おにぎり
おにぎりが一個できたが鍋にはまだ米が残っている。
俺達は米を一粒も残さずに鍋に残った全ての米を使っておにぎりを作る。
これはカホさんが言っていた事なんだが、東国では米の一粒一粒に七人の神様がいると言われているらしい。
カホさん曰く食べ物を粗末にしないようにと言う思いが込められているとか。
確かに食べ物に神様がいると考えてそれを残したり捨てたりすると言う事は神様を粗末に扱うようなもの。
さすがに恐れ多いな。
そう考えると確かに料理を残したりするのは申し訳ない気持ちにはなるな。
これからはなるべく残さないように全部食べるように頑張るか。
それでも、どうしても嫌いなものは難しいけど。
「これで全部握れたな」
鍋の中の米を全部使った事でたくさんのおにぎりが出来上がっていた。
握っている人が違うからか一つ一つ形は違うがそれも見ていて面白いものだな。
「では、いただくとしようかのう、パンと同じようにそのまま手に持って食べると良いのじゃ」
俺達はそれぞれおにぎりを手に持って一口食べる。
「おお」
何て言えば良いのか、不思議な触感だった。
柔らかい、柔らかいがパンとは違ったものだった。
握っていて思ったが粘り気のようなものがあった。
本当に今まで感じた事ないものだった、けど。
「旨いな」
ただ塩だけで味付けしただけなのに、この塩が良い味を出している。
そしてこの黒い海苔。
食べるとパリッとした音がする。
これにも味があって塩と米と一緒に食べるとまた旨かった。
他の皆もおにぎりの不思議な触感に驚きながらも旨そうに食べていた。
「ほら、ケイネス、私が握ったおにぎりだ、あーんしろ」
俺は口を開けてシルの握ったおにぎりを食べる。
「どうだ?」
「世界一旨いおにぎり」
「そうか、まあ当然だな、私が愛情を込めて握ったんだからな、誰かが言った、愛情は料理の一番の隠し味だと」
なるほど、愛情がこもっていたのか。
通りで旨いと思った。
「エド様、はい」
「ん? これは?」
エドウィンがおにぎりを食べているとシェフィーネ王女がおにぎりをエドウィンに差し出す。
「私が握ったおにぎり、エド様に食べてほしい」
「え、あ、ああ、ありがとう」
エドウィンは差し出されたおにぎりを食べる。
「どう?」
「あ、ああ、とても旨いが、何故私に?」
「わからない、ただ何となくエド様に私の握ったおにぎりを食べてほしいと思った、嫌だった?」
「い、いや、別に嫌じゃないぞ、うん、嫌じゃない」
そう言ってエドウィンはシェフィーネ王女の作ったおにぎりを勢いよく食べる。
親父や母さんや使用人達がそんな二人を温かな目で見ていたよ。
「のう、ジョルジュ」
「どうした?」
「皆でご飯を食べるのは良いものじゃのう」
「そうだな」
「玉子焼きだけでなく、おにぎりも食べられて幸せじゃ」
「このおにぎりは、カホがいなければ絶対に作れなかった、カホが教えてくれたからこそできたんだ、このおにぎりは、お前が作った料理だ、凄く旨い」
「・・・・・・お前さんは儂をどれだけ惚れさせれば気が済むのじゃ」
そう言ってカホさんは頬を赤くしながらも照れ隠しするようにおにぎりを食べる。
何だろう、塩で作ったはずなのにな。
さっきまでほど良いしょっぱさのはずだったのに何故か甘いなと感じながらおにぎりを食べるのだった。
おにぎり、甘じょっぱいな。
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本日二話目の投稿です。
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