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おにぎり作り

『おおー』


 蓋を開けると炊く前はただの粒にしか見えなかった米が綺麗で真っ白な米になっていた。


「おお、上手く炊けたようで良かったのじゃ、後はこれをしゃもじでほぐすのじゃ」


「しゃもじ?」


「平べったくて、下が手で持てる棒みたいな感じで上が米を掬えるように丸いのじゃ」


「野菜を炒める時とかに使うこれでどうだ?」


「おお、それじゃ」


 カホさんの説明を聞いてジョルジュが野菜を炒める時に使うへらを出すとカホさんはそれをしゃもじと言う。

 へらの事を東国だとしゃもじって言うんだな。


「そのしゃもじを使って鍋の米を全体的にほぐしていくんじゃよ、これで米がよりふっくらするように見えるはずじゃ」


「こんな感じか」


 カホさんに言われた通りにジョルジュは米をほぐしていくと確かに何となくだけどふっくらした感じに見えるな。


「どうやら上手くできたようで何よりじゃ、東国にいた頃はこの米の炊き方は嫌と言うほど教えられたからのう、こっちに来てすっかり忘れていたがやっている途中で思い出したのじゃ、料理はできなかったがこうして役に立つ事ができたのじゃから、東国で習った事も少しは無駄じゃなくて良かったのじゃ」


 カホさんは笑っているが、正直俺達は笑えなかった。

 俺達はカホさんの東国での過去を知っているから、正直カホさんのこういう過去の話にはどう返せば良いのか全くわからない。

 何か言おうと言葉を選んでるが、何も思いつかないよ。

 

「どうしたのじゃ? もしかして、儂の事を気にしとるんか? だったら何も気にする事はないぞ、儂は今とても幸せなんじゃからのう、何十年も前の辛い事など海に流された時に一緒に流れたのじゃ」


「そ、そうすか」


 カホさん、上手い事言ったつもりなのかもしれないが、笑えねえよ。

 そんなのお構いなしにカホさんは次に進む。


「さて、おにぎりの作り方なんじゃが、米ができればあとは簡単じゃ、塩と手を洗う用の水を用意してくれんかの?」


 ジョルジュがカホさんに言われたものを用意するとカホさんは手に水を軽くつけて濡らしてから手に塩をつける。

 そしてへらで米を掬って自分の手にのせてそのまま米を握り始めた。


「おにぎりはこうやって手に米をのせて握って作るのじゃ、基本は丸や三角の形にするのじゃ、こんな感じにのう」


 そう言ってカホさんは米の形を整えながら握っていく。

 

「ふう、どうにか形にできて良かったのじゃ、料理ができぬ儂でも米を握るだけで良いおにぎりはできたのじゃ、ほれ、皆もやってみると良いのじゃ」


 カホさんに言われて俺達もおにぎり作りを始めるのだった。

 俺達は教わりながらおにぎりを作っていく。


「米を握る前には必ず手を濡らすのじゃ、そうしないと握っている時に米粒が次々と手についてしまってのう、手を濡らすと握っていてもあまり手につく事がないのじゃ」


「なるほど」


「軽く濡らした後は塩をつけるのじゃ、そうすればこうやって米を握る時に全体に塩をつける事ができるのじゃ、後は米を手にのせて握るのじゃ、米の量は両手で握れるくらいの大きさがちょうど良いのじゃ」


 カホさんに言われた通りに俺達は米を握っていく。


「む、簡単そうに見えたのに難しいな」


「やった事ないもんな、と言うか随分大きくないか?」


「お前のおにぎりを握っているからな、少し大きくしたんだ」


 シルの手で握ったおにぎり、世界一のおにぎりじゃないか。


「ほいっと」


「あなた、そんなに強くに握らなくても良いのですよ」


 母さんの言う通り、親父強く握り過ぎじゃねえか、なんか固いおにぎりができそうだな。


「にぎにぎです」


「にぎにぎ、にぎにぎ」


「これは、何とも楽しいな」


 アニスとミスチーとネロナは楽しそうにおにぎりを握っている。


「おにぎりを握ってると子供の時に土で玉を作った遊びを思い出すな」


「ちょっとあなた、確かに似てるけど料理なんだからもっとマシな例えにしなさいよ」


 リックの例えにユーリが注意する。

 確かに小さい子供達好きだよな、土で玉を作る遊び。


「レティ、丸い形と三角の形、どっちが良いかしら?」


「実際に作って見れば良いと思う、私は丸い形を」


「なら私は三角の形にするわ」


 ルティとレティはどっちの形にするか決めて握っている。


「えっと、手を濡らして塩をつけてそれから米を」

 

 エドウィンがへらを手に取ろうとするとシェフィーネ王女の手と触れ合う。


「あ、すまない!!」


「? 大丈夫だよ?」


 エドウィンが顔を赤くしながらすぐに離れるがシェフィーネ王女は特に気にしていない様子。

 おうおう、これはこれは。


「ルート、今のを見てどう思いますか? 私としてはそう言う事なのではないかと思うのですが」


「ああ、私もフレイアと同じ考えだ」


「カリーナは気づいてたのか?」


「ええ、少し前だけど、何となくそのような反応をしていたから、ケイネス様とシルフィスタ様はもっと早く気づいていたみたいだけど」


 おにぎりを握りながらフレイアとルート、シオンとカリーナはエドウィンの反応で何かに気づいたようだ。


「若いって良いねえ」


「ほほお、そう言う事か、良いものじゃのう」


「何となくではあるが、ほぼ間違いないと思って良いかもしれない」


 ラキムとカホさんとジョルジュは温かい目で見守っている感じだ。


「ほお」


「あらあら」


 親父と母さんも気づいているって感じだ。

 まあ、当の本人はまだ自覚してないって感じだけど。


「皆、上手におにぎりを握れたみたいじゃの、それじゃ、最後にこの海苔を使うのじゃ」


 そう言ってカホさんは海苔を手に取る。

 あの黒いペラペラした物だな。


「この海苔を握ったおにぎりにくっつければおにぎりの完成じゃ」


 カホさんに言われた通りに海苔と言われる黒いペラペラした物をおにぎりにつけると面白いようにペタッと張り付いた。

 うん、確かに失われたもの図鑑に載っていたおにぎりの写真と同じだな。

 こうしておにぎりが完成したのだった。




 


 


 




 



 

読んでいただきありがとうございます。


面白かったらブクマと評価をよろしくお願いします。

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