美味しくなる魔法の破壊力
「お、おい、ケイネスどうした? 大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だ、あまりにも破壊力が凄すぎたから、正気を保てて良かった」
「破壊力? 破壊力って何だ? 私は何もしていないぞ?」
「いや、美味しくなる魔法の破壊力が凄すぎるんだよ、あまりにもかわいくて俺は意識が失いそうになるくらい凄い何かが襲って来たんだよ」
「レティ、若様は一体何を言っているのかしら?」
「姉様、私にも若様が何を言っているのかわからない」
「まあ、何を言っているのかわからないだろうな、俺も最初失われたもの図鑑に書いてあった説明文で美味しくなる魔法って何だこれはって思ってたさ、でも実際にシルにやってもらってその凄さがわかったんだよ」
そう、本当に実際にシルにやってもらって初めて失われたもの図鑑に書かれていた美味しくなる魔法の破壊力に気づいたんだよ。
ハッキリ言える、愛している人からやられたらマジでヤバイって。
「そう言えば、美味しくなる魔法をしたら、あーんをさせるんだったな」
思い出したのかシルはスプーンを持ってオムライスを掬って俺に向ける。
「ほら、ケイネス、あーん」
俺はオムライスを食べて飲み込んだ瞬間、俺は意識を失った。
「ケイネス!? って頭から何か魂のようなものが!?」
「いかん!! ケイネス様!! お気を確かに!!」
「「若様!!」」
「ハッ!? 俺は何を?」
「危なかった、あのまま放っておけばケイネス様の魂は昇天するところだった」
「昇天? あ、そうか、シルに美味しくなる魔法に加えてあーんまでさせてもらったからあまりの幸せに天にも昇る気分になっていたんだ」
「心臓が止まるかと思ったぞ、幸せ過ぎて死ぬなんて、そんなに嬉しかったのか?」
「ああ、凄く嬉しかったな、幸せ過ぎてもう人生に悔いはないって思うくらいに」
「大げさじゃないか?」
「大げさ? 確かに俺が大げさ過ぎたのかもしれないな、うーん、そうだ、だったらこうしよう」
俺はある事を思いつくのだった。
「ケイネス様、いかがなさいましたか?」
「呼び出してどうしたの?」
「ルート、シオン、お前達も用事があるのに俺のわがままに付き合ってくれてありがとう、お前達を呼んだのは、ちょっと試してもらいたい事があるんだ」
「試してもらいたい事、ですか?」
「何なの?」
「ああ、少し待ってくれ」
「ケイネス、準備ができたぞ」
「こちらも準備ができました」
「わかった、じゃあ頼む」
ジョルジュはルートとシオンの前にオムライスを置く。
「これは何ですか?」
「新しい料理?」
「オムライスと言う料理だ、シル」
「ああ、ほら、二人共」
シルが言うとルートの妻のフレイアとシオンの妻のカリーナがメイド服姿で現れる。
ちなみにだが、リカード家の女性の使用人はメイド服を着ているがフレイアは財産管理などの仕事をしているのでメイド服ではなく秘書のようなスーツを着て仕事をしている。
しかし、今回はそのフレイアもメイド服を着てもらう事にした。
「ケイネス様、本当にするのですか?」
「シルフィスタ王女からやり方は聞きましたが、しかし」
シルから聞いたのかカリーナもフレイアも恥ずかしがっている様子だ。
「ケイネス様、何をしようしているのですか?」
「ああ」
俺はルートの問いに答えるとルートとシオンは何とも言えないような顔をしていた。
「若、一応聞くけど、大丈夫?」
「おい、シオン」
「いや、だって」
「お前達の言いたい事もわかる、だが俺だけなのかどうかを確かめたいんだ、これでお前達が特に何もなければ俺がただ相手が引くくらいにシルの事をかわいいと思っているだけの男だと証明されるだけだから大丈夫だ」
⦅それは大丈夫と言えるのだろうか⦆
ん? 気のせいか?
使用人達が何故か俺の事を心配するような顔で見ている気がするのだが。
「まあ、とにかく一度試してくれ、それで全てが決まるんだから」
「わ、わかりました」
「まあ、別に良いけど」
「よし、じゃあ、二人共頼む」
俺が言うとフレイアとカリーナはシルから教わったように手でハートの形を作って美味しくなる魔法を言う。
「お、美味しくなーれ」
「萌え萌えキュン」
二人は恥ずかしがりながらもスプーンでオムライスを掬ってルートとシオンに差し出す。
「ルート」
「シオン」
「「あーん」」
二人は差し出されたオムライスを口にしてそれを飲み込んだ瞬間、二人は意識を失った。
「ルート!?」
「シオン!?」
「二人共大丈夫か?」
俺が二人に声を掛けると二人は意識を取り戻す。
「わ、私は一体?」
「何が起きた?」
「一瞬意識がなくなってたぞ、で、どうだった?」
俺は二人に問う。
「ケイネス様、正直に申しますと、かなりの破壊力でした」
「最初聞いた時、若は何をおかしな事を言ってるんだと思ったが、そうじゃなかった」
「二人もマジでヤバイって思ったのか?」
「ええ、マジでヤバイと思いました」
「本当にマジでヤバイと思った」
「たまにやってもらいたいって思うか?」
俺がそう聞くと二人は頷く。
「望むのなら、たまになら良いですけど、その時は二人きりの時にしてもらうと」
「わ、私も、その、あまりにも」
フレイアとカリーナは顔を赤くしながらそう言うのだった。
まあ、大勢の前でできるものじゃないな。
「姉様、私は何を見せられているのかわからないのだけど」
「安心しなさいレティ、私も何を見せられてるのかわからないわ」
ルティとレティはわけがわからないような顔をしていたのだった。
うん、まあ確かにわけがわからないわな。
でも料理が増えたのは良い事だ。
そして、美味しくなる魔法は凄い破壊力だったよ、失われたもの図鑑を作った人。
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本日二話目の投稿です。
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