新しいお菓子の名前
「見た事がある? このお菓子をか?」
シルが問うとシェフィーネ王女は頷く。
「うん、このお菓子見た事ある、ラクガキにも描いた」
「ラクガキにもって、もしかして失われたもの図鑑に載っているお菓子なのか?」
「わからない、でもラクガキに描いた記憶はあるよ」
何て事だ。
まさかシルが持って来たお菓子がシェフィーネ王女のラクガキにあるかもしれないとは。
「気になるけど、今はシェフィーネ王女の描いた絵の書類もないしな」
「それでしたらこちらに」
「え?」
見るとカリーナがシェフィーネ王女の描いた絵の書類を持っていた。
しかももう片方には失われたもの図鑑も持ってるよ。
「え? カリーナ何で持ってるの?」
「シルフィスタ様が新しいお菓子とおっしゃいましたのでもしかしたらと思いシェフィーネ王女の描いた絵の書類を持って来ました、失われたもの図鑑は学園の図書館からお借りしました」
マジか、お前マジで有能だなカリーナ。
そして失われたもの図鑑をめくっていく。
「あ、本当にあった」
「何? 本当か?」
シルが覗き込む。
そのページにはチョコレートと書かれていた。
「チョコレート、一般的にはチョコと呼ぶ人が多い、少し固いけど甘くてほろ苦いお菓子、そのまま食べても美味しいし、他のお菓子の材料にも使える」
「チョコレートと言うお菓子だったのか、まさかディルムンド王国で作られた新しいお菓子だと思っていたものが既にこの世界にかつて存在していたとはな、図鑑に載っていると言う事はシェフィーネの描いた絵の中にあるかもな」
「そっちも見てみよう」
俺達はシェフィーネ王女の描いた絵を見るとチョコレートと思われる絵を見つけた。
見つけたけど
「おいおい、マジかよ、思ったより工程が多くないか」
「まずこの木の実のようなものは何だ?」
シルが言うようにチョコレートの作り方にはまず最初に何かの木の実のような絵が描かれている。
「ケイネス、このチョコレートの説明文に作り方のようなものが書かれてるぞ」
エドウィンが言うので俺達はその説明文を見る。
「チョコレートはカカオ豆から作られる、もし生み出すのならこのカカオ豆がなければならない、カカオ豆?」
カカオ豆が何なのかわからず、何気なくページをめくるとそこにはカカオ豆が載っていた。
「これがカカオ豆か、なんか森とかで見た事あるような気がするな、ええっとカカオ豆、チョコレートを作るのに必要な木の実、チョコレートの作り方は隣のページに記す」
「今までの料理は作り方を書いてなかったのに、このカカオ豆だけはチョコレートの作り方を書いてくれてるんだな」
「隣のページに記すって書いてあったし見るか」
俺とシルは隣のページを見ると確かにカカオ豆からチョコレートの作り方が書かれていたのでその作り方を見るのだが。
「・・・・・・無理だなこりゃ」
「ああ、無理だな」
失われたもの図鑑に書かれていたカカオ豆から作る工程。
その工程がかなり多くて時間が掛かりそうだったから無理だと思った。
この工程の多さから見てシェフィーネ王女の描いたカカオ豆から作るチョコレートの作り方の絵もかなり多かったのにも納得だな。
いや、マジで工程が多過ぎるよ。
これ全部やれって言われたら結構時間が掛かりそうだぞ。
「悪いけど、このチョコレートはちょっとこっちで作るのは難しいな、工程が多過ぎて時間が掛かりそうだ」
「ああ、作り方の説明文を読んでも、カカオ豆を洗って乾燥させて皮をむいてカカオニブってものを取り出してそれを砕いていくって、ハッキリ言って面倒だな」
そう、シルの言う通り、本当に面倒だと思う。
「シェフィーネ、すまないがチョコレートの作り方の絵をせっかく描いてもらったが生み出す事はできない」
「ん、大丈夫、だって作るのが面倒だって思う工程だから」
「そうだな、だがせっかく手に入れたお菓子だしな、何かできないものだろうか」
「だったら、チョコレートを使ったお菓子を作ったらどうだ?」
そうエドウィンが言う。
「そのチョコレートの説明文に他のお菓子の材料にも使えると書いてあったのならそれを使ったお菓子が載ってるって事だろ?」
「それだ、ケイネス、探してくれ」
シルに言われて俺は失われたもの図鑑のページをめくって探すのだった。
読んでいただきありがとうございます。
本日二話目の投稿です。
面白かったらブクマと評価をよろしくお願いします。




