手に入れた東国の品物
「仕入れたのは良いがどうすれば良いのかがわからないから裏の方に置いたままなんだよな」
「もしかして、あれの事かい? あんなわけのわからない物を渡すのかい?」
「ケイネス様が東国の品物が欲しいって言ってんなら、今ある物を渡すしかないだろ?」
「そりゃそうだけど」
ラックさんとマリーさんが何やら言い争ってるな。
一体何を持ってくるんだろうか。
「じゃあ、とりあえず見せるって事でどうだ?」
「まあ、それなら良いけど」
「よし、おい、リック手伝え」
「何だ、重いもんか?」
「そうだ」
「あいよ」
リックは抱っこしている娘のエマを下ろしてラックさんと共に店の中に入っていく。
二人が戻ってくるまでの間、俺は何をしていたかと言うと。
「どっちだ?」
「こっち」
「ほい、正解」
「わーい」
リックの娘のエマと一緒に遊んでいるのだった。
遊びと言っても俺が銅貨一枚を使ってどっちの手にあるかをエマが当てると言う単純な遊びであるが、エマにとっては面白かったのか何度も当たったり外したりして楽しんでいるのだった。
するとリックとラックさんが大きな袋を持って戻って来る。
「若、待たせたな、エマの相手をしてくれてありがとよ」
「おう、暇そうだったからな、それで、それが東国の品か?」
「ああ、結構重いぜ」
そう言ってリックとラックさんは重たい袋を地面に降ろす。
「随分と大きな袋だな、中身は何なんだ?」
「いや、全然わかんねえんだ、親父が言うには東国の品物なのは間違いないんだけど、どう使うのかさっぱりわからないから、そのまま置いておいたんだとよ」
「使い方がわからねえ物を客に売るわけにはいかねえだろ」
ラックさんがそう答える。
確かに使い方のわからない物を売られてもな。
「中を確認しても良いか?」
「ああ、俺も確認したけど、正直何なのかわからねえな」
俺は袋の中を確認するとリックの言った通り何なのかよくわからない物が入っていた。
「うーん、全くわからないな、東国の品はこれだけか?」
「いや、もう一個こんなのがあったぞ」
そう言ってリックが俺にそれを見せる。
うん、これも何なのかよくわからんな。
「これで全部か? 醤油って言う黒い液体の東国の調味料はないのか?」
「黒い液体? そんなものなかったな、親父あるか?」
「いや、ない」
「おふくろは?」
「ないわね、黒い液体って言うなら絶対に忘れたりしないもの」
「そうか、ないか」
「ケイネス様、東国の品物が欲しいのなら、また仕入れて来ますよ、それでそのショウユでしたっけ? 黒い液体の調味料があったらそれも手に入れて置きますよ」
「おお、それはありがたい、ぜひそうしてもらいたい」
マリーさんがまた東国の品を仕入れてくれるらしい。
これでカホさんの言っていた本当の玉子焼きの味ができるな。
カホさんにはもう少し待ってもらう事になるけど。
「じゃあ、これを買うけど、これくらいで良いか?」
「え!? 金貨三枚ですか!?」
俺が金貨三枚を渡すとマリーさんは驚く。
「こんな大きな袋がいくつもあるんだから、それくらいじゃないのか?」
「いやいや、こんなどうやって使うのかわからない物に金貨三枚なんてもらえませんよ!!」
「うーん、でも今後東国の品物を仕入れてくれるって言うし、その分って事で」
「若がこう言ってるんだから良いじゃねえかよ」
「そうだな、ケイネス様がこう言ってるんだ、無下にするのも失礼だろ」
「アンタ達ねえ、はあ、ならリック、アンタがこの袋全部ケイネス様の家に運んで行きな」
「おう、ジェシカ、エマ、行ってくるわ、今日は帰って来るぞ」
「いってらっしゃい、あなた」
「パパいってらっしゃーい、お兄ちゃんバイバーイ」
「おう、バイバーイ」
手を振るエマに俺は手を振り返して俺達は帰るのだった。
「リック、それ全部は重くないか?」
「いや、余裕余裕、ちょうど良いトレーニングにもなるしな」
帰り道、リックはマリーさんに言われた通りに袋を全部持って帰っていた。
全部で四つくらいあるのにさすがリック、相変わらずの力持ちだ。
ちなみに俺は袋とは別にもう一個あった品物を持っている。
「ところで、これ何なんだろうな? 中身を見ても全くわからねえし」
「ああ、それについてはカホさんに聞こうかと思ってるんだ」
「おお、先生か、そう言えば東国出身だったな」
「ああ、カホさんならこれが何かわかると思うしな」
帰ったらジョルジュに頼んでカホさんに来てもらおう。
そして俺達は道中会話でもしながら、特に何も問題はなく我が家に着きました。
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