限りなく低い助かる道
「自首?」
俺の言った事にアリンス嬢はキョトンとして首を傾げている。
「そもそも自分が死刑になるかもしれない原因になったのはあなたがウィスト嬢にいじめられていると言った事なんですから、ならばそれが本当か嘘かを自分で言えば良いんですよ、要するに本当だったらどうやったのか具体的に言って、嘘なら素直に自分がした事をウィスト嬢に謝罪するんですよ、最後まで黙っているとそのまま死刑になるかもしれませんが、今素直に白状するならもしかしたらほんの少しですけど恩情が得られるかもしれませんね、限りなく低いですけど何もしないよりはマシだと思いますよ」
「わかった、全部白状する、いじめられていたのは全部嘘です!! 私はアンリエッタ様からいじめられた事は一度もありません!!」
アリンス嬢は大声を上げて真実を言う。
「リ、リリン?」
隣にいる殿下が信じられないという顔をしている。
愛している令嬢が自分に嘘をついた、まあ信じたくないだろうな。
「アリンス嬢、教科書が隠されたり破かれたりとか、池に落とされたりとか、階段から落とされたりとか言ってましたけど、それは全部嘘だったって事ですか?」
「はい!! 全部自分でやりました!!」
「ちなみにですが、さっきまでカリーナがしていたような喋り方をしてましたが、あれは演技ですか?」
「はい!! あんな感じで喋れば大体の男の人は私に甘くなってましたので!! これでエドウィン様もいけると思ってました!! まさかこんなに上手くいくなんて思ってませんでした!! 正直驚いてます!!」
やっぱり演技だったか。
正直あれが素だったらもう完全にヤバいなって思ってたけど、アリンス嬢の喋り方を真似したカリーナを見てのあの反応で何となく演技じゃないかと思ったよ。
「そんなに上手く虜にできたんですか?」
「はい!! エドウィン様言ってました!! アンリエッタ様は表情があまり変わらない人形みたいな感じで気味が悪く逆に私はコロコロと表情が変わって素敵だなとおっしゃってくれましたので、これはいけるなと思いました!!」
あー、そう言う事か。
俺は何となく殿下の気持ちがわかってしまった気がした。
「アンリエッタ様!! 本当に申し訳ありませんでした!! どうか!! どうか死刑だけはお赦しください!!」
アリンス嬢はその場でウィスト嬢に向かって土下座した。
ていうか、地面に思い切り頭突きするように土下座したから凄い音がしたぞ。
「あの、アリンス嬢、今物凄い音がしたのですが、大丈夫ですか?」
「死刑だけは、死刑だけはどうか!!」
「おいおい」
アリンス嬢が顔を上げると額から血が流れていた。
その様子を見て悲鳴を上げたり、気を失ってしまった令嬢には騎士が駆けつけて運ばれて行ってるよ。
ウィスト嬢もさすがにひきつった顔をしているよ。
そりゃそうだろうな、あんな血を流して必死な形相で見るんだから、さすがに引くわな。
「ちょっと騎士の方、彼女の手当てをお願いします」
俺が言うと騎士達が駆けつけアリンス嬢を掴み手当のために運ぼうとするがアリンス嬢は暴れ出す。
「放して!! まだアンリエッタ様から赦しを貰えてないんだから!! いやー!! まだ死にたくなーい!!」
暴れるアリンス嬢を騎士が何人かで押さえてそのままアリンス嬢は連れて行かれるのだった。
「あの、ウィスト嬢、さすがにアリンス嬢の死刑だけはどうにかできませんか? あなたにとっては彼女は赦されない事をしたと思いますが、あの必死な姿を見たら、さすがに死刑はかわいそうかなと思えてきたんですが」
「そうですね、彼女のあのような必死な形相を見たら、赦さないという気持ちもすっかり冷めてしまいました、一応私の方でも死刑だけは免れるように申しておきますわ」
さすがにウィスト嬢もあの必死な形相を見たら死刑はかわいそうだと思ったようだ。
「・・・・・・」
そして最後に残ったのは呆然と立ち尽くしているエドウィン殿下ただ一人だけだった。
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本日二話目の投稿です。
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