部屋案内!その2!この宇宙での鍛冶!
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やっと俺とウツギのぎこちなさがほぐれたので、ここからはお互いいつもの調子だ。
さっきの言葉通り、俺はウツギにこの家を案内してもらうことに。
「じゃあ、ざっと説明するわよ。基本的にこの家は五箇所に分かれているの。今あなたがいる居間、キッチン、私室、鍛冶場、入浴施設の五つね。二階は私室、地下には鍛冶場があるわ」
今いるところは居間。隣にはキッチンがある。
クスネを連れ、キッチンに移動する。
かなり広々としたキッチンで、たくさんの細々とした料理道具や調味料の瓶、調理器などが置いてある。
キッチンの棚には、調理済みの保存食品などが所狭しと並んでいる。
それにしても、コーヒーやパン、生ハムの原木や大きなラクレットチーズなど、俺のスローライフにおける憧れの食品たちが、当たり前のように常備されているな。
あ、コラ!駄目だぞクスネ!
クスネが生ハムの原木をなんとか盗もうとしていたので、俺はクスネを抱いて止めた。
まーたそんな無謀なものを…自分の身体以上に大きいものは盗めないんだから、諦めような。
未練たらたらなクスネを撫でて落ち着かせながら、視点を変える。
流し台のそばには、大量のスパイスなどが透明度の高い瓶に入っており、生活水準の高さが感じられる。羨ましい限りだ。
「なあ?このキッチンに沢山置いてある壺みたいなの、中に何が入ってるの?」
「ああ、この中には沢山の手作り発酵食品が入ってるのよ。チーズとかヨーグルトとかキムチとかね。あとは、パンを焼くときの酵母も作ってるわね」
すげー。発酵にまで手をつけているのか…
>こいつ、発酵のプロだから
>発酵ガチ勢
>ウツギは発酵食品を作るのがやたらと得意なんだよ
>何故かやたら発酵に詳しいウツギさん
「発酵食品を作るの、そんなに得意なの?」
「良いでしょ別に発酵に詳しくても…個人的に発酵食品が大好きなのよ。それで、作る方もハマったってわけ。昔から趣味で作り続けてきたから、今ではどんな発酵食品だろうが作れる気がするわ」
え?なら、味噌とか作って欲しいんだが!?あと納豆も!
今度本格的に頼んでみよう。対価として何をあげればウツギが喜ぶか、考えておかないとな。
それにしても、キッチンの充実具合がすごい。
肉や骨を解体する強力で大きな刃物系から始まり、食料保存庫の簡易版、小麦から直接パンや麺類を作る設備など、かなり高度な技術がないと作れないようなものまで、全て手作りされている。
高度な技術が必要なものには、幾何学模様にカットされた宝石が埋め込まれてあり、活性化してキラキラ光っている。
「おお!宝石付与術なんて初めて見たわ。でも、スローライフには便利そうだな」
「そうでしょ?ここでは良質な宝石も取れるから、宝石付与術にはとても助かってるわ。サイキッカーなら、宝石をカットする技術さえ修得すれば、宝石付与術も難しくないからね」
宝石付与術という技術は、宝石を特殊な方法で加工し、色々な道具に魔法のような効果を与える技術である。
SCエネルギーが生まれてからは廃れてしまった、マイナーな技術だ。
俺もいずれ習得したい技術の一つではあるので、元々この技術の存在を知っていたのだ。
ただ、俺がこの技術を習得するには、数年はかかるだろう。なにせ、なかなか難解な技術だからな。
一応どういうことをすれば俺がこの技術を習得できるのかチップに尋ねた所、「まず最初に…」の説明の所でもうつまずいてしまった。難しい技術だから、説明からもう難解なんだよなぁ…
まず最初に、蓋然性エーテル領域にアクセスし、その後、精神工学と量子融合化学の基礎である、精神波動的位相重畳論を用いて───
ほら?実際こんなふうに説明されても、よくわからないだろ?
