既に実物はできていた
「は!? 若返りの薬ができている!?」
エドウィンは驚きで声を上げる。
「おい!! どう言う事なんだ!? 若返りの薬ができているって!?」
俺はエドウィンに肩を掴まれ前後に揺らされる。
説明するからやめてくれ。
「いや、若返ると言っても、十歳くらいなんだよ」
「十歳でも若返るってどうなってんだよ!!」
「いや待てよ、確かもうじき二十歳若返る薬ができるとかできないとか聞いたような気が」
「二十歳!?」
「ああ、ジョルジュとカホさんの孫は薬を作る天才だからな、だから十二歳にして王都の中央で薬屋の店長をしているんだ」
「十二歳で店長、それは天才だな」
「ああ、彼女の作るポーションは下級から上級までそこいらの店とは比べ物にならないくらいに品質が良くて、さらには毒や麻痺や火傷などの状態異常を治す薬など様々な薬が品質の良い物なんだ、それとは別に色々と試したりして新しい薬を生み出したりしているんだ、その一つが若返りの薬なんだよ」
「正真正銘の天才少女だな」
「それだけじゃない、彼女はエリクサーも作れるんだ」
「エリクサー!? あらゆる病を治すと言われている万能薬か!?」
シルの言葉にエドウィンは驚く。
エリクサーとは飲めばどんな重い病でさえも治すと言われている幻の万能薬とも言われている代物で、調合や配分を少しも間違えずに行わなければならないほど難易度の高い薬であり、それを作れる者は世界中を探しても数えるほどしかいないと言われている。
ジョルジュとカホさんの孫は最年少でその幻の万能薬を作る事ができる貴重な人材なのである。
まあ、若返りの薬を作れるくらいの天才だからな。
だからこそ高ランクの冒険者パーティーや貴族からの注文が多いそうだ。
「エリクサーを作れる天才だとは、それなら若返りの薬を生み出せても不思議じゃないと言えるのか? ん? ちょっと待て、十歳若返る薬ができたのならそれを続けて使えば良いんじゃないのか?」
「確かに、お前の言う通り続けて使えば良いのかもしれないが、それは無理なんだ」
「何故だ?」
「確かに若返りの薬を使って十歳若返って再び使えばさらに十歳若返ると思って実験させてみたんだが、一回目は確かに十歳若返ったが、二回目に使ったら元の年齢に戻ったそうなんだ」
「実験って、誰かに飲ませたのか?」
「ああ、この国で犯罪を犯して捕まった囚人達を使ってな、主に凶悪な犯罪者を中心に薬やその他諸々な実験をしているそうだぞ、どんなのか聞きたいか?」
「いや、それは良い」
エドウィンは首を横に振って拒否する。
まあ、別にどうでも良い事だしな。
「それでその薬を囚人に使ったら十歳若返ったそうなんだが続けて使ったら元の年齢に戻ったそうでな、おそらく若返りの薬同士がお互いに相殺して効果を打ち消してしまうみたいで、若返りの薬は続けて使う事はできないって結論が出たんだ、だからジョルジュをカホさんと同じくらいにまで若返らせるように今も若返りの薬を作っているってわけさ」
「なるほど、そんな天才なら狙われる可能性も高いだろ?」
「そこは心配ない、父上が腕利きの護衛を用意してさらに何かあったら父上の名前を出して良いとも言ったしな、これでちょっかいを出そうとする命知らずな者はいないだろう」
「あと、リカード家の名前も出して良いって親父が言ったしな、男爵だがバハムスではリカード家はそれなりの影響力はあるからな」
「陛下と旦那様には感謝しかありません」
「孫の身が安全だとわかって儂らも安心じゃ」
「なるほど、ところで、若返りの薬やエリクサーを作れるという情報を他国の人間である私に話して大丈夫なのか?」
ああ、そこに気づいてしまったか。
そこに気づいてしまったのなら仕方ない。
「そうだエドウィン、これはいわゆる国家機密と言っても良いだろう、エリクサーは既に知られているが若返りの薬は陛下達王族や一部の者しか知らない、だからもし若返りの薬が他国に知れ渡ったらその国を滅ぼさなければならないだろうな」
俺がそう言うとエドウィンは冷や汗をかく。
「もしもガルドム王国に知れ渡ったら、俺達は真っ先にお前を疑い、そしてガルドムを滅ぼすだろう、国家機密が知れ渡ったんだ、一人も生存者は出さないだろうな、だから」
俺はエドウィンの肩に手を置く。
「どうすべきか、わかってるよ、な?」
俺はなるべく笑顔で優しくエドウィンに言う。
「・・・・・・」
エドウィンは黙り込む。
「お前が勝手に喋ったんだろー!!!」
そしてエドウィンは叫ぶのだった。
だって話の流れ的にそうなっちゃったんだもん。
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