おかゆ
「シェフィーネ姫の容体は風邪じゃな、今日はゆっくり休んで大人しく寝ておるのじゃ」
「そうだな、シェフィーネ、私も手伝うから着替えるぞ」
「ん、わかった」
そう言ってシェフィーネ王女は学生服のボタンに手をかけて脱ごうとする。
ってちょっと待て待て!!
「ぬお、ケイ坊、エド坊、早く部屋から出るのじゃ、絶対見てはいかんのじゃ」
カホさんが俺達の背中を押して俺達は急いで部屋から出て行くのだった。
いや、マジで危なかったわ。
「二人共、見てないじゃろうな?」
カホさんの問いに俺とエドウィンは首を必死に縦に振る。
うん、学生服のボタンに手をかけているところしか見ていない、見てはいけない部分は絶対に見ていない。
「なら良かったのじゃ、嫁入り前の娘の肌を男が見るなどもってのほかじゃ」
本当にその通りだよ。
俺だってシルと婚約者であってもまだそこまではいかないさ。
そう言うのは結婚して夫婦になってからだ。
「さて、シェフィーネ姫の事はシルフィスタ姫に任せて、儂らも何かできる事をしよう、風邪をひいた時はおかゆを食べさせると良いのじゃがな」
「おかゆ?」
「おかゆとは簡単に言うと米にたくさんの水を入れて柔らかくなるまで煮込んだ料理じゃ、柔らかくて消化が良くて風邪をひいた病人などには持って来いの料理じゃ」
「おお」
まさに今のシェフィーネ王女にぴったりの料理じゃないか。
米ってスゲーな。
「しかし、おかゆだけだと大して味がしないからのう、できれば美味しく作ってやりたいのじゃが、そうじゃ、確か卵を使った卵がゆというおかゆがあったのじゃ、それを作れば良いじゃろう」
「なるほど、学園にはお菓子などを作る生徒もいるし、厨房を借りる事ができるからそこで作ると良いな」
「そうじゃな、シェフィーネ王女が熱を出したと聞いたからおかゆが必要になるかと思って米を持って来ておいて正解じゃったな」
「卵や調味料はここで貰う事ができるから材料は揃っている」
「じゃあ、後は作るだけじゃな」
そう、材料は揃ってる。
シェフィーネ王女におかゆを作ってあげよう。
「それで、誰がその卵がゆを作るんだ?」
エドウィンの問いにその場の空気が一瞬時を止めたかのように静寂になった。
「儂は作り方は知っとるが、実際にやるとなると何ができるかわからぬぞ、米を炊くのとはまた違うからのう」
「俺も料理の腕はカホさんと同じくらいだな、いや米を炊ける分まだカホさんの方が上か」
俺とカホさんは笑ってそう答えてエドウィンを見る。
「いや、私は無理だからな、料理なんて絶望的だぞ」
ですよね。
そりゃそうだ。
「と言う事は、作れる人がいない」
「そうなるのう」
「いや、待て待て、カリーナがいるだろ」
「ああ、カリーナは今日はいないぞ」
「いや、家から馬車で来たんならいるだろ?」
「いない、今日は俺とシルとカホさんの三人だ」
「は? じゃあどうやってここまで来たんだよ?」
「俺が馬車を引いて来たんだよ」
「お前、馬車が扱えるのか!?」
「ああ、馬車なら扱えるぞ、もしもの時のために馬車は扱えるようになっといて損はないって言うから馬車の扱いを練習させられたな」
そう、俺馬車の扱いができるんだ。
「もしもの時ってどんな時だよ」
「もしもの時か? そうだな、例えば盗賊とかに襲われた時、御者の人が馬車を扱う状態ではなくなった時に扱い方を教わっていればその場で代わりに動かしてその場から逃げる事ができるだろ? 貴族の嗜みだよ」
「馬に乗るならまだわかるが、馬車を扱うのが貴族の嗜みなんて聞いた事ないぞ」
「ああ、馬にも普通に乗れるぞ、馬車を扱うのと同時に馬に乗る練習もさせられたからな」
「お前、さらっと言ってるが、実際凄い事だとわかってるのか?」
「まあ、普通の貴族よりは凄いんだろうな、まあ、そんなわけで俺達しかいないんだが、実際どうする?」
そう、話はシェフィーネ王女のためにおかゆを作るのだが材料はあっても作れる人間がいないと言う問題だ。
「お前達、さっきから何をそこで話し合ってるんだ?」
俺達が困っているとシルが部屋から出て来る。
「シル、実は」
俺はシルに何があったのかを話す。
「なるほど、そう言う事なら話は簡単だ、私がそのおかゆと言う料理を作ろう」
シルがそう言うのだった。
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