どうも、熟練のサイキッカーならこんな難しい方法はとらなくても、宝石をカットする加工技術だけで宝石付与術が使えるらしい。
ほんと、羨ましい限りだ。
「さて、次の場所へ案内するわね。次は入浴施設よ。まあでも、ここにはまだサウナしかないの。冷凍サウナとミストサウナの二種類があるわ。実は私、サウナが大好きなのよ」
「え!サウナいいなあ!入りたい!」
「あなた、温泉に入ったばかりでしょうに…」
確かにそうだな。サウナと聞いて思わず入りたいと答えてしまったが、よく考えれば別に今入りたいわけではない。
でも、たまに無性にサウナに入りたくなるときがあるんだよね。
そういう日はここへ来て、ウツギに頼んで入らせてもらおう。
「入浴施設はこれだけよ。じゃあ次は、キッチンと同じくらい力を入れて作った、地下の鍛冶場へ案内するわ!」
キッチンはかなりこだわって作っていたのに、それと同じレベルなのか。
鍛冶場も楽しみだな。
ウツギに連れられ地下への階段を下っていく。
そこには、沢山の鉄などの鉱石が置いてあり、とても機能的だ。
ウツギの作品なのか、沢山の包丁がズラリと並んでいる。素人目で恐縮だが、とても高品質に見える。
「こんな見事な鍛冶技術、いつ習得したんだ?」
「ああ、うちがサイキック初心者の頃、修行の一つとして鍛冶を取り入れていたのよ。だから、ある程度の鍛冶の知識は知っていたってわけ。鍛冶のどの工程にもサイキックの基本が詰まっていて、修行に最適なの」
ウツギは黒炎のサイキッカーと呼ばれて有名だ。鍛冶にも強い火力の炎が必要なので、その炎を活かして、鍛冶を行っているのだろう。
「へぇ…サイキック鍛冶職人か。なんかかっこいいな!」
「そんなに良いものではないわよ。毎日試行錯誤の連続で、結構たいへんよ。目標は自分だけの最高の包丁を作ることなんだけど、まだまだうまくいかないわね。市販のものにはなかなか勝てないわ」
>市販のものが高性能過ぎるからなぁ…
>人間はそうそう機械に勝てない
>勝とうとしてる心意気を持ってるだけで凄いよ
まあ、今の時代鍛冶なんて趣味でしかやらない技術だからなぁ…どうしたって機械が機械的に作ったほうが高性能なものができてしまうし。
ただ、そんな立場となってしまった鍛冶は、今でも趣味や伝統芸能として細々と引き継がれている。鍛冶師という職業な宇宙にもいるのだ。
鍛冶師たちは、作品に感情や魂、物語性、芸術性を込めることで、単なる道具を超えた価値を生み出している。
機械にはない「人間らしさ」を娯楽や美として提供し、支持を集めているのだ。
特に、超優秀な一握りの鍛冶師の作品は、驚くほど人気が高い。
俺は子供の頃、母とセリと一緒に、そんな超優秀な鍛冶師の刀の展示を見に行ったことがある。
展示された刀は、見た目はシンプルなのに、まるで引き込まれるような美しさを持っていた。ずっと眺めていたくなる不思議な魅力に満ちた刀で、制限時間いっぱいまで俺はその刀を見ていたことを覚えている。
バカなことを言っているとは重々承知だが、俺はあの刀には魔力が宿っていたと今でも信じている。それほどの迫力をあの作品から感じたのだ。
きっと、鍛冶師の執念や深い愛が、そう錯覚させたのだろう。
作品には作り手の思いが宿ることを、そのとき強く感じた。
たとえ人間が作ったものが機械の品質に及ばなくとも、鍛冶師にとっては関係ないのだ。自分の今出来る最高のものを、魂を込めて全力で作る。それが鍛冶師という職業なのだろう。
あの日の体験は、鍛冶の価値を改めて考えさせられる、特別な一日だった。俺の素敵な思い出の一つだ。
そんな経験があるからか、俺は鍛冶師に憧れがある。
もっと俺のスローライフの文明が進んだら、俺は絶対に鍛冶をするだろう。
だって、憧れだけで終わらすのはもったいないしな!俺も近い将来、必ず見事な刀を打つつもりだ!その時を楽しみにしておいてくれ!
次回予告:割としっかり説教されるヒノキ




