、あんなに祝福されてみたい!
「よし!俺は一点賭けを三箇所くらい指定するやり方で賭けてみようかな!そのほうがハラハラして面白そうだし!当たった時嬉しいからな!」
こういうとき一箇所だけに賭けられないのが、俺の小心者たるところだ。
まあでも、一つの数字だけに賭けるなんて、当たる気がしないからな。さっき大勝ちした人を見たうえでも、そう思ってしまう。
「僕はとりあえずかたく赤か黒の二択を選んで、小刻みに賭けることにするよ」
このルーレットには色々な賭け方がある。偶数・奇数で賭けたり、ハイナンバー・ローナンバーで賭けたり、指定の列で賭けたりと、まあいってみれば王道のルーレットだな。
お、そろそろ俺達もルーレットが始まる。俺は予定通り一点賭け狙いだ。
こういうのは直感が大事だ!2と15と31!この三つにちょっとずつチップを賭ける!
ふと横をみると、セリは赤に少額を賭けたようだ。
俺がチップを置くタイミングで、
「おうおう、君たちもやるのかい? さっきの見ただろ? いやあ~、運ってのは俺に味方してるんだよ、今はな!」
さっき一点賭けで大勝ちして叫んでいたあの男が声をかけてきた。
顔はニヤニヤ、偉そうに足をくんで、片手には高価なシャンパン。
「三箇所に一点賭け? あー、初心者がやりたがるんだよな~そういうの。もっとスマートに、そして、もっと場の流れをよまないと、この先やっていけないよ?」
いきなり話しかけてきて、勝手に講釈を垂れはじめる。もう気分は王様らしい。
セリはスルーして笑顔を貼りつけたままだが、俺は若干イラっとしてしまった。
「ほら見てな。君たちにも“本物の勝負師”ってのを見せてあげるよ。ふむふむ…この流れは…よし!全額黒にドン! さあ!もっと私に注目してくれ!」
男は、さっきの勝ちで得たらしい大量のチップを全額、ドサッと黒に積み上げた。
えっ?全額?流石にその賭け方はやりすぎじゃない?
「それでは、ボールを回します。No more bets.」
カラカラカラ…
ルーレットの回転に合わせ、小さな銀の球もぐるぐる回転する。
来い!来い!
カラカラ…コトン。
「赤の17!」
「うわあああああ!!!!!なんでだよおおおお!!!!」
無慈悲にもさっき稼いだチップをディーラーに奪われ、ぐにゃあああと表情が歪むさっきの男。
「あ、あはは。あはははははは。はは…」
虚空を見つめ、涙を流しながら、乾いた笑いを繰り出している。
うん。調子に乗りすぎると、ああなるのね。
勝った時にやめておけばよかったものの…悪いお手本をみせてくれてありがとう。
「というか、他人のことを気にしている場合じゃない。しれっと俺もハズしてるしな」
その反面、セリは少額だが、しっかり当たっているな。流石だ。
ま、まあ、一回くらいじゃ当たるわけ無いよな!とりあえず、当たるまで…
当たるまで!このやり方でやってやるぞ!
「…このルーレット、あと三回だけにしよう」
「え?当たるまでやらないの?」
「駄目。もうすでにヒノキから破滅の匂いが香ってきたから、ラスト三回は絶対ね。大丈夫。あと三回で当てれば良いんだよ。ヒノキならできるよ!ほら?一度深呼吸して。一回一回、全力で楽しもう!」
「そうだな!楽しむのが一番だよな!」
この時の俺は、場の雰囲気に飲まれていたらしい。それをセリがうまく手綱を握ってくれていたのだが、その当時はそんなこと、全く気がつかなかった。
セリのおかげで少し冷静になれたからだろうか?
俺は最後の四回目のルーレットで見事に的中!
トータルで見ればほんの少ししか勝ってはいないのだが、それでも勝ちは勝ちだ!
よしよし!やっぱり当たると楽しいな!この調子で、どんどんこのカジノを楽しむぞ!
◆
その後も、俺達は沢山の施設で遊びまくった。
序盤から中盤にかけて、俺達はかなりトータルでかなり勝っていたと思う。
俺は勝ったり負けたりを繰り返し、トータルではちょっと負け。セリは基本的にどんな時も大負けすることはなく、どのゲームで遊んでもトータルでは負けることは決してなかった。
二人合わせた金額の勝ち負けで言うと、十分勝利と言えるのではないだろうか?
よしよし!事前に危険だとか色々言われていたが、それは俺達には関係無い話だったようだな!
ただ、負け犬共が大げさに騒いでいただけじゃないのかなあ~。ぷぷぷ!負け犬共ザマア!少し早いが俺達はそろそろ帰って、勝利の祝杯を挙げさせてもらおう!
それに、あまり勝ちすぎてもこの店に悪いしな!
なんだかんだ、終始明るい雰囲気でずっと楽しませてもらった。それなのに最後には買って終わるなんて、ゴメンな?
いやぁ…俺達が勝負事に強すぎて申し訳ない!
俺が鼻高々に楽しんでいるせいで気が付かなかったが、俺を見てこの店のスタッフの目が怪しげに光った。冷静なときなら気がつけたのだろうが、勝っている時というのは気が大きくなっているものだ。
スタッフのなにか仕掛けてくる気配に、俺は全く気が付かなかったのだ。
どうやら、ただ楽しませてくれるだけで終わるほど、ここで終わるほどこのカジノは甘くなかったようだ。
「いやぁ…かなり楽しんだな!さて、そろそろきりもいいし帰る…あれ?セリ?」
いつの間にか隣りにいたセリがいなくなっている。はて、どこへ行ったのだろうか?
「お仲間さんは甘いものと珍しいゲームにつられて、あっちであそんでるわよ?」
セリと変わるように俺の隣にぬるっと現れたのは、やたらと妖艶な格好をしたお姉さん。
ねっとりとした甘くてほんのり苦い香りをまとわせてた、少し危険な雰囲気のする女性だ。
見た目から、どうやらここのスタッフのようだ。
俺は絶対にセリと離れないようにしていたのだが、一瞬の隙をついてセリを甘い物とゲームで釣り、いつのまにか俺達は分断されていたらしい。
これは…直ぐに逃げないと!俺の少ない人生経験から、直ぐにそう直感した。
こういうタイプの人と関わると、大抵ろくなことが起きないのだ!
ただ、逃げなければいけないと頭では分かっているのだが、俺の身体は言う事を聞いてくれない。
何故かって?そりゃあ、なあ?
このお姉さんの格好がエロすぎて、理性ではなく本能が強く働いてしまっているからだ!
現状の俺はお姉さんに見つめられて、見惚れるようにただ立ち尽くしている。
どうも俺の細胞の全てが、お姉さんの見た目や香りを強く求めてしまっているようなのだ。
本能はお姉さんを求め、理性では逃げろと警告を鳴らす。その二つの相反する命令により、俺の脳内はパニック状態だ。
そのエロエロお姉さんが俺の手の指を絡ませるように手をつなぎ、全身で密着しながら、俺の耳元で語りかけてくる。
「お兄さん、本物の男でしょ?視線、歩き方、話し方、興味の移り方、その他諸々…私にはお見通しよ。ふふふ。アバターなのが残念だわ」
ぎくっ。
やばい!バレた?
次回予告:リスキルやめろ