ケチャップライス
「これがケチャップライスか」
出来上がったケチャップライスは赤いトマトケチャップを使ったからか白い米が赤く染まっている。
「米を使っていますが、和食ではないのですね」
「ああ、失われたもの図鑑にも和食って書かれてはいないな」
ジョルジュの問いに俺はそう答える。
てっきり米は和食だけに使われるものかと思ったがそうでもないようだ。
「とりあえず、食べてみるか」
俺達はスプーンでケチャップライスを掬って口にする。
「お、旨いな」
米自体はそんなに味がないのでトマトケチャップの味がそのまま米についた感じになっている。
米の触感にトマトケチャップの味がついてより旨さが増していると言っても良いかもしれない。
「米についたトマトケチャップの酸味と甘みが良い味を出していますね」
「米だけでなく、ベーコンやタマネギにも酸味や甘みが加わってより美味しくなっています」
「これは子供が好きそうな味だし、作り方もそんなに難しくないから子供に出す料理として喜ばれるかもしれません」
確かにこのケチャップライスの味は子供が好きそうな味かもな。
ケチャップライスは旨い、確かに旨いが、俺にはどうしても気になる事があった。
「ケチャップライスも良いけど、気になる事がある」
「気になる事ですか?」
「ああ」
俺は失われたもの図鑑のケチャップライスのページを見る。
「ここ、説明文のこれが気になったんだ」
「卵で包めばオムライスにもできる」
ジョルジュが俺が指差した文を読む。
「オムライス、ケチャップライスに何かすればさらに別の料理ができるって事かしら?」
「卵で包めばって書いてあるから、このケチャップライスを玉子で包めば良いって事?」
ルティとレティが首を傾げる。
これは見た方が早いな。
俺は失われたもの図鑑でオムライスが載っているページがないか探してみるとやはりオムライスは載っていた。
「あった、これだ」
「オムライス、ケチャップを卵で包みその上にトマトケチャップをかける、子供にも人気の料理の一つと書いてありますね」
「みたいだな、ならシェフィーネ王女の描いた絵にも、あったこれだな」
俺はシェフィーネ王女が描いた絵の中にオムライスと思われる絵を見つける。
「これがそのオムライスの絵だな」
「フライパンを使用して卵を二個か三個くらい使う感じですね」
「卵をかき混ぜてフライパンで焼いてその上にケチャップライスを乗せて包んでいくって感じでしょうか」
「卵の上に乗せたケチャップライスを包むのは難しそうですね」
レティの言う通り、卵の上に乗せたケチャップライスを包むなんて相当な腕がいりそうだな。
「卵でこの写真のように包めば良いのですね、やってみます」
ジョルジュは卵を二個割ってかき混ぜ熱したフライパンに入れていき、その上にケチャップライスを乗せる。
「ジョルジュ、本当にできるのか? その状態からケチャップライスを包むなんて」
「リカード家の料理長たるもの、これぐらいの事ができずにどうしますか」
そう言ってジョルジュはフライパンを動かしてケチャップライスを、見事に包み込んでいきそのまま皿に盛る。
皿に盛られたのは、まさに失われたもの図鑑に載っていたオムライスそのものだった。
「これも長年料理人をやっている勘みたいなものなのか?」
「ええ、自然と身体がこのように動いてできました」
「長年の経験、恐るべしだな」
こうしてオムライスが完成したのだった。
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